フィラリア の なが〜いお話③症状

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自由研究のヒント:

フィラリア 症も死因のひとつと言われている渋谷のハチ公像をみにいこう!
東京大学農学資料館で展示されている、フィラリア が寄生している忠犬ハチ公の心臓を見に行こう!


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前回までの記事ではフィラリア の幼虫期間の話やいつから予防始めるか?って話をしていましたがまだどんな症状か説明していませんでしたね。今でこそ特に都心ではフィラリア 症は過去の病気となりましたが、昔は多くの犬の命を奪っていた恐ろしい病気でした。なので、獣医学部で習うフィラリア 症のボリュームもなかなかの長編です。忠犬ハチ公も重度のフィラリア 症であったことが知られています。
都会では少なくなったとはいえ、予防はどの地域でも行っています。ということで、まだまだフィラリア 編自由研究続きます。今回は症状です。

寄生先は心臓
フィラリアは犬の体内でL5幼虫まで大きくなると、心臓に移動します。そこで大人になりますが、雌のフィラリア 成虫はなんと28cm、雄成虫は17cmほどまで大きくなります。一匹あたりでこの大きさになるので、多数のフィラリア が寄生している心臓は血液が入る場所が少なくなってしまいます。
フィラリア は心臓の肺動脈、右心室という部分に寄生します。ここでは全身を巡ってきた血液を肺に送り出しています。ここにフィラリア が詰まっていると、全身の血液が右心室に入りきれずに血圧があがってきます。そうすると、血液中の水分が体の各所にしみだし、むくんだようにみえます。これを獣医学用語では浮腫(ふしゅ)といいます。この水分の漏れだしが肺で起こると咳がみられるようになります。軽度の時だと運動時などに咳がみられたり、あまり動きたがらなくなります。
中等度になってくると肺に行く血液の量も減るので酸素が足りない状態が常に続くことになります。この時には貧血や口や目のまわりなどの粘膜が白っぽくなったり、脳に行く酸素まで足りなくなることで失神することがあります。
重症度では浮腫がすすみ、安静時でも皮膚がむくんだり、腹水が溜まったりします。ゼエゼエという粗い呼吸を常にするようになります。
息苦しく体が重い状態が常に続くので徐々に衰弱し、亡くなっていきます。

細い血管に詰まることもある!
心臓の左側(左心)は肺から送られてきた酸素たっぷりの血液を全身に送り出す役割をになっています。そのため、フィラリア が左心系にくると、血流に乗ってしまうことがあります。ミクロフィラリア などの小さい幼虫の時期ならまだしも、成虫となり10cmを超えるフィラリア が小さな犬の体を巡ったらどうなるでしょう?細い血管で詰まってしまうことがあります。症状はさまざまですが、後ろ足の血管で詰まることが多く、犬は痛みをうったえたり、起立不能になってしまいます。筋肉も血液が運んでくる酸素を使ってエネルギーを得ているので、完全に詰まると壊死してきてしまいます。

診断
診断としては、予防する時に確認するものと同じ

・血液中のミクロフィラリア の顕微鏡検査
・成虫の抗体検査

のほか

症状や超音波検査という心臓内部の動きをみることのできる画像検査で診断していきます。

治療
心臓に成虫が寄生している場合はアリゲーター鉗子というながーーい先の尖っていないはさみのようなものを血管に通して虫を取り出します。成虫には予防薬はあまり効果がないので、ヒ素剤を使うこともあります。これは予防薬と違って犬にも毒性が高く、ヒ素剤によって死んだフィラリア が心臓を離れて全身の血管に詰まるリスクもあります。

どの治療も犬への負担が大きく、治療後死亡してしまうことも多いです。フィラリア はその地域の流行時期を見極めて毎年しっかり予防することが最も大切です。


参考図書・文献:
東京大学農学部プレスリリース 

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