ダンテ『神曲』地獄篇第1歌でボキャブラ・アップ:第30連句

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学び
【C.H.Sisson英訳】
Look at the animal which made me turn back;
Help me to handle her; you are famous for wisdom,
For she makes my veins and pulse shudder.’
【Mark Musa英訳】
You see the beast that forced me to retreat;
 save me from her, I beg you, famous sage,
 she makes me tremble, the blood throbs in my veins.”
【野上素一和訳】
私が思わず背を向けたあの野獣を見てください。
有名な賢者よ、私をあの獣から救ってください。
あいつは私の血管と脈を震えあがらせますから」
【平川祐弘和訳】
見てください獣を、あれに追われて戻ってきたのです、
 先生、狼から私をお助けください、
 あいつがいると、脈も血管もふるえが止まらないのです」

【語句】
handle=(人・動物などを)扱う、統御する。
wisdom=賢明、知恵、分別、知識、博識。
 wise=賢明な。知識・経験が豊かで、物事を正しく判断し、対処する能力がある。
 clever=賢い、才気のある、如才ない。「頭の回転は早いが(しばしば)深さに欠ける」ことも意味し、「ずる賢い」という意味を伴うこともあります。
 bright=子供などが頭がいい。
vein=静脈(⇔artery)、血管。
pulse=脈拍、鼓動。
shudder=(恐れ・寒さなどで)震える。恐怖やけいれんで突然引きつったように体ががたがた震える。
 shake=(寒さ・怒りなどで)ぶるぶる震える。「震える」という意味の最も普通の語です。
 tremble=恐怖・疲労・寒さなどのために体の一部が無意識にぶるぶる震える。
 shiver=寒さ・恐怖のために瞬間的に体全体がぶるっと震える。
 quake=烈しい興奮や恐怖で体が大きく震える。
 quiver=小刻みにぴりぴりと振動する。
beg=(許し・恩恵などを)頼む、懇願する、請う。
sage=賢人、哲人。
 the Seven Sages (of Greece)=古代ギリシアの7賢人。
throb=(心臓が)鼓動する、(脈が)打つ、激しく動悸がする、どきどきする、震える。
野獣=原文では単数になっていますが、これは豹、獅子、牝狼の3匹の獣のうち、最も恐ろしい牝狼を指したからです。

【解説】
 ダンテは自然科学の各分野に関心を示していますが、中でも人間学の一環として医学に興味を持っており、「心臓の奥の秘めた部屋に住む生命の霊がひどく震え始めたので、その戦慄はいとも細い血脈にまで伝わった」(『新生』)や「血管を伝わって四散した血が心臓を目指して流れ去る時、私は蒼白になるのである」(『詩集』)とあるように、ダンテの作品には心臓や血液に関する記述が多く見られます。
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