ダンテ『神曲』地獄篇第1歌でボキャブラ・アップ:第6連句

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【C.H.Sisson英訳】
I looked up, and saw the edges of its outline
Already glowing with the rays of the planet
Which shows us the right way on any road.
【Mark Musa英訳】
I raised my head and saw the hilltop shawled
 in morning rays of light sent from the planet
 that leads men straight ahead on every road.
【野上素一和訳】
私は目をあげて丘の肩をながめたが、
そこはすでに他の人の道案内をする
太陽の光をうけて輝いていた。
【平川祐弘和訳】
目をあげると、丘の稜線が
 もう暁光に明るく包まれているのが見えた、
 あらゆる道を通して萬人(もろびと)を正しく導く太陽の光であった。

【語句】
glow with=(場所が、色彩で)燃えるようである、照り輝く。
ray=光線。
raise=(物を、高く)持ち上げる。特に一方の端を持ち、直立または高い位置に上げる。
 lift=物を持ち上げる。
 hoist=重い物を、特に機械などの力を借りて持ち上げる。
shawl=~にショールを掛ける、~をショールに包む。
太陽の光=原文では「Pianeta」(遊星)という言葉が使われています。当時はまだコペルニクスの「地動説」が提唱される前であったので、太陽も他の惑星同様に捉えられていたことに注意しなければなりません(「天動説」)。当時の占星学では、太陽も月も他の惑星同様に重要因子として扱われており、太陽系における恒星・惑星・衛星を区別する考えはありませんでした。

【解説】
 ダンテは天国篇で次のような天界の構造を説いています。諸天の性格は占星学における各星のシンボリズムとよく対応していると言えるでしょう。
①第1天(月天)=生前、神への誓願を全うしなかった魂が住みます。
②第2天(水星天)=徳功を積んだものの、現世的な野心や名声の執着を断ち切れなかった魂が住みます。
③第3天(金星天)=激しい愛の情熱に駆られた魂が住みます。
④第4天(太陽天)=知識人の魂が住みます。トマス・アクィナスやボナヴェントゥラもここにいます。
⑤第5天(火星天)=信仰のために戦った者の魂が住みます。ダンテの曽祖父カッチャグイダなど。
⑥第6天(木星天)=地上にあって大いなる名声を得た、正義ある統治者の魂が住みます。ダビデなど。
⑦第7天(土星天)=信仰一筋に生きた清廉な魂が住みます。
⑧第8天(恒星天)=7つの遊星の天球を内包し、12宮が置かれている天。聖ペテロら諸聖人が列します。
⑨第9天(原動天)=諸天の一切を動かす根源となる天。
⑩至高天(天堂界)=神と天使達と聖徒達が住んでいます。
 ちなみにリストは『神曲』の構想を元に『ダンテ交響曲』を作曲していますが、「天国を描写するのは不可能ではないか」というワーグナーの意見に従い、煉獄を描いた第2楽章の終結部で天国を象徴する「讃歌」を置くに留めています。ピアノ曲としては、地獄篇における凄まじい情景を描写した「ソナタ幻想曲『ダンテを読んで』」を作曲しています。
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