小説感想サービスにて「シーンの意図」について指摘させていただきました。
拝読した作品は「すごくキャラが起って」いて、「ストーリーにオリジナリティ」があって、なおかつ「シーンの演出が巧い」という魅力的なものでした。
なのにどこか惜しいというか、もったいない感じがしたんですよね。
この作者さん、もっと面白く書けるよな……と。
で、何が不足してるのか考えて、いくつかアドバイスさせていただいたのですが、そのなかで特に「これを変えるだけで作品が化けるな」と思ったのが、今回お話しする「シーンの役割」でした。
シーンの演出は最高! ……なのに作品トータルで見ると活きていない
拝読した作品ですが、シーン単体ではすごく良い演出だったんですよ。
個性的なキャラたちが躍動して、感動的なシーンに仕上がっていました。
でも作品全体で考えると、そういったシーンたちがストーリーに活きていない感じがしたんですよね。
言い方を変えると、「それぞれのシーンが、一つのストーリーに集約していない」「シーンが独立してしまっている」といった感じです。
この問題は、「このシーンの狙いはなにか?」という視点で眺めるとよく分かりました。
一見魅力的なシーンですが、シーンの狙いを意図しきれていなかったんです。
・新登場のキャラが好き勝手に動いてしまっていて、主人公が絡めていない。
・伏線や前フリのなかった(もしくは弱かった)出来事が単発で起きる。
キャラが良く、演出も巧い作家さんだったので、上記の状態でもシーンとして成り立ってしまうのですが、そのシーンでストーリーを前に進めることができていませんでした。
極端に言えば、そのシーンをカットしてしまっても作品として成り立つ状態ですね。
これはストーリーとシーンが連動すればスゴい作品へ一気に飛躍すると思って、アドバイスさせてもらった次第です。
そのアドバイス内容の一部を、もう少し詳しく説明していきます。
「シーンの役割」は意図した方が絶対いい
僕が感銘を受けた「シーンに関する教え」を引用して紹介しますね。
『物語の法則 強い物語とキャラを作れるハリウッド式創作術』からです。
彼女は、シーンというのは、”ビジネス取引”の場なんだと説明した。金は絡んでいないかもしれないが、キャラクターのあいだでの政治的便宜、もしくは権力のバランスの変化がつねに絡むものなのだと。二人がそれ以上の人物が、そこにある一種の取引の処理に介入し、交渉なり闘いなりをくり広げる。新しい契約が結ばれた時点で、そのシーンは終わらなければならない。
『物語の法則 強い物語とキャラを作れるハリウッド式創作術』著クリストファー・ボグラー&デイビッド・マッケナ 訳:府川由美恵(株式会社 KADOKAWA)46ページより
シーンを取引と考えることで意図を設定し、それを終えたらすぐに次のシーンに移るべきだという教えです。
これを読むまで僕はシーンをだらだらと書き続けてしまっていました。
漠然と「そのシーンで書きたいこと」を考えてはいましたが、それを含んでさえいればどれだけシーンが長引いても気にしてなかったんですよね。
むしろ「キャラが勝手に動いてくれて良質なシーンが書けた」とさえ思っていました。
でもそういうシーンを今になって見返してみると、主人公たちがストーリーに関係ない話題を延々としゃべっているだけでした。
このことか……、と苦笑がこぼれましたね。これでは読者が退屈してしまうに違いありません。
みなさんが考えに考えて作りあげたストーリーやプロット。
それを最大限効果的に演出するなら、余計な要素をそぎ落としていくのがベストかなーと今の僕は思っています。
そのために必要な考えが、引用文にある「シーンとはビジネスの取引の場」だと思います。
シーンひとつひとつになんらかの取引を設定しておいて、それが成されたらすぐに次のシーンへ映る。
そういうシーンを積み上げていくことで、読者の興味を放さない作品が出来上がるはずです。
おわりに:シーンに意図を持たせ、引き際も良くしよう!
ストーリーや構成の意図を意識する人は多いと思いますが、それを一つ一つのシーンにまで配慮できる人は少ないと思います。
・シーンを取引と考えて意図を設定する。
・取引が終わったらすぐにシーンを移す。
この2つを意識するだけでも、より引き締まった面白い作品が書けるようになると思います。
ぜひ参考にしてみてくださいね!