Excelの共有ブック機能はデータベースでは使えない

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Accessで介護支援記録管理システムを作った理由-1

退職前の2年間、私は養護老人ホーム、略して養護と呼ばれる施設で働いていました。

IT化に関して見ると、養護への異動前まで勤務していた特別養護老人ホーム、略して特養から比べれば大きく遅れている状況でした。
特養には以前からオンプレミス型の介護業務支援システムが導入されており、介護報酬計算や介護プランの作成、相談や介護の記録付けなどに使われていました。
一方、養護の方には有線LANとNAS程度は整備されていましたが、職員間で共有するようなシステムは存在せず、それには理由がありました。
養護は特養と名前が似ていても、その性格が大きく違っているからです。

養護は介護の必要性と関係なく、身体的な理由や経済的理由などから困窮し、在宅で生活できない高齢者が入居できる施設となっています。
とはいえ、入居者が高齢となり介護が必要となった後も、そのまま施設に住み続けられるよう、養護老人ホームには「特定施設入居者生活介護」、略して「特定サービス」と呼ばれる介護サービスが導入されています。

私が働いていた養護では、特定サービスを受けている方は全体の約2割にすぎず、かつ特養のように重度の要介護者も少ないため、介護や支援に関する記録を付けるのに、特養が導入しているような大掛かりなシステムは、コストパフォーマンス的にも必要としなかった訳です。
代わりに、以前のブログで触れたように、個別の介護記録は日誌の一部としてExcelシートへの記録が行われていました。PCは単なる清書の道具のようなもので、アナログとほとんど変わりはありません。

このような方式では、共有すべき情報へのアクセス効率は非常に悪く、特に現場にいる介護職員と、事務所にいる生活相談員やケアマネジャー等の専門職間に大きな情報ギャップが存在していました。
「日誌」という形のため、その日に起きた出来事は、翌朝にならないければ全員で共有することができず、また、その記録を別の目的に使おうとすると、フォーマットに合わせた転記を必要とするなど、無駄な労力が生じます。
このような問題、課題を一気に解決するため、施設に合った「介護支援記録管理システム」をAccessで自己開発することにしたのです。

やや前置きが長くなってしまいましたが、本題に移ります。

その施設では、Excelについて全職員が程度の差こそあれ、基本的な使い方をある程度知っていました。その状況の中で、Excelのデータベース機能を利用したシステムではなく、Accessで作ろうとした理由、その最大の理由は同時アクセスにあります。

情報共有を進めるためには、複数の職員が、複数のPCから同一のExcelファイルにアクセスし、その中のテーブル即ちデータベースを操作できることが重要となります。
この場合、記録データをデータベースに時系列順に入力していくことになるのですが、複数の職員で同時に入力を行っていくとどうなるでしょうか。

テーブルに入力を行うときは、最後に入力した記録データの次の行に、新しいデータを追加していくことになりますが、Excelの共有ブック機能を使うと、タイミング的に同じ行に同時に入力してしまう恐れが生じます。
この場合、記録データの入力にはそれなりの時間がかかるため、先に入力を始めた人が保存をすると、同時に入力中の別のデータは書き換えられてしまいます。これでは安心して記録を入力することはできません。

Accessではそのような問題は全くと言って起きないこと、それが重要なポイントでした。
さらに、使い勝手の面でも、ExcelとAccessでは大きな差があります。
これについては次回以降に譲ります。
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