プログラミング(速報)

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先程、例の社長から連絡があったんだ。
社長、歳をとったなあ、もう声がおじいちゃんだよ。
まぁ、もうひ孫もいるしね、仕方がないか。
ってかさ、俺も孫が小学校2年生だもんな。
社長も俺が30代で会社を立ち上げた時から、いや、その前から、長い間よく面倒を見てくれたなあ。
今でもプログラムの仕事を回してくれてるし。

「齊藤君、仕事も順調そうだな。顧客さんから連絡があったぞ。齊藤君は素人っぽいプログラムを書くが、素直なプログラムでいいって褒められたよ」
「ありがとうございます。社長の傘下で仕事をしていますから、下手な仕事は出来ないでっすよ。手直しもサービスでやらせて頂いてます」
「そうか、そうか、齊藤君らしいなぁ。18年前、齊藤君を誘ってよかったよ」
「いえ、とんでもないっす。社長やプログラム部のみなさんのお陰っすよ。よく俺みたいなロートル相手に18年も我慢してくれたと感謝してます」
「うんうん、齊藤君、その気持ちを忘れなければ大丈夫だ。ウチの顧客さんにはよく言っておくから、これからも頼むぞ」
「はい。こちらこそっす。社長の顔を潰さないような仕事をさせて頂きます」
「うんうん、齊藤君、まるで俺の子供が巣立ったような気持ちだよ。ありがとうな」
「いえ、感謝しなければいけないのは、俺の方っす。若い頃から後押しをして頂いて、あしがとうございます」
「ま、昔の話はいいさ。ところで、例のサイトでプログラムの出品はしたのか?」
「はい。社長のお許しを得ましたので、出品させて頂きました」
「そうか、反響はどうだ?」
「いや、社長、昨夜出品したばかりなのでまだまだ」
「そうか、しっかりやれよ」
「はい、頑張ります」

このサイトにプログラムの出品をしたものはいいものの、正直言って怖い、なんて社長に言えなかったよ。

「まあ、しっかりやりなさい」
「はい、エジソンのように一万回発見するつもりでやらせていただきます」
「ん?エジソン?」
「社長、お忘れでっすか?社長に教わったエジソンの話っすよ。エジソンが一回たりとも失敗したことはない、っていう話っす。俺、新入社員が入る度に、その話をしていたんっすよ。俺をプログラムの世界に誘って頂いた時も、社長は俺に喝をいれたじゃないっすか」
「おお、おお、覚えていてくれたか。最近ボケ始めたかな、物忘れが激しくてな」
「大丈夫っすよ。俺のことを心配してくれてるじゃないっすか。まだまだっすよ」
「ほっほっほ、齊藤君にたしなめられたな。齊藤君も成長したもんだ。まあ、老いては子に従えか。な、齊藤君」
「いえ、生意気な口をきいてすみません」
「ほっほっほっほ」

現場から叩き上げの社長なんだ。
電気一筋で働き尽くめの人生だったと、以前社長に聞いたことがあるんだ。
会社を立ち上げるために、電検を三種、二種、一種と取得したお人なんだ。
俺なんか太刀打ち出来ねぇよ。

その社長が老いたんだ。
今日の電話で、嫌と言うほど感じたんだよ。

寂しいよ。
あの、俺に怒鳴った社長が老いていく。
寂しくってたまんねぇ。

こんな話を書くんじゃなかった。
書いてて涙が止まんねぇ。

俺の本当の恩師は、東京の親方なんかじゃねぇ。
この社長が、俺の本当の恩師なんだって、また感じた電話だったよ。

社長には励まされ、叱咤され、社長が、俺の道を導いてくれたんだ。
この社長だけは裏切れねぇ。

電気の道を歩んできた男同士として、人として、社長とは比べもんにならねぇが、これからも社長を目指して、って思うんだ。

みなさんは、こんな恩師がいらっしゃるでしょうか。
恐らく、みなさんにはそれぞれの恩師がいらっしゃると思います。

俺の恩師は、こんな方なんですよ。
バーテン時代から俺を気に掛けてくれた、こんな社長なんです。
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