「気を散らす」

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占い

映画やドラマを見ていると、主人公が過去のトラウマを乗り越えるという筋書きは、ちょくちょくある

大方、宿命とか大層な意味づけをして、逃げずに、真っ向勝負で、克服しようと試みる。
また、その過程で、悩み、葛藤する主人公に、読者や視聴者は、共感し感情移入していく。
そして、そのトラウマを乗り越えると、一回り大きくなる。
めでたし、めでたし。

この手の流れというのは、ステレオタイプで、パターン化している。

しかし、現実問題としてどうだろう?

映画やドラマのように、トラウマに決着をつける、ドラマチックな機会など、いくら待っても、我々には訪れないし、結局、そのままお墓に入る事になる

とはいえ、たまに、共感できるストーリーもある。

最近、見たドラマでは、

「SHERLOCK」
Episode1 ピンク色の研究

Amazon Primeで、視聴可能

以降は、ネタバレになる。
嫌な方は、とりあえず、見てから、この後を読むといいだろう。


BBC制作のドラマ。
主人公のシャーロック・ホームズには、ベネディクト・カンバーバッチ(発音が難しいw)。
助手で医者のワトソンには、マーティン・フリーマン(小柄の演技派・ホビットの主役)。

舞台は、現代のロンドン。
ワトソンは、軍医としてアフガン戦争に従軍。
重度のPTSDを患い、 帰還後は、戦場のトラウマ、フラッシュバックに悩まされている。
定期的にカウンセラーを受け、セラピーに丸一日、自分の気持ちを聞いてもらっている。
どこぞの占い依存症と大差はない。
身体は健康なのだが、心因性による麻痺で、片足が動かない。
その為、外出には、「杖」が欠かせない。

Epsode 1なので、まだ、ホームズとコンビを組んではいないし、ベーカー街に同居もしていない。

ホームズは、初対面で、お決まりの驚異的な観察眼で、ワトソンが、アフガン帰還兵だと見抜く。
また、片足の麻痺も、心因性だと看破する。

そこで、ホームズはあえて、「杖」をつき、びっこを引いているワトソンを自分の捜査に誘う。

犯人待ち伏せの為に、ロンドンの下町のカフェで、二人はコーヒーを飲み始める。

しばし、雑談が続くが、犯人が乗っているらしきタクシーが来たので、ホームズは、とるものもとりあえず、店を出る。
ワトソンも慌てふためいて、ホームズの後に続くが、肝心の「杖」は店に忘れてしまう。

タクシーは、目前で、走り去ってしまう。
ホームズは、犯人を追うべく、猛ダッシュでタクシーを追う。
ワトソンも、それに続く。
先回りする為に、雑居ビルの階段を登り、ビルの屋上から屋上を飛び回り、近道を疾走して、なんとかタクシーに追いつく。

結局、タクシーに犯人は乗っていなかったが、ホームズが警察まがいの職質をした事で、今度は、警察から追われる事になる。

ホームズとワトソンは、ほうほうの体で、ベーカー街まで辿り着く。
到着すると、カフェの主人が、ワトソンの忘れた「杖」を届けにくる。

ざっとこんな感じだ。
一連の流れは、とても、トラウマの取り扱い方法について、示唆に富んでいる。

ワトソンの麻痺していた片足は、心因性のもので、外科的な要因ではない。
定期的に受けているカウンセラーも、それを指摘しているが、一向に良くなる気配が無い。

ところが、ホームズの捜査に巻き込まれ、気がつくと、歩けているし、走れるし、ビルからビルへ、飛び移る事もできる。

さて、これは、一体、どうゆう事なのだろう?

例えば、ライオンに追われているウサギが、昨日の食べかけの人参の事など考える余裕などあるだろうか?

我々の脳は、PCのように悪いデータを削除できないが、それほど処理能力がある訳ではないので、ライオンから逃げながら、他の事を考えて悩むような、芸当はできない。

AIの学習で使う、NvidiaのGPUのような高速の並列演算は、得意ではない。
(女性は比較的、平行して異なる作業をするのは、得意とはされている。)

ワトソンが歩けるようになった理由はただ1つ、彼の脳の中で、これっぽっちも戦争のトラウマを考える余裕も無かったし、脳のリソースもそれに振り分けられなかったという事だ。
心因性なのだから、考えなければ良い。

これは、あらゆるトラウマに効果があるだろう。
トラウマが起きた直後は、誰かに話しを聞いてもらって、共感してもらう事にはある程度、効果はあるだろう。
また、悩んで、考え込むのもありかもしれない。
しかし、それを繰り返す事は、記憶を強化するだけで、長期的には逆効果でしかない。

トラウマを削除できないのであれば、トラウマを考える余裕が無い程、「気を散らす」のが良いのだ。

ドラマの中で、ホームズは、ワトソンに
「結局、君は戦場のような危険な状況が好きなのだ。」
(だから、歩けるようになったし、走れるようにもなった。)
というセリフを言うが、実際は、そうではない。

最大限の集中力で、「気を散らす」事で、ワトソンは、復活したのだ。

恵梧







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