団地のふたり

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書名:団地のふたり
著者:藤野千夜


独身 50歳 築60年 同じ団地の実家に住む、奈津子とノエチ。
イラストを描きながら、ネットオークションで生計を立てる出戻りの奈津子。
ずっと勉強ができたけれど、思うように職を得られず非常勤講師を掛け持ちしているノエチ。
ほぼ団地の中で物語は進む。

高齢者ばかりが住む団地では「小娘」な2人。
近所のおばちゃんの網戸を張り替えたり、年末の食材を代わりに買い出しに行ったり。
なんだかんだ重宝されている。

ノエチは毎日のように1人暮らしの奈津子宅を訪れて夕食を共にし、テレビや映画を観てのんびりした時間を過ごす。
休日には近所の釣り堀までサイクリング。
出勤前に「まつ」のホットケーキを一緒に食べたり、安売り店でバッグいっぱいのお菓子を買ったり。
時には喧嘩もするけれど、そこは45年来の仲。どちらともなく仲直りしてしまう。

でも。。
奈津子は電車に乗れない。
車もノエチの運転するで休憩しながら乗るのがやっと。
(おそらくパニック障害等の心の問題を抱えている?)
続かなかった結婚。

ずっと優等生だったノエチだが今は職場に行くのが憂鬱でしょうがない。
パートナーと事実婚の時期のあったようだが今は実家暮らし。

たぶん描かれていないだけで、2人とも色々抱えている。
でも2人の深い部分にはあえて触れず、あくまでも坦々とした日常が描かれている。


子供の頃は友達と会うのに約束なんかしなかった
いつも友達の家に直行し、玄関で〇〇ちゃんあーそーぼって言えばよかった。
家にいなくて返事がなければまた別の友達の家へ。
いつの頃からか、約束がなければ友人に会うのは難しくなった。
急に今から会える?なんてとてもじゃないけど言えない。。
(断られるのが怖い小心者。。笑)

物語の2人は約束なんかしない。
ノエチは当たり前のように奈津子宅に向かうし、奈津子はそれを受け入れる。
今更気取ったり、いい人ぶったり、好きなものを好きでないふりをしなくていい。
そんな関係はとても羨ましい。

素の自分を見せられる相手って、家族以外にはなかなかいない。
楽しくて、あたたかい、団地の中だけに流れるゆるゆるとした時間。
こんな生き方もありだなと思わせてくれる作品だった。


そして作中に出てくる食べ物がおいしそうで、わくわくした。
*季節のほくほく焼き野菜
*クリームたっぷり柿のフルーツサンド
*「ひろし」のおにぎり
*かつ丼とみそおでん
物語の中の食べ物ってどうしてあんなにおいしそうに感じるんだろう。。


作中に出てくる「ナショナル坊や」
見た事あるようなないような。。

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