「デザイン思考」ってなに?

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【「デザイン思考」の定義】

近年、ビジネスの世界では「デザイン思考」という言葉が重要視されています。ある人によれば、「デザイン思考」とは、「デザイナー特有の優れた感性や思考のプロセスを活用した『ユーザーの視点に立ち、潜在的なニーズを発見し、解決策を探る思考法』」と定義されます。

これまでビジネスの世界で取り入れてられていた思考法は「ロジカル思考」ですが、「ロジカル思考」が客観性を重視するのに対して、「デザイン思考」は主観が入ります。「主観が入りながら、自己主張に陥らない問題解決型の思考」だと言えます。「デザイン思考」に対して、主観を入れて自己表現をゴールにする思考法は「アート思考」です。「デザイン思考」は課題解決を目指す思考法です。

デザイン思考の別の定義では、「デザインしたサービスやプロダクト(生産品)の先にあるユーザーを理解し、仮説を立て、初期の段階では明らかなにならなかった第二の戦略や代替する解決策を特定するために問題を再定義する、一連の問題解決の考え方」となっています。

要するに、「行動(情報収集や製作などを)しながら仮説を考え、仮説を立てながら提案し、提案しながら修正を加え、修正しながら新たな戦略や解決策を構築していく思考のこと」だと言えます。

【デザイン思考が求められる時代背景と目標(夢)の考え方】

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デザイン思考が求められる時代背景には、社会や個人的価値観の多様化の波が関係していると思われます。近年の社会情勢や価値観の変化は目まぐるしく、「ロジカル思考」が求める10年先20年先のビジョン等を構築する意義が薄らいでいると言えます。

多様化していくニーズに応えていくためには、あまり遠くのビジョンに縛られるのではなく、「今現在のニーズを優先して解決する」ことを目指すデザイン思考が必要となってきたのです。

私はキャリア支援の仕事を本業としています(デザインの仕事は複業的にやろうとしています。「複業」という言葉は「副業」ではなく、本業と同等の価値を持つ仕事という意味で使っています)。その関係上、「キャリアプラン」と「キャリアデザイン」の違いについて時々考えるのですが、「キャリアプラン」はロジカル思考が必要で、「キャリアデザイン」は、まさにデザイン思考が必要なのだろうと考えています。

キャリア形成では「人生の目標(夢)」に対する考え方が重要になってきますが、私はこの目標(夢)の捉え方が、「キャリアプラン」と「キャリアデザイン」では少し違ってくると考えています。「キャリアプラン」には「ビジョン型」目標、「キャリアデザイン」には「価値観型」目標が必要だと思われます。

「ビジョン型」目標と「価値観型」目標というのは、『成功するのに目標はいらない!』(著者:平本相武)という本から採った考え方です。「ビジョン型」目標とは、目標を遠くに設定し、ステップを刻んだビジョンを立てて事を行おうとするものです。「価値観型」目標とは、願望のイメージを持ちながら、大事なもの(価値)を守って足元を固めながら事を行い、柔軟に願望のイメージを変えて進んで行こうとするものです。「価値観型」目標で行動する人は、あまり遠くのビジョンというのを考えたりはしません。

先日、私が複業でやっているココナラのキャリア支援で、ある30代の女性から「転職活動の軸が定まらずに悩んでいる」という相談を受けました。その方の事情を色々お聞きしていて、よくキャリア関連の本に書かれている「就職活動では軸を持つことが大切」という考えに囚われていることに気づきました。そしてキャリアカウンセリングを進めていくうちに、その方は、「転職活動をするのに、必ずしも軸はなくても構わないんだ。軸は転職活動や仕事の中で作っていくものなんだ」ということに気づくようになりました。

要するに、彼女は、軸は「ビジョン型」目標であるべきだという考え方から、軸というものを「価値観型」目標の考え方にシフトして考え直してもいいんだという考え方に転換することができたのです。それによって、彼女の悩みはスッキリと解消されました。

「ビジョン型」目標と「価値観型」目標というのは、どちらが良いというのではなく、個人の人生やビジネスの世界においては、両方の考え方を臨機応変に状況に応じて使えるのが理想だと思います。

ともかく、デザイン思考の考え方というのは、「価値観型」目標の考え方と通じるものがあると思われます。

【デザイン思考の5段階】

ハーバード大学のハッソ・プラットナー教授という人が、「デザイン思考を進める際には5段階のプロセスがある」と唱えています。その5段階とは次のようなものです。

(1) 共感(Empathise)
ユーザーの行動を理解し、寄り添い、何が問題なのかを見つける段階

(2) 定義(Define)
ユーザーのニーズや問題点、課題などをはっきりさせる段階

(3) 概念化(Ideate)
仮説を立て、新しい理解方法となるアイデアを生み出す段階

(4) 試作(Prototype)
問題解決に取り組み始める段階。まず、出したアイデアを基に商品やサービスの試作品を作ってみることから始めます。大切なのは、「とりあえず1度作ってみる」という感覚で作ることです。これで完成とするのではなく、具体的な問題点や新しいアイデアが見つかることを前提に試作してみます。

(5) テスト(Test)
検証の段階。試作品を出して実際にユーザーに使ってもらい、ユーザーからの意見を集めます。「定義」したニーズは正しかったか、「概念化」や「試作」はニーズに応えられるものになっていたのか等々をユーザーの反応から分析します。

それぞれの段階は、順番に進んでいくこともあれば、行ったり来たりしたり同時進行したりすることもあります。5段階の「検証」が終わったら、前の段階に戻り、何度も繰り返すことが大切です。

この5段階の中で特に重要なのは(4)と(5)です。テストをした後は、これまでの定義や概念化、試作をきちんと検証しておくことが大切です。それらが正しかったのか確かめ、再度定義付けから行うことで、よりユーザーのニーズを正しく把握することができます。そのサイクルを循環させながら、試作品を完成させていきます。

私は、この思考法は、先の見えない時代のチャレンジメソッドとして、とても有効な考え方ではないかと思っています。デザインをつくる側も、もう一度この方法のメリットを意識する必要があると思われます。

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