中学入試における親の関わり方

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学び
「できる子供こそ、親は教えない!!」
「子供の自立した学習と、親のさりげない成績管理が合格のカギ!」

みなさん、こんにちは。
帰国入試も始まる、今日この頃。いかがお過ごしでしょうか。

ところで、上に述べたような「理想」の合格体験記。よく見かけますよね。
筆者の周りでもたくさん言われていることです。

たしかに、「できる子供」は親の学習指導を必要としません。(当たり前ですね。「できる」のですから。)
もちろん、「自立した学習」ができれば、親は「成績管理」さえしていれば、十分合格できますよね。(もちろん、朝から晩までの講習では、お弁当作りなどものすごーく大変ですし、いやいや、それ以前に日々の生活をサポートすることだって…などと我ながらツッコミどころ満載なのですが。)

しかし、本記事をご覧のみなさんは、それ以上に思うところがおありでしょう。

そう、「現実」はとても厳しい……。

自立はおろか、我が子は全然勉強に意欲がない。意欲はあっても口先ばかり。たまに机に向かってみても、何をするやらダラダラと時間を浪費し、一問解いたと思えば、すぐ休憩などと言い出す始末。習い事も多い。一週間は短い。またまた課題がたまってしまった……こんなままでホントに合格できるの!?

そんなご家庭が多いのではないでしょうか。
いや、断言します。程度こそあれ、そんなご家庭が圧倒的大多数でしょう。

はじめに述べたような、幸せ家族は世の中にほとんどいません!!
筆者の指導したお子さんで第一志望や御三家に合格したご家庭も、ほとんどが波乱万丈の受験生活でした。
もちろん中にはいましたよ。公開模試で全国一位のようなお子さんが。彼・彼女らは確かに「理想」の受験生活でしたね。大人からしても、うらやましいくらいの才能です。(それでも合格発表の時には涙を流して喜んでいたのですから、彼・彼女らなりに相当苦しい思いをしてきたに決まっているのですが。)

ですから、みなさん、ご安心ください。一般に書籍化された理性のかたまりみたいな体験記や人気ブロガーのわが家の受験奮闘記(ふんすっ!)なんてところで語られるお話は、多くのご家庭の目標地点でもなんでもありません。(もちろん、読んで全く参考にならないなんてことはありませんよ。)

では、そんな厳しい「現実」に生きる私たちは、どんなふうにお子さんをサポートしてあげたらよいのでしょうか。

子供の表情を見る

当たり前のことですが、私たち大人とお子さんの間には圧倒的な人生の経験値の差があります。

大人は夏休みの宿題に追われた経験から、締め切りに間に合わずに始末書を作る羽目になった経験まで海千山千です。
もちろん、成功体験だってたくさんあります。終電を逃してまで作り上げたプレゼンが見事に成約まで結びついた瞬間や、雨の日も夢中で素振りに励んだ結果のホームランだっていい。幼少期からの積み重ねやある時の頑張りが、今に繋がっているのだという自負心は誰にでもあるでしょう。(そしてそうした地道さが家族を支えているのですから、これはやはりすごいことです。)

さてさて、そうやって、色々な酸いも甘いも嚙み分けた結果、私たち大人は「いい学校に入学した方がいい」「この期間までにここまで習得しないとまずい」「この学習はこうした思考と作業で会得するのが早い」などと計算・逆算して、まるで旅行の計画を立てたり、引っ越しの準備をするかのように、要領よく交通整備をするのです。

しかし、よく考えてみてください。そんな「あれをしたら上手くいく/いかない」の経験をほとんどしていないお子さんが、「今が大事な時だ」などという「正しい」前提で投げかけられる言葉に、果たして素直に耳を傾けてくれるでしょうか。
よっぽど思考を大人に預けてしまっているお子さん以外は、ちらっとは思うでしょう。「そうなのかなぁ?」と。だって、まだ経験していないのですから、わからないはずなのです。そう、わかるはずがないのです。(ですから、お子さんが勉強に勤しまないというのは、ある意味で主体性のあるいいことなのかもしれません。)

そうした事情を踏まえてみると、大人が考えるべきは、どうやって「理想」のコースをお子さんに歩ませるかではなく、どうやって経験を増やしてあげるかではないかと仮定できましょう。

では、どうやってお子さんの経験を増やすか。これを考えてみましょう。
自転車の練習に例えてみれば、わかりやすいかもしれません。

みなさんは自転車が乗れるようになるまでの記憶がありますか。(筆者はありません。)
きっとたくさん練習しましたよね。途中で投げ出したこともあるかもしれません。それでもやっぱり、諦めずに乗り続けましたね。だから乗れるようになったのです。

どうやって練習したのでしょうか。教本を読んだのでしょうか。You Tubeを見たのでしょうか。そんなはずはありませんね。
お父さん・お母さんと一緒に練習したはずです。はじめは後ろに回って支えてくれたでしょう。危ないですから。次第にご両親の手を離れて一人で練習したかもしれません。そうやって、徐々に体に覚えさせたのでしょう。

では、どれくらいの期間、練習を続けたでしょうか。一日で済みましたか。理屈を理解したら次の日乗れるようになりましたか。そんなはずはありませんね。
何日も何日も繰り返し練習したことでしょう。ようやく体得したと思っても、カーブで転んでしまったり、疲れてすぐに走れなくなってしまったり、様々な困難があったでしょう。

自転車なんて自然に乗れるようになる気もしますが、実は習得の背景には本人の様々な試行錯誤があります。そして、そうした試行錯誤を可能にしたのは、根気のよい手助けと長い時間です。

勉強だって同じです。勉強は頭の働きだけでは完結しません。実際にえんぴつを握って、繰り返し筆算し、補助線を引き、思考を積み重ねる身体的営みこそが勉強です。

塾や学校の授業は、勉強のやり方を教える場合もありますが、多くの場合は勉強の内容を教えます。仮にやり方を教えたとしても、自主練の時間は圧倒的に足りません。
ですから、どうしても学習のファーストステップではご家庭の根気強いサポートが必要になるのです。

一日で習得する必要はありません。その場で理解する必要もありません。音を上げたら休めばよいのです。たくさんの失敗とたくさんの成功体験を積んで、ちょっとずつ自走してゆくのが経験値となってゆくのです。

ですから、今もし仮に、お子さんにとって勉強が辛い時期であった場合、そんな気持ちに寄り添って対話してみることが、きっと一番大切なことなのかもしれません。
中学受験は長い長い道のりです。それこそ身長が伸びてゆくのと同じくらいの進捗で、ゆっくりと歩んでいきましょう。そうした先に、学び始めた頃では想像もつかなかったような景色が、きっと見えているはずです。
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