大学入学共通テスト国語2023:論説文出題に見た「引用」への問題提起

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大学入学共通テストを受験された皆様、お疲れさまでした。仕事柄、毎年国語の問題は必ず解きます。今年は生後二か月の乳児を膝に抱えて解きました。。

さて、今回の出題で印象的だったところを大問ごとに書いていきたいと思います。まずは大問1の論説文について編。なお、私の別ブログ(note)でも、同様の内容を記載していることをご容赦願います。

論説文で印象に残ったのが「引用」の効果についての出題です。
情報化社会の中で、情報の真偽を見抜く力が今まで以上に求められる中、厄介な存在である”引用”の難しさを問題提起した(出題者にそこまでの意図があったのかわからないが、おそらくあると思う)問題だと感じました。

引用が「厄介」なのは、「原文そのまま引用していますよ」というと、あたかも原文の趣旨を保っているかのように見えてしまう点です。しかし実際は、前後の文脈や、「中略」という”悪手"によって、原文の趣旨はいかようにでもねじ曲げられます。

今回の共通テストの論説文では、二つの文章で同じル・コルビュジェの『小さな家』が引用されているわけですが、問6の(i)で問われているように、二つの文章は方向性が異なるのにも関わらず、その根拠として同じ文章の同じ部分が使われているのです。
文章Ⅱでは、前後の文脈に合わない部分が【中略】という裏技によってカットされています。そのことに気づかせる問6(i)はなかなかに批判的で、よい出題だったと思います。

現実世界でも、(意図的にせよ、そうではないにせよ)元の記事の引用に、趣旨をねじ曲げるような解釈を加えて再発信する例は枚挙にいとまがありません。国語の新指導要領では、批判的な情報処理力が重要視されているが、本問はそれを象徴する出題でした。

余談ですが、私自身が国語の読解問題を作問する際に「中略」だけは極力使わないようにしています。作問者側の人間としては、心の内に「この部分があるせいで選択肢が作りにくいな」とか「傍線部(出題箇所)にしにくい箇所が続くから端折りたいな」と思うことがしばしばあるのですが、こちらの都合で原文を中略するのは、原文へのリスペクトに欠けると・・・躊躇してしまうのです。

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