養護老人ホームで介護記録を管理する上での悩み

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Accessで介護支援記録システムを作った理由-7

特別養護老人ホームで働いたあと、私は養護老人ホームで仕事をすることになります。
"特別"が取れたら何が違うのかと言えば、養護老人ホームは介護施設ではなく福祉施設だと言うことです。「生活環境や経済的に困窮した高齢者を養護し社会復帰を促す施設」と定義されています。
所得制限もあるため、誰でも申し込めば入居できる施設ではなく、行政"措置"により入居させてもらえる施設です。

とは言え、初めは自立できていた方も、介護が必要な状況になると、施設の中で"特定施設入居者生活介護"、略して"特定サービス"と呼ばれる介護サービスを受けながら入居を続けることができます。
現状は多くの養護老人ホームがこのような形で介護施設化しています。

さて事務担当者として着任し、最初に驚いたのは、やはり介護記録が昔ながらのやり方でExcel介護日誌の中に記録されていることでした。
専門職間の介護記録に関する情報共有は、朝のミーティング時に行われる慣習となっており、特養にいた頃を思い出します。
それでも介護サービスを受けている方は入居者全体の4分の1程度であり、サービスを受けていない入居者に対する支援記録を合わせても記録する件数は少なく、それで済んでいたのでしょう。
しかしタイムリーな情報共有や事務の迅速性から見ると非常に非効率であり、時代の複雑化とともに、無駄な作業にかかる時間が課題となっていました。
例えば、生活相談員が別目的のために、特定の入居者の介護記録をデータとして得ようとする場合、共有ファイルサーバに保管された日誌ファイルを一々開いて、その中から該当データをコピペすることが頻繁に行われていました。
特養で勤務したての頃に目の当たりにした情景のデジャブです。
生活相談員は日中、対外的業務で忙しいため、このような作業のために残業を余儀なくされ、まさに時間と金が無駄遣いされていたのです。

そこで、これをきっかけに、施設としてIT化に関する様々な業務改善に乗り出すことになりました。
その先陣が、介護支援記録を管理するシステムの導入です。
特養では立派なオンプレミス型の介護業務用システムが導入されていましたが、同様のシステムは費用が高くつくばかりか、介護施設ではない養護老人ホームでは、一部しか使わない無駄な機能が多すぎることが問題でした。
また、自前のサーバを必要せず、比較的費用が安いクラウド型の介護ソフトも検討しますが、操作がタブレットに限定されていたり、蓄積したデータの活用を図ることに難があり、これも選択肢からはずれます。

そこで、はたと思いついたのが、マイクロソフトのAccessで自分たちの仕事に合ったシステムを開発することでした。
もう仕事で使う機会は無いと思っていたAccessでしたが、養護老人ホームという環境の中で、その特徴を生かす機会がやって来たのです。

つづく
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