元株式ディーラーの本気の投資バイブル・短期トレード編

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マネー・副業
超短期売買を行う際の事前準備には、どのようなものが必要でしょうか。

超短期売買ですから、ニュースを見る必要もなければ、分析する必要もありません。寄付きの時間ギリギリに会社へ来て、板を見て売買すれば何とかなる、かつては、そのような株式ディーラーが大勢いました。

しかし、相場はそんなに甘くはありません。


このような姿勢で勝ち続けられるのは、よほど天才的なセンスの持ち主ぐらいでしょう。私自身も、日計りを活発にやっていた時期があります。それもかなり大きな金額でした。それだけ大きなリスクをとるようになると、たとえ日計りであったとしても、損益にかなりのブレが生じてきます。そのようなときに何の準備もなく、根拠も薄弱な状態で取引していたら、メンタル的に持ちこたえられなかったと思います。ですから、メンタル面を維持するという観点からも、日計りであっても事前準備は怠らないようにしていました。短期間に何度も取引プロセスを繰り返すため、場中に見るべきものはできるだけシンプルにしておきたいところです。

そして、場中に見るもの以外の基礎的な情報収集は、事前に行い、その整理も済ませておくことが大切です。「そんなことを知らなくても取引できる」という人もいるかもしれませんが、その準備の有無がわずかな差で勝ち負けにつながることも少なくありません。事前に基礎的な情報収集と分析ができているからこそ、日中の値動きに対してそれなりに理解ができるし、予測やその予測と実際の動きのズレから生じる違和感を察知できるのです。相場で勝つためには、他の市場参加者よりも、一歩でも二歩でもいいから先に行かなければなりません。準備ができておらず、値動きの要因を後追いで調べたり考えたりするようでは、確実に負けます。事前の情報収集を怠らず、自分なりの分析・予測を持つことを愚直に積み重ねることが、他の市場参加者との差につながっていくのです。

私が現役ディーラーだった頃にルーティーンとして行っていた情報収集プロセスです。「日計りなのに、ここまで事前準備をしなければならないの?」と思う方がいらっしゃるかもしれません。しかし、事前準備によって値動きの背景をある程度理解できていれば、場中に見るべきものがシンプルになり、取引そのものや取引に必要な判断に集中でき、対応や判断をより迅速に行うことができるのです。

超短期売買は、「①情報収集→②分析→③判断」という基本的な取引プロセスを、1日の中で何度も繰り返さなければなりません。


それを適切かつ効率的に行うためには、基礎的な情報収集をできる限り場中以外の時間帯に済ませておくことが重要です。図表3-1に挙げたものは、日々のルーティーンの中で調べるものであり、ほかにも週ベースで調べるべき情報として、投資主体別売買動向や裁定残高、投資信託関連の情報、個別銘柄の取り組み状況などがあります。日計りのような超短期売買は、情報収集や分析をおろそかにしがちです。情報収集や分析をおろそかにし、板情報や自分の感覚に依存して判断を下してばかりいると、値動きに飲み込まれてしまい、視野が狭くなり、判断ミスが出たときに悪循環に陥り、リカバリーできなくなります。そのようなときには相場を俯瞰し、客観的に見る距離感が必要になることがあります。そういった冷静さを保つためにも、事前準備と事後分析で基礎的な情報収集と分析を行っておくことが大事になるのです。 もう一つ事前準備のなかで大切なことがあります。 これは場中においても同様ですが、 銘柄選択です。 業績が良く、高い成長性が期待できる銘柄を選べばいいの でしょうか?

現役時代のルーティン


業務内容:

欧米市場の動向を確認(株式、為替、商品、金利)。
チャートの分析を行う。特に朝(寄り前)に重点を置く。
日本株に関連する要因を確認する(派生商品、PTS、ADR)。
その時間帯のニュースや出来事を調査し、マーケットの動向と照らし合わせて整理する。
日本の新聞やニュースをチェックし、マーケットに影響を与える要因や個別の材料を整理する。
当日の経済統計や企業業績発表などのスケジュールを確認し、予想値などを把握しておく。
当日の動向に基づいてシナリオを構築する。市場全体、セクター、銘柄の動向について考慮する。
出社後、注文受付が始まった後に板情報を確認し、注文の入り具合を確認する。
自身が考えたシナリオとの齟齬を探しながら、チャート分析などを通じてトレードのタイミングを計る。
ニュースはリアルタイムで確認し、自身のトレードを監視する。
日中のチャートとトレードを照らし合わせながら、反省点や修正点を記録する。
取引の終了後、市場全体の動向を分析し整理する。朝の予測との違いやその要因について考察する。
当日動いた銘柄などをチェックする。値上がり・値下がりだけでなく、出来高変化率なども考慮に入れる。
業績発表などの内容を確認する。
主要指数と個別銘柄のチャートを確認する。
翌日の取引で利用したい銘柄のリストを作成し、画面に登録する。株価に関するポイントがあればアラートを設定する。



確かに、そのような銘柄であれば、多少時間がかかったとしても、いずれ株価は上昇していくでしょう。ただし、先にも触れたように、良い銘柄でも時折下落することがあります。日計りなどの超短期売買においては、どれだけ業績やファンダメンタルズが良好であったとしても、それらの要因は優先度が低くなるのです。超短期売買で最も重要なのはボラティリティです。非常に短い時間での値動きを捉えるため、値動きが大きい銘柄ほど取引の機会が増えることは明らかです。この視点から銘柄を選ぶ際に、値上がりや値下がりが大きい銘柄だけでなく、急増している出来高などにも注目する必要があります。また、市場のトレンドや話題に沿った銘柄は、多くの市場参加者が注目しており、価格変動が大きくなる可能性があるため、あらかじめリストアップしておくことも重要な準備の一環です。

場中に心がけるべきこと


日計りで超短期の取引を繰り返していると、徐々に視野が狭くなりがちです。自分が取引している銘柄にばかり目がいくようになり、ついにはその銘柄の板ばかり見てしまうことがあります。個別銘柄を取引しているときでも、市場全体を俯瞰し、相場と適度な距離感を保つ必要があります。たとえ超短期売買であっても、あくまで大きな市場の動きや流れの一部分で取引をしているという自覚を持つべきです。私はその流れを把握したうえでポジションに強弱をつけたり、順張り逆張りのどちらを基本戦略とするかを変えたりしていました。それを実現するためには、前述の事前準備をしっかり行うことが大切です。

場中に何かを調べることはほぼありません。
相場を左右する大きな事件が突発的に起きた場合は、事後に調べる必要がありますが、トレードに集中するためにも、できる限り場中に調べ物をすることは控えるべきです。たとえば、朝から相場が急騰していたとします。事前に情報収集もせず、相場の急騰場面に出くわし、あわててマーケットにエントリーしても、急騰している根拠がわからないか ら、場中にいろいろな情報源にあたって、リサーチをしたり考えたりする羽目になります。

しかし、相場の動きは速いので、急騰した原因が理解できたころには、短期的な上昇サイクルが一巡していたり、株価 が大きく値上がりしたところから入らざるを得なくなったりするなど、すべての行動が後手に回ってしまいます。

相場解説者のコメントやニュースの解説を参考にして、自分自身の判断を省略することもできなくはないのですが、第三者の見通しや判断に依存している限り、その情報がなくな ったときに稼げなくなりますし、そのコメントが見当違いで あったときには損失を被ることになります。しかも、その情報がメディアなどを通じて流れた時点では、すでに多くの人 がその情報を目にしています。 つまり、その他大勢の投資家と同じ売買タイミングでしか 働くことができず、一歩、二歩先んじることは絶対にできま せん。前述したように、事前準備ができてさえいれば、値動きの 理由や背景を理解したうえで、ある程度、予測ができるよう になるため、他の市場参加者に一歩先んじることができます。 そうすれば、後手に回った人が買うときには利食いに回り、次の上昇タイミングを待ち受ける余裕が生まれます。超短期 売買はリズムが重要ですから、事前準備ができているかでき ていないかによって、大きな差が生じるのです。

なお、場中に一つ気をつけて欲しいことがあります。 それは相場予測がはずれても感情的にならないことです。 相場予 測が当たるに越したことはありませんが、百発百中はありえ ません。 もちろん、予測の精度を高めるために、分析した後も修正 を行ない、時には反省しながら改善を積み重ねていくわけで すが、それが当たらなかったことに腹を立てたり、意地にな ったりするのはとても愚かなことだという認識を強く持つ ようにしてください。 なぜそこで腹を立てるのでしょうか。 その根底には、自分 のプライドの高さや、「これだけやったのに」という感情が あります。このような感情が判断を歪ませたり、遅らせたり してしまうのです。あくまでも予測は予測です。予測がはず れたときは、その原因を探し、考察して、修正すればいいだ けのことなのです。 間違いを認めることも勇気であるということは忘れないでください。


エグジットのポイント 


エグジットに関して大切なことは、以下のとおりです。 ①エグジットまで想定してエントリーするトレードにおいて、エグジットが最もむずかしいと言えます。 エグジットには利食い(勝ち)と損切り(負け)、そして同値でも降りる(引き分け。 正確にいうと取引コスト分ヤラレ)という選択肢が存在します。 エントリーの段階では、「上がりそうだから買う」、「下がりそうだから売る」というように、ある程度の見通しは持っているのに、エグジットに関しては、ポジションをとってか ら考える人が少なくありません。しかし、エグジットについても、見通しをしっかりと持ってエントリーできるかどうか が、超短期売買で安定的な収益を維持するうえで重要です。 たとえば「上がりそうだから買った」としましょう。しかし、買った後にその見通しがはずれて株価が下げ始めたとき、 あなたの心のなかには不安が渦巻くのとともに、負けたくないという感情が生まれます。さらに下げ続けると、その感情 はどんどん強まり、冷静かつ客観的な判断ができなくなりま す。イライラしたり、熱くなったり、ムキになったりすることもあるでしょう。 想定と違う動きになっているにもかかわらず我慢すること「根性」と表現する人も少なくありません。 しかし、残 念ながら、想定と異なる状況を客観的な根拠もなく耐えているのであれば、「やせ我慢」でしかありません。そうなった時点で、その取引はコントロールを失った状態にあります。 そして、やせ我慢はいつの間にか 「お願い」になり、 神頼み的な「期待」へと変わっていきます。 「相場を期待で見てはいけない」という格言があるように、 そのようなやり方を続けている限り、何度かは相場に救われたとしても、いつか大きな損失を出して、市場から退場しなければならなくなるでしょう。 いちばん冷静かつ客観的に市場を分析できるのは、ポジシ ョンを持っていないときです。当たり前のことですが、それを忘れて、常にポジションを持ち続けようとする人も少なくありません。 中長期投資ならわかりますが、日計りでもそういう人がいるのです。そして値動きに振り回され、一喜一憂し、疲れ果て取引プロセスをおろそかにし、やみくもにエントリーを繰り返す。 疲れ果てる割には儲からない。超短期売買に置いて大事なのはリズムとタイミングです。それをスムーズに行うためにも取引プロセスをしっかり行う必要があります。

そのためには、エグジットまでを想定してエントリーできていることが大切なのです。 これはエントリーの判断にも影響します。たんに「上がりそうだから」だけではなく、「いくらまで値上がりが期待できるのか」、その一方で「いくらまで下がるおそれがあるのか」を考える必要があります。

 その根拠がテクニカル分析に よるものでも、材料やニュースによるものでもかまいません。 ここでいう「いくらまで上がる」という期待値が 「リター ン」であり、「いくらまで下がる」というおそれが「リスク」なのです。 そのリスクとリターンがあらかじめしっかり と整理できていれば、やみくもにポジションをとり続けるこ ともなくなるはずです。 「リターン>リスク」でなければポジションをとる意味はないので、 「リターン<リスク」は切り捨てることになりま す。 それが取引の整理につながり、勝てる確率の低い取引やリスクの高い取引に、 安易に手を出すことを抑制します。 ②負け際を明確にするためロスカット・ラインを決める超短期売買の利点は、ポジション (リスク) を持ち続ける必要がなく、「美味しいところだけ取引すればいい」点にあり ます。 超短期売買というと、小さな値動きでのサヤ取りや、 HFTによる取引のように、「手数を出さなければ儲からない」手法もありますが、ここでいう超短期売買は目視・手動で取引を行なう日計りであり、手数の多さで勝負するものではないということを前提として理解しておいてください。 です。

そして勝率を上げるためには、短い時間で 「 ①情報収集 前述したように、 超短期売買はリズム・タイミングが重要→②分析→③判断」という取引プロセスを成立させる必要 があります。やみくもに手数を増やすのではなく、「一つ一 つの取引を丁寧に行なう」ことが大事なのです。


 「一つ一つの取引を丁寧に行なう」 


これは、自分が現役ディーラーだったころ、 デスクの目の前に貼り付けておいた言葉です。 超短期売買で成功するためには、勝率を引き上げることに加え、「勝ちの値幅 (リターン) >負けの値幅 (リスク)」のバランスを保つこと、すなわち損小利大ができていることが、最終的に利益を残せるかどうかの差に表れます。 

そして、リターンとリスクのバランスを保ち続けるためには、最も冷静かつ客観的に取引プロセスを実行できるポジションがない状態もしくはエントリーするタイミングで、あ らかじめエグジットまでを考慮に入れたうえで、リスクとリターンの分析・判断ができているかどうかがポイントになります。 また、ロスカットの水準をあらかじめ決めておくことの意味はもう一つあります。 それを決めておけば、「この株価で損切ったら、損失額がいくらになるのか」という最大損失額 が見えるようになります。

それさえ見えていれば、ロスカッ トの水準に到達する前段階で値振れが生じたとしても、心理的に平静さを保つことができます。 逆に、ロスカットの水準を決めておかないと、客観的な分 析に基づいてエントリーしたはずなのに、いつの間にか感情 でポジションを見るようになり、損失が膨らむ過程でポジションを切れなくなり、熱くなって意地を張るようになり、さらに損失が膨らんでしまうという悪循環に陥るおそれがあり ます。そのようなトレードを繰り返していたら、いずれ確実に破綻します。どういう状況に直面しても冷静さを保つため にも、“負け際” を決めておきましょう。 トレードに負けはつきものです。 100回トレードして、 100回とも勝つなど、無理な話です。今後、トレードを何十 回、何百回、何千回、何万回と繰り返していくなかで、長い 期間、安定して収益を上げ続けていくためには、「負け方」 が大切になってくるのです。

続きは次回。有料版で詳しくお伝えします。


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