日本人が作った数学理論と共役のお話

記事
学び
複素数は皆様ご存知ですか?
大雑把には実数に x^2 = -1 の解 i を添加したものです。

そして、複素数に特有の操作として共役 * というものがあります。
i に - を付けるんでしたね。

このまま代数的な共役のお話に向かうならガロア理論の中で出てくる正規拡大のような話題があるでしょうか。
正規性とは共役で閉じているようなものを指す言葉です。
(ここでは Wikipedia 正規拡大 でいうところの σ を共役と呼んでます。)

丁度、複素数は実数の正規拡大になっていることも確認できます。
(実際には遥かに強い性質を持ちます。)


今は共役というものを多項式の解に絡めて考えていましたが、行列の方向で考えてみるとどうでしょう?

例えば、複素数を

a + b i = a E + b J

(ここで、E は 2 次の単位行列、 J は
0 -1
1 0
という行列。)

という風に 2 × 2 の行列で見ることができます。
このとき共役の操作は転置を取る操作に翻訳されますので、共役というのを (もう少し一般化して) エルミート転置を取る操作と見て話を考えてみましょう。

最初に行列のなかでも簡単なもの、列が 1 の行列であるベクトル |x> の共役はどうなるでしょうか?

行が 1 の <x| になります。
そしてこの操作は反線形というやつで、複素数 a がくっついてると
<a x| = a*<x|
となるのです。
加えて、もう一回共役をとると |a x> に戻ります。
(このあたりの操作はリースの表現定理などで調べると色々出てきます。)


今までの共役は結構有名なものでした。

ここからは少し変わった“共役"を考えていきます。

行列の集合 X “特別な"ベクトル |x0> があったとしましょう。

すべてのベクトル |x> が X から一つ行列 A を見つけてきて A|x0> と書くことができるようなものです。

このとき A|x0> の共役

 A*|x0>

とするのです。

この操作は半線形になっていて 2 回続けると元に戻りますから (エルミート共役の仲間と見て) 共役と呼んでも良さそうですね。
(そういえば以前、こちらの記事で
そういう性質の操作を取り扱っていたのでした。)


この共役を考えて展開されるのが富田竹崎理論です。

物理的には統計力学における物理量の時間発展に関する理論で、その時間発展が上の共役から構成することが出来るという内容になっています。

共役と統計力学という遠いように見えるところに日本人が作った繋がりがある
というお話でした。

サービス数40万件のスキルマーケット、あなたにぴったりのサービスを探す