病前の赤ちゃんはよく笑う子だった
首すわりも、ハイハイも、つかまり立ちも、歩き始めるのも
早くて、検診に行くたびに褒められて…
今目の前にある現実から何度も目をそらしたくなる。
両親の葛藤はどんなに深いものだっただろうか…
発症してから半年ほどで転院となった
転院先はこども専門の病院
その病院に到着すると、診察や入院手続きがあった。
病院は4人部屋。
大きくはないが家族も泊まれる部屋だ。
「こんにちは!」
はじめて声をかけられたのは、若いお母さんだった。
腕の中の赤ちゃんを見て、
「わー、かわいいー!」
かわいい…
家族は衝撃を受けた気がしたそうだ。
病気になってからは生きることに必死だった。これからのことに不安を抱えて、どうしようもない苛立ちもあった。
赤ちゃんにかわいいと声をかけたのはいつだっただろう。
「ちょっとうるさいかもしれないけど…よろしくお願いします」
「いえ…こちらこそ…」
赤ちゃんの家族は、カーテンを閉めて、そっと泣いたそうだ。
それから、リハビリが始まった。
赤ちゃんは新生児のように体の筋緊張が低下している状態。
首も座っていないような感覚だ。
毎日毎日1時間~2時間をゆっくりとリハビリしていった。
隣のお母さんとは仲良くなり、今でも連絡をとりあっているらしい。
つづく