「生命倫理と死生学の現在①」 ~人は何のために生まれ、どこに向かっていくのか~

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学び
(1)「生殖革命」でゆらぐ「生命の尊厳」という原点

①「生命」は授かるものなのか、作り出すものなのか

「生命科学」(life science)~生命を取り巻く関連諸科学の総称であり、物理学や化学など物質科学に分類される自然科学との融合領域である生化学・生物物理学・生物物理化学や、応用的な学問である農学・薬学・栄養学・医学・生命工学なども含みます。

「バイオテクノロジー」(生物工学)~生物学の知見を元にし、実社会に有用な利用法をもたらす技術の総称で、特に遺伝子操作をする場合には、「遺伝子工学」と呼ばれる場合もあます。 醸造、発酵の分野から、再生医学や創薬、農作物の品種改良など様々な技術を包括する言葉で、農学、薬学、医学、歯学、理学、獣医学、工学と密接に関連します。分子生物学や生物化学などの基礎生物学の発展とともに、応用生物学としてのバイオテクノロジーも近年目覚しい発展を遂げており、クローン生物など従来SFに登場した様々な空想が現実のものとなりつつあります。
 また、クローン技術や遺伝子組み換え作物などで、倫理的な側面や自然環境との関係において、多くの議論が必要とされている分野でもあります。遺伝子操作および細胞融合は、生物多様性に悪影響を及ぼす恐れがあるとの観点から「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律」(遺伝子組換え生物等規制法、遺伝子組換え規制法)によって規制されています。

「生殖革命」~生殖に関わる技術(生殖技術、reproductive technology)の急速な進展とそれが社会にもたらす変化を言います。これは生殖を巡る人為の領域の拡大であり、それに関わる倫理的社会的問題の現われです。第一に性交に関わらない他者が生殖に介在することが可能になり(代理生殖)、受精卵等の凍結によって時間的な自由度が生まれたことにより、誰が、どのように、子を持つのか、子が生まれ育つことに関わるのかが問われます。第二に、子の「質」に関わる人為的な操作の可能性の出現です。精子の遠心分離(パーコール法)などにより男女産み分けがある程度可能になっており、また胎児の染色体・遺伝子等の状態を診断する出生前診断が行われています。病気や異常が発見された場合に胎児治療が行われるのはごく一部であり、多くは人工妊娠中絶が行われています(選択的中絶)。さらに「優秀」な子を持つために技術を利用しようとする動き(精子バンク等)もあるのです。どこまでを誰が決定してよいのか、よくないのかが、そしてその根拠は何かが問われています。
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