一見悪しきことさえも

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 今年の7月にこちらに出店してから、ご先祖さまのことを知りたいという方々から少しずつですがお声掛けいただくようになり、お陰様で充実した一年となりましたことを感謝いたします。

 戸籍を丹念に読み込むと、そのお家のそれまでの歩みが朧げに見えてくることがあります。中にはお伝えすべきか躊躇するような生々しい事実を知ることも、ままあります。例えば、血が繋がっていると思っていた親族が実はそうではなかったなど、戸籍を見なければ知らずに済んだのに…とショックを受けることもあるかもしれません。(なお、戸籍はあくまでも届出ですから、必ずしも事実が記載内容通りとは限らないのですが、ここではそれは脇に置いておきます。)

 私も父方先祖が故郷を捨てて夜逃げしてきたらしいと初めて知った時は、正直複雑な気分になりました。それでもその後懸命に家を支えてくれたお陰で今があると思うと、先祖が乗り越えてきた苦労を愛おしくさえ思えるようになりました。

 今年はほとんど手付かずだった母方の先祖調査も始め、偶然にも、大戦末期に獄中で最期を終えた元新聞記者の大叔父の存在について知ることとなりました。当時幼かった母や叔母らに、今に至るまでこの経緯が伝わっていなかったことを思うに、遺された身内にとっては、これが左右どちらからも批判の対象となりうる、触れて欲しくない過去であったからでしょうか。資料をいろいろ読み漁るうちに、大叔父には彼なりの義があり、それを全うする道を選んだ結果だったと思えるようになりました。

 「戦時下、憲兵に捕えられ獄死」という家族の負の歴史を乗り越えて得られたのは、意外にも懸命に生きた先祖を誇りに思う気持ちでした。先祖調査では、一見悪しき事実の先にこそ、得られる何かがあるのかもしれないという思いで日々向き合っていこうと思います。






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