心理学系大学院の研究計画書の作成入門

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みなさん、こんにちは(*^^*)
心理学研究員の原です。

今日は心理学系大学院の受験に際して、提出する研究計画書の作成について書いていこうと思います。簡潔な形で書くのでご質問があればメッセージをいただければと思います。

なぜ研究計画書を作る必要があるのか。
それは、大学院は「研究機関」だからです。
私の友人は、名門の心理学系大学院の面接で「○○大学大学院で勉強をしたいと思っています」と言ったところ、面接官から「大学院は勉強ではなく、研究をするところです」と言われて面接は強制終了、結果はもちろん不合格でした。

実情、臨床心理士の受験資格を得るための指定大学院では、どうしても実習や教育活動に重きが置かれてしまい、研究活動に時間が使えず、実習を通し手の学習やケースを持ち療育をするなどの経験をする時間が多くなります。

しかし、大学院は研究機関であるため、実際に自分の興味・関心のある分野の研究をしてみてその結果、考察を修士論文として報告しなければ、修了要件を満たしたとは言えないのです。

では、「研究計画書って何?」「どのように研究計画書を作ればいいの?」と思う方がいるかもしれません。そのとき、私は以下のように伝えています。

「現時点ではこのように研究を行い修士論文を執筆しますということを示す書類の一つ」です。

研究計画書を作るに際して、実際に研究をしていくにあたり、(1)どのようなテーマ・内容で(2)どのような時期、(3)どのような方法でやっていくのかを示すことが必要になります。先行研究をたくさん読んでいて(4)予測される結果まで書くことがベストですが、基本的には「問題と目的」「方法」を書くことがメインとなります。以下では、(1)~(3)までを書いていきたいと思います。

(1)どのようなテーマ・内容にするのか
ただ「○○に興味がある」というわけではなく、テーマ設定とそのテーマに関する先行研究を読むことが必要となります。
私の場合、「父親の育児参加」に関心を寄せていたので父親の育児参加に関する論文や本、東京都が出しているガイドブック、厚生労働白書を読んでいました。
当時は、父親の育児参加によって子どもと妻(母親)に及ぼす影響、父親自身の心理的な成長などに関心がありました。
ただし、研究計画書にも字数制限があったので少し焦点を絞り、「父親の育児参加が夫婦関係満足感に及ぼす影響」というタイトルにしました。いきなり文章で書くことができなかったので、キーワードを抽出しました。

・昨今、父親の育児参加がみられるようになった
・イクメンの登場
・父親にも母親と同じくらい育児不安や育児ストレスがある
・少子化対策
・性別役割分業の転換期を迎えている(新・性別役割分業)
・父親(男性)の1日の平均勤務時間は長い

一部を載せさせていただきましたが、このようにキーワードにすること、それを繋げていくことが大切です。以下に研究タイトルと「問題と目的」「方法」を簡潔に述べます。

【研究タイトル:父親の育児参加が夫婦関係満足感に及ぼす影響】

【問題と目的】
①社会的な視点
 これまで「男性は仕事、女性は家庭」という性別役割分業の社会構造のもと、仕事と家庭生活が送られてきたが、近年は共働き世帯の増加によって「男性は仕事、女性は家庭と仕事」とする新・性別役割分業がみられるようになった。女性も以前より仕事に関わる時間が長くなったことが少子化の一つの要因となっているが、少子化対策として国が男性の育児参加を推奨し始めて制度の整備が行われるようになった。
②学術的視点
依然として男性の1日の平均勤務時間は長いとの報告があるが、育児に強い関心を寄せる男性、すなわち「イクメン」が登場して積極的な育児参加をする男性がみられる。これまで育児は母親(女性)が第一養育者であったが、父親(男性)が第一養育者になることで母親同様に育児不安や育児ストレスが生じていることが明らかにされてきた。
③先行研究の課題
このような父親の育児不安や育児ストレスに関する研究は行われているが、父親の育児参加によって夫婦関係に及ぼす影響に関する研究は少ないのが現状である。
④目的
そこで本研究は、乳幼児を持つ父親の育児参加が夫婦関係の満足感に及ぼす影響の検討を目的とする。

【方法】
(2)どのような時期
研究計画書を書く際に悩んだ箇所です。というのも、希望する大学院の修士論文の提出する時期がわからないので私は「修士2年の4月頃から」と書いた記憶があります。

実際に大学院に入って研究を進めていく中で、父親研究の難しさに直面しました。私の場合、乳幼児を育てている父親を対象としたので保育園に通う子どもの父親を対象とし、保育園がある程度忙しくない時期(修士2年の5月頃~)から保育園の許可取りを行い、許可が得られた保育園から順に質問紙を配布していきました。実際の調査時期は修士2年の5月~8月頃でした。


(3)どのような方法
目的を取り組むにあたり、どのような調査方法を使うかを述べます。私の場合には質問紙法を用いて共分散構造分析でモデルの検証をすることを書きました。また、以下のことを尋ねる旨を書きました。
・年齢
・性別
・家族構成
・子どもの年齢と性別
・1日の平均育児参加時間
・1日の平均家事参加時間
・第一養育者は母親か父親か
・雇用形態
・1日の平均仕事時間
・休日日数
・育児参加尺度
・夫婦関係満足感尺度

こんな感じになります。
質問紙法って結構、簡単と言われがちですが、基本的属性と尺度との内容が一貫していないと不要な項目を作ってしまうため事前に調査が必要になります。例えば、1日平均の育児・家事・仕事の時間を尋ねたのは厚生労働白書の内容に対応するか確かめるためです。また、サンプル数がある程度確保できたら育児参加高群・低群を作ってもいいかなと考えていました。

以上になります。
研究計画書は内容を濃くして書かないといけないので修正に時間を要します。「筆記で点数がとれていれば大丈夫でしょう」と思っていても研究計画書が薄いものだと落ちます。そうならないためにももしなにかサポートできたら幸いです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。

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