高校生の皆さん「エントロピー」という言葉を耳にしたことがありませんか?物理の入試問題にエントロピーが出題されることはほとんどありませんが、気になっている人もいるでしょう。
簡単に説明してみます。
まず熱量Qについて考えましょう。気体に熱量Qを加えて仕事をさせる、あるいは内部エネルギーを増加させる。このQは保存量でしょうか。
状態1の熱量を何らかの形でQ1と決めたとします。状態1から状態2に変化したとして、状態2の熱量がQ2です。
ところが、Q2はどのような経路を通って1から2に至るかによって値が異なるのです(具体的には定積変化のあと定圧変化する場合と、定圧変化してから定積変化する場合を比べてみると良い)。
つまりQは保存量ではないのです。「状態Xの熱量はQXだ」と言うことはできないということです。言えることは「経路〇〇を通って状態1から状態2に変化したとき熱量変化はΔQだ」ということだけです。
ところが、Qが保存量でないにもかかわらず、Q/Tは保存量なのです!不思議ですね。そしてこのQ/Tをエントロピーと言うのです。
状態1から状態2に可逆変化するとき(可逆変化という条件がつく)Q/Tは一定の変化量になる。あるいは、状態1のエントロピーをS1だと決めると、どのような経路を通って状態2に至ろうと「状態2のエントロピーはS2だ」と言うことができるのです。
もう少し正確な話をするとエントロピー変化がQ/Tで計算できるのはTが一定のときだけです。Tが変化するときは、Tが変化しないと見なせるような微小変化について
ΔS=ΔQ/T
微分形式にして、積分すると
dS=dQ/T
S=∫dQ/T
になります。このSがエントロピーです。
高校生はこのようなことは知らなくて良いのですが、物理好きな子は好奇心をくすぐられたことでしょう。
分かっておくとよいことは
「熱量Qは保存量ではないが、エントロピーQ/Tは保存量になる」
ということです。
この先は大学に進学してからのお楽しみということで。