福祉に詳しい税理士 ※私の失敗談

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法律・税務・士業全般
皆さんこんにちは。
相続専門の税理士fukutaxと申します。

今回は、福祉に詳しい税理士について。

結論から書いてしまうと、福祉に詳しい税理士は
ほとんどいないのではないかと思います。

税理士になるためには、数字にある程度強く
なければなりにくく、数字に対する訓練はしますが
人の気持ちを察したりする能力を仕事上で求められることは
あまりないです。
 (士業ということで、何となく諦めの考え方が少し
  あるような気がします。ホントはサービス業であるので
  重要な能力だと思います。)

ですので、税理士はどうしても節税などの数字に目が行きがちに
なってしまって、福祉に興味を持つという方は少ないの
ではないかと思います。

かく言う私も、障害者福祉に詳しい相続専門の税理士になりたいと
考えているにも関わらず、数字しか見ていなかったという苦い過去
がありますので、下記で紹介したいと思います。


贈与については、通常、1年間に贈与を受けた額の合計額が
110万円を超えると贈与税がかかります。

しかし、一定の障害者の方に対して、特定贈与信託を利用し
贈与した場合には、3000万円(身体障害者1級、2級の
手帳をお持ちの方などの特別障害者ついては6000万円)まで
贈与税がかからないという特例があります。

この特定贈与信託について調べて見ると、この制度の利用自体が
少ないですが、無税で数千万単位の贈与ができる本制度は、
相続税の生前対策として非常に有効だと私は考えました。

例えば、親御さんから成人している障害があるお子さんへ
3000万円の贈与を行った場合、特例を利用しない場合には、
1000万円程の贈与税がかかります。

これが特例を利用すれば0円になって1000万円程の節税になります。

すごいお得な制度ではないでしょうか?

私は、すべての障害者の親御さんについては、どんどん
本制度を利用すべきだと思ってしまったのです。


この考え方の間違いが分かりますでしょうか?

既に述べたように数字しか見てなかったんですね。

この考えは実際贈与をする方、贈与を受ける方のことを
全く考えていない提案となります。

障害については、身体障害、精神障害、知的障害などの障害があります。
税金上の考え方は、あくまでも障害の程度によって、非課税の限度額が
異なるため、障害の等級のみに注意が向きがちになります。

しかし、贈与を受ける方が、①身体障害者なのか、②精神障害者なのか、
③知的障害者なのかによって、提案がかわるべきなのにそれを無視して
数字だけの節税の提案になってしまっていたのです。

①の身体障害者の方であれば、生まれた時から障害者であった方、人生の途中で交通事故にあったり、病気にかかったため身体障害者となる方がいるかと思います。いずれにしても、身体障害者の方は判断能力については、健常者の方と変わることがないかと思いますので、贈与により多額の贈与を受けたとしても、健常者の方への贈与と違いはあまり生じません。

私の失敗は、もうお分かり頂けましたでしょうか?

②の精神障害者の方は、人生の途中で障害者となる方かと思いますが、判断能力については、人それぞれだと思います。一般的には、障害等級が上がるにつれて、判断能力は低下すると考えられます。障害の程度によっては、一度に数千万の贈与をすると、一度に使ってしまう場合も考えられるので、一度に贈与をすることはできるが、その贈与財産を毎月●●万円といったように定期的に渡すような工夫が必要になるケースも出てきます。

③の知的障害者の方は、先天的に障害者となる方が多いのかと思いますが、判断能力については、人それぞれだと思います。考え方としては②の考え方と同じようなものとなるかと思いますが、例えば先天的に重度な知的障害者となった方に3000万円の贈与は本当に必要なのでしょうか?

税理士がやるべきことは節税だけではなく、その贈与後に具体的な生活にどんな影響があって、そのお金は将来どうなっていくのかという視点も必要なのです。

もちろん、大切なお子様のためにお金を残して経済的な負担を取り除いてあげたいとの想いを持つのは、親御さんとして当然の考えかと思います。
しかし、本当はお金をどれだけ残すかという金額の多寡の問題ではなく、そのお金がきちんと障害がある方のために使われる仕組みが構築できるかどうかという方が、大切になってきます。

例えば、生まれながらにして重度の知的障害をお持ちのお子様に多額の財産を残したとしても、そのお子様が一人っ子で、結婚が出来ずに、何の対策もしていないまま亡くなられると、最終的には親御様からの財産を国が受け取るという流れが出来てしまいます。こういった問題を「親なきあと」問題といって、
私が生涯をかけて問題の解決に取り組みたい問題です。


福祉の分野では、「私たちのことを私たち抜きで決めないで(Nothing About us without us)」というコトバがあります。判断力が低下しているからと言って、専門家や親御さん、福祉関係者主導で物事を決めるのではなく、障害者の方自身の考え方にも耳を傾けて、可能な限りご本人の意思を確認する必要があります。

まだまだ不勉強ではありますが、上記の失敗談も良い糧にして、相手のためになるベストな提案ができるよう、これからも日々勉強していきたいと思います。

  相続専門の税理士 fukutax













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