「よく分かる宇宙論の歴史~人類最大のロマンは宇宙の「根源」にある~②」

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(1)素朴なギリシア神話と星座の世界:神話学

②天文暦学は「帝王の学」

「天文暦学(数)」~「天命」を受けて、地上で政治を治める者を「天子」と呼び、天の変化を地上の人々に教える「天文暦学(数)」は「天子の学」「帝王の学」「君主の学」でした。

「陰陽五行説」~五行思想は木・火・土・金・水の五元素で存在・生成・変化などを説明する理論で、エンペドクレスの火・土・空気・水からなる四元素論より緻密なものです。木生火(もくしょうか)、火生土、土生金、金生水、水生木という相生(そうしょう)理論と、木剋土(もくこくど)、土剋水、水剋火、火剋金、金剋木の相剋理論とがあります。さらに殷の甲骨文にも干支(十干十二支)が見られますが、五行に陰陽を当てはめれば十干になり、甲(きのえ、陽木)・乙(きのと、陰木)・丙(ひのえ、陽火)・丁(ひのと、陰火)・戊(つちのえ、陽土)・己(つちのと、陰土)・庚(かのえ、陽金)・辛(かのと、陰金)・壬(みずのえ、陽水)・癸(みずのと、陰水)が出てきて、十二支(子・丑・寅・卯・辰・巳・午・未・申・酉・戌・亥)と合わせれば六十干支論となり、「丙午(ひのえうま)」という年号表記や60歳を還暦という概念はここから来ます。そして、『易経』に見られる太極→両儀(陰陽)→四象→八卦の理論と合わせて、東洋運命学の根幹(五行断易)を形成しますが、東洋運命学とは、天文暦学、兵法学、風水地理学などを含み、帝王学の一環とされてきたもので、東アジア世界全体に多大な影響を及ぼしてきました。

「兵法学」~単なる戦争技術ではなく、人間の本性に対する鋭い洞察に基づいて、勝負に関する行動の原則を探り出す学問であり、伝統的に帝王学の1つとされてきて、春秋戦国の諸子百家の時代には兵家思想として現れました。周王朝建国の功臣にして斉の地に封ぜられた太公望呂尚(りょしょう)の『六韜(りくとう)』、春秋時代斉の大司馬(だいしば、将軍)田穣苴(でんじょうしょ)の『司馬法』、孫武の『孫子』、呉起の『呉子』、秦の始皇帝に仕えた尉繚(うつりょう)の『尉繚子』、漢の高祖劉邦に仕えた軍師張良の『三略』、唐の太宗李世民に仕えた名将李衛(李靖)の『李衛公問対(りえいこうもんたい)』を特に「武経七書」(兵法七書)と言います。

「諸葛亮、字は孔明、また道号を臥龍(がりょう)先生と称して、上は天文に通じ、下は地理民情をよくさとり、六韜(りくとう)をそらんじ、三略を胸にたたみ、神算鬼謀、実に世のつねの学徒や兵家ではありません。」
(吉川英治『三国志』)

「『赤壁の戦い』は孔明側の圧勝であった。ここで関羽(劉備の義兄弟)を出陣させれば、主君・劉備は宿敵・曹操を葬ることができる。ところが、かつて関羽は、曹操に命を助けてもらった恩義があった。劉備は義に厚い関羽を出陣させるか否か大いに迷ったのである。もし、関羽が曹操を逃がしてしまうと兵たちの士気、処罰問題など難問が出てくるからだ。
 そのとき孔明は、劉備にこう進言した。
『なぜならば―です。私が天文を観じ人命を相するに、このたびの大戦に、曹操の隆運とその軍力の滅散するは必定でありますが、なおまだ、曹操個人の命数はここで絶息するとは思われません。彼にはなお天寿がある―故に関羽の心根に、むかし受けた曹操の恩に対して、今でもまだ報じたい情があるなら、その人情を尽くさせてやるもよいではありませんか』。」
(吉川英治『三国志』)

【参考文献】
『物理学の歴史』(竹内均、講談社学術文庫)
『宇宙像の変遷』(村上陽一郎、講談社学術文庫)
『神さまはサイコロ遊びをしたか 宇宙論の歴史』(小山慶太、講談社学術文庫)
『99.9%は仮説 思いこみで判断しないための考え方』(竹内薫、光文社新書)
『宇宙の迷宮への挑戦 般若心経と最新宇宙論』(糸川英夫、青春出版社)
『三国志』(吉川英治、六興出版)
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