言葉には目に見えない力が宿る。このようなことをいうと、よく言霊について話されることが多いが、ここでは別の側面についてふれてみたい。
言葉によって相手を制し、負けを認めさせ、屈服させることができる。一方、自分の心の奥底にある言葉にできない気持ちや感情を、代わりに言語化してもらうことによって、癒しや感動を与えてもらったりすることなどもできる。
このような力を持っている言葉というものは、医療に似ている。使い方次第で、人を生かしもすれば殺すこともできる。いわば生殺与奪を併せ持つツールなのである。
しかし、その恐ろしい影響力について私たちはどこまで意識しているだろうか…?医療の専門家は、相当量の知識の習得と厳しい訓練、高い倫理観が求められている。だが、言葉の使用に関して、そこまでの高い意識を持っている人は皆無だろう。
自覚の無さは様々な事故を引き起こす。われわれが使っている言葉について、その影響力を自覚することは、私たちの大切な責任の1つなのかもしれない。