不妊治療の流れ

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閲覧いただきありがとうございます!
東京都内の不妊治療クリニックで胚培養士をしています、フクワライ(embryology2901)という者です。
今回は、不妊治療をすることになった方がどういったことをしていくのかについて解説します。
これから不妊治療を始めようと考えている方や不妊治療施設へ行き始めた方のためになればと思います!

不妊治療の始まり

不妊治療施設に行ったら、まずは問診を行います。
氏名・年齢・住所に始まり、結婚してどれくらいか、子供が欲しいと思ってからどれくらいか、今まで不妊治療施設に行ったことがあるか、現在かかっている病気はあるか・・・などなど、病院によって内容に多少の差はあると思いますが、こういったことを聞かれます。
(最近は紙に記入したりWEB上で入力したりする病院もあるかもしれません)
次に採血を行いホルモン値等を測定し、医師との診察・内診を行って現在の体の状態を確かめていきます。
この問診・検査結果を踏まえたうえで、最初に行う治療が変わってきます。
場合によってはこれから紹介する治療を数段飛ばした治療を行う可能性もあります。

1.タイミング法

問診・検査結果で特に問題がなく、不妊期間が短い方、年齢が若い方はこのタイミング法から始まると思います。
タイミング法とは、排卵のタイミングに合わせて性交を行い妊娠を期待する方法をいいます。
排卵に合わせて性交を行わなければ受精・着床・妊娠は起こりません。
市販の排卵予想チェッカーもありますが、病院でのモニタリングと比べると正確性に劣ります。
より妊娠率を上げるために病院で検査しながら排卵日を正確に判別し、場合によっては薬剤を使用してサポートしながら性交のタイミングをお伝えするのがタイミング法です。

タイミング法の妊娠率は(不妊治療施設に通っているカップルでは)1周期あたり5~10%と言われており、1年間での累積妊娠率(1年間タイミング法を続けた場合1回でも妊娠することができる確率)は50~60%と言われています。

2.人工授精(AIH、IUI)

タイミング法を行っても妊娠しない方、精子の数や動きが少し悪い方、性交障害がある方は人工授精という方法がお勧めされます。
人工授精は英語でArtificial Insemination with Husband’s semen(AIH)やIntraUterine Insemination(IUI)と呼ばれます。

人工授精は、
・卵子がいつ頃排卵するか見極める
・精液の中からよりいい精子を選別・濃縮する
・濃縮した精子たちを子宮内に注入する
という手順で行われます。
この方法は、例えば精子の数が少なく動きが悪かったり、精子と頸管粘液の相性が悪かったりして、性交では精子が子宮内へ泳いでいかないカップルに有効です。

AIHの周期当たりの妊娠率は約8%と言われています。
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3.採卵・体外受精(IVF)

この方法からいわゆる「一般不妊治療」から「高度生殖医療」と呼ばれる方法になります。経済的にも肉体的にも精神的にも負担が増えていく傾向にあります。
採卵・体外受精は人工授精を数周期行っても妊娠しない方、高齢な方、タイミング法・人工授精で妊娠することができない原因のある方(卵管閉塞など)にお勧めする方法です。
採卵・体外受精とは、女性の体内で育った卵子を針で刺して吸引し(採卵)、体の外で精子と受精させる(体外受精)方法です。
体外受精は略してIVF(In Vitro Fertilization)と呼ばれます。

女性の体内で卵子が精子と出会えず受精が起きない場合、体の外で受精を起こし受精卵を体の中に戻すことで妊娠できる可能性があります。
そのため女性の体の中で卵子を育て(場合によっては注射等をして複数個卵子を育て)、手術を行って卵子を体外へ吸引します。
また精液を濃縮・洗浄し、その精子を卵子へ振りかけます。
そうすることで精子が泳いで卵子へ到達し、受精が起き、受精卵ができます。
この受精卵を女性へ戻す(移植)することで妊娠を目指します。

妊娠率は施設により異なりますが、全国平均すると移植当たり30~40%となります。
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4.顕微授精(ICSI)

顕微授精は体外受精を行っても受精が起きない、または異常な受精が多く起きてしまう人や、重度の男性不妊の方にお勧めする方法です。
顕微授精は卵細胞質内精子注入法(IntraCytoplasmic Sperm Injection, ICSI)と呼ばれる受精方法です。
採卵をして卵子を取った後、顕微鏡の中で卵子一つに精子一つを針で注入し、受精させます。
卵子一つに対して精子一つがあれば受精を起こせるので、精子の数がとても少ない人でも受精させることができます。
ただ針を卵子に刺す必要があるので、そのストレスで卵子が傷ついてしまい、その後成長しなくなってしまう可能性があります。

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IVFとICSIは受精方法で、どちらが先ということもないのですが、IVFを行って受精障害があったときにICSIを行う病院が多いかと思います。

5.胚・卵子・精子提供、里親・特別養子縁組

採卵・体外受精・顕微授精を行っても受精卵が得られなかったり、受精卵を繰り返し移植しても妊娠しない場合もあります。
そういった場合、現在ではそれ以上の治療法はありません。
そのまま採卵・移植を繰り返し行っていくのも1つの案ですが、別の案としては胚や卵子、精子を別の人から譲り受けて妊娠を目指す方法や、妊娠・出産を行わず子供を育てる・家族になるために里親・養子縁組制度を利用する方法があります。
胚・卵子・精子提供はまだ日本で制度が確立されていなかったり、里親・養子縁組制度にも多くのハードルがありますので簡単な選択ではありませんが、順番で言うとここに位置するかなと思いますので紹介させていただきました。

最後に

今回は不妊治療の流れについて解説しました。
それぞれの段階でもっと解説したい事もありますので、また個別にブログにしていきたいと思いますので是非ご覧ください。

もし不妊症・不妊治療について知りたい事がありましたらメッセージ等いただければ解説させていただきますのでよろしくお願いします!

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