傑作の条件

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コラム
スダレ@企画担当です
副業として社長(妻)のデザインのサポートをしています。

スダレinc.が考えていること、
どういう価値観を持っていて
どういうサポートをしたいのか、
クリエイティブをどう捉えているのか、
などをクライアントの皆さんに理解してもらえるようなブログ記事を書けたらいいな、と思っています。

第二回のお題は「傑作の条件」です。

新聞社を辞めて、受託型のクリエイティブ業界に足を踏み入れてから20年弱、色々な仕事をしてきました。
それこそ、今の自分を形作っているような、そうした人生の糧のような仕事もあれば、言われないと思い出せないようなやっつけ仕事もあるかと思います。

結局、「〇〇さんの実績(=傑作)はなんですか?」と聞かれて答えるのは、圧倒的に前者(人生の糧になっている仕事)なわけですが、こういう仕事とそうでない仕事を分けているものってなんですかね。

ネームバリューでしょうか。
確かに若いころは名の知れた大会社の案件を手掛けることに意気を感じていたこともありました。
(今も多少はありますが、笑)
でも、ネームバリュー案件がクリエイターとして一段高みに登らせてくれるか、というと、そうでもないような気がします。


お金(予算)でしょうか。
確かに予算が潤沢な案件のほうがクリエイティブのアプローチが増えて、やってみたかったことが試せたりします。
とはいえ、予算が大きい先はミスを犯して失注ともなれば、組織への損害が大きく、無難な立ち回りになりがち、という面もあります。
失敗が許されない、という緊張感の中で仕事をする経験にはなるでしょうが、予算がすべてか?というと、そうでもないような気がします。


ここからは、持論になりますが、意味のある仕事(=傑作)とは、依頼主サイド(窓口担当者、責任者)とクリエイターサイド双方の熱量の大きさであったり、本気度の高さが関係しているじゃないかと思っています。


わたしが自分が手掛けた中で傑作だと思っている作品の1つに某地方銀行のマニュアルレポート2011があります。

これは、私が以前勤めていた会社で初めてこの銀行との取引につながった仕事です。
前の会社は地方にあったのですが、その地域で名のある銀行です。ある種のブランディングの一環として、どうしてもこの銀行の案件を手掛けたかったという私の思惑がありました。

一方で、
銀行の仕事って、手堅いというか突飛なものを嫌うこともあり、つまらない仕事が多いんですが、それもそのはず。
銀行員にとって、こうした媒体制作とは、成功したところで自身の出世にはつながらず、失敗でもしようものなら、「あいつは満足に仕事ひとつこなせない」と言われかねない地雷仕事のようなものです。

この年のレポートの担当になったのは、失うものの少ないフレッシュな若手女性行員、そして、その上司は銀行内でもパワーがありながら、斬新なチャレンジも恐れない方でした。
(実際、この方は組織内で大出世を遂げられました)


こうした背景の中、案件を獲得するために、私が選任したデザイナーは大ベテランの女性でした。
この方は、有名美術大学出身で、大手化粧品会社の案件で賞を受賞するなど、尖るに尖ったデザイナーです。
普通に考えたら、手堅い銀行の案件はミスマッチです。
結果的に、取引の風穴をあけるべく挑戦的な提案をしたかった私、今までの銀行の枠を超えた新しい試みをしたかった依頼主とこのデザイナーがかみ合い、素晴らしい作品が出来上がりました。

そして、この女性デザイナーにとって、この地方銀行の案件が最後の作品になりました。
実は、この仕事を依頼する前から、身体の調子を崩されていて、仕事を絞っておられました。
最後に一花咲かせる意味合いで案件を受けていただき、プロジェクトが終了し、しばらくして他界されたのです。
この案件にかけた想いを想像すると目頭が熱くなります。

ここまでの熱量が揃うことはそうそうあるものではありませんが、できることなら、高い熱量の中で仕事をして、意味のある作品(≒傑作)を生みだしたいものです。


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私たちは仕事を請けるにあたり、依頼主の熱量・本気度を見極めることを大切にしています。
本気度とは予算の大小ではなく、
少しでも多くのお客さんを呼び込みたい、
事業を軌道に乗せて従業員を守りたい、
そういう依頼主の想いです。

受託型クリエイティブは例えるなら、依頼主を強い光を放つ太陽だとすれば、私たちクリエイターはその光を受け止めて反射し、美しい光を演出する月のような存在です。
優れた作品は、依頼主の強い光(熱量)があってこそです。

限りのあるクリエイター人生ですから、熱量のある依頼主と、1つでも多くの傑作を生みだせたら、と切に願っています。
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