教養としての近代思想⑩:社会学と社会主義

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コント:フランスの実証主義の哲学者、社会学の創設者。人間の知識・精神の発展は、神学的段階、形而上学的段階、実証的段階(科学の精神)の三つに分けられ、その三段階を社会の進歩の三段階(軍事社会、法律社会、産業社会)に対応させて説明しました。科学の精神を備えた科学者は、事実の観察を通して発見した社会の発展法則に基づき、社会を設計する必要があるとしました。

ダーウィン:自然淘汰によって生物の種の進化を説明する進化論を唱えました。

スペンサー:ダーウィンの進化論を社会に適応して社会進化論を説き、社会の発展に政府が介入してはならないという自由放任を主張しました。個人は適者生存のメカニズムと自由競争によってふるいにかけられ、社会は共同性のより高い状態へと変容していき、最終的には個人の権利が尊重され、個人の自由が実現される産業型社会へと発展すると考えました。

社会主義:19世紀、産業革命が急速に進んで資本主義が発達し、女性や子どもを含む労働者は劣悪な環境の下、低賃金で過酷な労働に従事するようになり、労働者の搾取や経済的不平等が社会問題となりました。サン=シモン、フーリエ、オーウェンらはこうした社会問題を引き起こす資本主義の弊害を人道主義的立場から批判し、社会主義と呼ばれる思想や運動を生み出しました。彼らは平等を重視し、労働者の連帯を説き、資本家の善意に基づく、差別や搾取のない理想的な共同体づくりなどを目指しました。

フーリエ:フランスの空想的社会主義者。自由競争下での産業社会は統一性を欠いた無政府的なものであり、不正や欺瞞に満ちていると考え、農業を基本とした、調和と統一のとれた理想的な共同社会(ファランジュ)を構想しました。

オーウェン:イギリスの空想的社会主義者。経営者の立場から労働者の生活や労働条件の改善に努めた後、理想社会の実現を目指してアメリカに渡り、共同所有・共同生活の村(ニューハーモニー村)を実験的に建設しました。

マルクス:サン=シモンらの思想を空想的社会主義と呼んで批判し、科学的に現状を分析して、社会主義革命を唱えました。労働とは本来、人間の本質的な喜ばしい活動であるはずが、資本主義社会の下では労働が苦役になっているとして、階級闘争による歴史の必然的進歩が革命によって成就すると論じました。

労働の疎外:生産手段を持たない労働者は自分の労働力を売って生活するしかなく、労働の成果も資本家のものとなる中、労働が苦役になっているということ。

人間の人間からの疎外:人間は本来、労働を通して社会や他者と関わり、連帯しながら自己の本質を実現していく類的存在ですが、資本主義社会では社会的連帯が失われているとしました。

物象化:資本主義社会では商品の交換関係が支配的となり、人間もまた物のように取り替えのきく存在として捉えられるようになること。

物神化:商品の価値は人間の労働に由来するものであるにもかかわらず、商品や貨幣それ自体が価値を持つものとして、ますます崇拝されるようになること。

唯物史観(史的唯物論):資本主義社会における資本家と労働者のように、その社会の物質的な生産力に応じた生産関係が土台(下部構造)となって、政治や芸術など(上部構造)を規定するとしました。そして、資本主義社会の矛盾は階級闘争を呼び、労働者による社会革命が起こると説きました。

エンゲルス:マルクスの協力者。科学的社会主義を目指しました。

レーニン:マルクス主義を受け継ぎ、帝国主義の時代に対応した新たな社会主義理論を発展させました。また、プロレタリアートによる独裁が必要であると考え、ロシア革命を指導することで世界最初の社会主義国家を建設しました。

バーナード=ショウ:イギリスのフェビアン協会の指導者の一人であり、福祉政策の充実や生産手段の公有化などを行うことによって、現代社会が抱える悲惨な状況を少しずつ改善していくべきであると主張しました。

フェビアン協会:イギリス。武力革命ではなく、議会制民主主義によって漸進的に社会主義の実現を目指す立場。

ベルンシュタイン:ドイツ。武力革命ではなく、議会制民主主義によって漸進的に社会主義の実現を目指す立場。

シモーヌ=ヴェイユ:フランスの思想家。哲学教師をしていましたが、労働問題への関心から自ら未熟練工として工場で労働し、その体験をもとに機械労働のシステムが人間の尊厳を奪い、労働者達を不幸にすると考え、他者の不幸に共感する不幸論を説きました。
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