おじさんって何考えてる?元大手メーカー管理職に聞く“自分らしいキャリア形成ができる人”

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ビジネス・マーケティング
実際に執筆したインタビュー記事です。どんな記事が作れるのか、の参考にしてください。
世はまさに、大転職時代!転職サイトの広告が目につくことはありませんか?まじまじと広告を眺める私は、メーカー勤め7年目でキャリアチェンジに踏み出したところです。はて、どうして会社員になったんだ?と振り返ったとき、スーツを着て会社に向かう父の背中が目に浮かびました。

父は、3000人以上の従業員を抱えるメーカーで20年に渡り管理職をしていました。多いとき、部下は70人もいたそうです。いわゆる、話しかけづらい類の“会社のおじさん”です。

今回、退職した父に取材し、転職してもしなくても自分らしいキャリアを作る人がどんな人かを本音で語ってもらいました。激動の時代を生き抜いた会社のおじさんたちって何考えてるの!と気になる方には必見の内容です。

今は“自分らしいキャリア”の選択肢が多くて、良い

自分で製品を作ったと思えたから、受け身のキャリアでもおもしろかった
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ーー娘なので、知っていることも多いのですが、改めて、これまでのキャリアについて教えてください。

あなたの父親、現在61歳。昨年3月に定年退職をするまで、メーカーで37年働いていました。37年間、ほとんど製品企画の部署でマーケティングを担当していましたね。

いまでこそ何千人もの社員を抱える大企業となっていますが、自分が若手のときはまだ会社の規模は小さかった。そのため、マーケティングと言っても任される領域は幅広かったですね。どういった製品が売れるか情報を集めて予測して、製品化の旗振り役まで担当していましたから。

ーー新卒から退職するまで、ずっと同じ会社で働いていましたよね。もともとその会社に入社したいと思っていたのですか?

いいえ。

何になりたいかわからないまま、「とりあえず中学生から続けてきたスポーツができるところに行こう」と体育学部に進学しました。まわりは教職を目指す人がほとんどで自分も教育実習に行ったのですが、想像以上に楽しかったんですよ!それで「学校の先生になりたい」と思って、死に物狂いで勉強して教員試験に臨みました。にも関わらず試験には落ちてしまって。

就職先に悩んでいたとき、会社から大学にスカウトが来て、とんとん拍子で就職が決まったんです。

ーー“メーカー会社員”は受け身で選んだキャリアのようにみえますが、お仕事は楽しかったですか。

希望した企画の部署で働けたから、若いうちは仕事がおもしろかったです。自分が担当した製品が展示会でたくさん注文されたとか、この店舗でこれだけ売れているとか、成果が数値で還元されると「楽しい」と思いましたね。企画した製品が雑誌に取り上げられ、賞をもらったこともあるんですよ。

とはいえ、年数を重ねる中で「やりたい仕事と違う」と悩むことも増えました。ただ、終身雇用が当たり前で会社を辞める発想のない時代でしたから、目の前の仕事に一生懸命向き合う以外選択肢がなかったんですよね。

分業化が「おもしろくない」か「専門的」かは、その人次第
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ーーもしお父さんが今若手になって同じ会社で働いたら、「仕事が楽しい」と思いますか?

自分が若手のときはまだ会社の規模が小さくて、幅広い業務に携われました。それが楽しかったんですよね。ただ、当時と比べて会社の規模はとても大きくなったし、その分分業化も進みました。そういった意味で言うと、いろんなことに携わりたい自分のような人にとっては「おもしろくない」と思う場面も多いかもしれません。

一方で「楽しい」とは少し異なるかもしれませんが、何十年も一緒に成長してきたから、愛着はありますね。入社当時は考えられなかったような大規模なプロジェクトに参加したり、世界規模で仲間ができたりもしました。退職した今も、いろんな部署の人と連絡を取り合って飲みに行くんですよ。

ーーなるほど。会社の成長とともにキャリアを築かれたからこそいろんな体験ができたのかもしれませんね。ただ、近年は転職が当たり前の時代に突入しています。終身雇用が当たり前の時代を過ごしてきたお父さんは、今の時代をどう思っていますか?

最近は、自分たちのころに比べて縦割りというか……専門職的な仕事が増えてきているように思います。だから、先程も言ったようにいろんなことに携わりたい人には物足りない面もあるかもしれない。一方で、それぞれ「私はこれが得意です」と自信を持てる分野があるからこそ、良い意味で転職のハードルが下がっているのだろうな、と思いますね。

それと同時に、会社側も中途採用者を受け入れる体制を整えてきています。そういう意味で、職種は専門的かもしれないけど、いろんな会社を経験できる時代になっていますよね。

ーーそこにネガティブな意味はない……?

ないよ(笑)

同じ会社で働き続ける以外の選択肢を持てるようになったのは、良いことですよね。自分のときは「会社を辞めるなんてとんでもない」という感覚の時代だったので、今のようにやりがいのために転職する人は見かけませんでしたから。途中で退職するのは、体調を崩して辞めざるを得なくなったとか、どうしようもない理由がほとんど。



女性の社会進出にワークライフバランスの向上。社員のバックアップ体制が課題
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ーー激動の時代を生きて来たんだなと感じました。管理職として、実際に採用の面接官を務めていたこともあると聞いていますが、候補者にも変化はありますか。

ここ10年くらいは、優秀な女性が多いと感じていました。自分だけでなく、同世代の管理職もそう思っている人が多いんじゃないかな。採用面接で就職活動をしている女性と接してきましたが、この会社で何をしたいのか積極的にアピールできる方が多いんですよ。

それは実際に優秀な女性の数が増えたということではなくて、時代が変わって女性も仕事を続けやすくなったからか「どういう仕事をしてライフイベントとどう折り合いをつけるか」考えている方が増えたからだと思っています。

ーー女性の一人として、管理職の方からそんな印象を持ってもらえてるのは嬉しいですね。ちなみに、時代が変わって女性も仕事を続けやすくなったとは……?

性別問わずですけど、自分が若手の頃は有給休暇を取得したことが全然なかったですね。有給休暇の制度はありましたよ。でも、誰も取らないし取ったら変な目で見られるような時代でした。何十時間残業しても、残業代がもらえないことすら当たり前でしたからね。

ーー制度はあったけど使っている人はほとんどいなかったと。「ブラック企業」や「過労死」という言葉も昔は無かったですもんね。他に働き方で変わったと思うことは何かありますか。

自分たちの世代と一番違っているのは、子どものいる社員が子どもの行事に必ず会社を休むことです。昔は土日にあった学校の行事も、最近では平日に行うことが多くなっているみたいですね。

ーー男性が家事育児に参加することが当たり前になってきましたもんね。ちょうど我が家でも夫が育休を取れたらなと思っていたところですが、男性の育休について管理職の立場でどう思っていますか。

自分個人としては、男性にも選択肢が増えるのは良いことだと思います。ただ、組織としてはまた別問題。どれだけ本気で社員のバックアップ体制を整えようとしているかどうかですよね。制度があったとしても、休職中に誰がカバーするかを考えておかないと、現場に皺寄せがいってしまいます。自分が若手の頃の有給制度のようにね。

社員が安心していろんな選択ができるようにするためには、会社側も本気で取り組まないといけません。でも、それが追いついていない会社がまだまだ多いのが現状。

欧米は休みに入ったら、当たり前のようにパタッと連絡が取れなくなりますよね。ああやって潔く仕事を止めることも、日本の企業は今後考えていく必要があると思います。



転職してもしなくても!自分らしいキャリアを作っているのは◯◯な人

自分らしいキャリアを作っている人は“積極的で信頼できる人”
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ーー一つの会社を勤め上げて、たくさんの人の出入りを見てこられたと思います。転職してもしなくても、自分らしく楽しくお仕事されている方はどんな人ですか。

やりたいことができる場所を見つけて出て行った人は、楽しそうに自分のキャリアを作ってますね。

転職に限らず、人任せにせず自分から行動して周りを巻き込んでいける人は、会社員でもそうじゃなくても、転職してもしなくても、どんどん自分のやりたいことを叶えていってるように思う。あとは信頼関係をきちんと築いていける人。どんなに行動力があっても、信頼されてないと仕事は回ってこないですからね。

ーー耳が痛いですね。具体的にはどういうことができる人ですか。

やりたいことが共通している仲間を見つけて、一緒に売上目標を含めた計画を立てて、その計画を持っていって上司や関係部署を納得させられるような人かな。最初から大きいプロジェクトは無理でも、それを繰り返すことで信頼関係ができて大きい仕事も任せてもらえるようになると思いますよ。



選択肢を広げられるのは“どこでも通用するスキルのある人”
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ーーたしかに、そういった方はどこでもやっていけそうです。ほかに、自分らしいキャリア形成に必要なものはありますか。

営業や人事、経理のような、どんな場所でも活かせるスキルですかね。今思うと、自分自身が辞めたいと思ったときに勇気が出なかったのは、終身雇用が当たり前の環境だけでなく「スキルがなかったから」というのも理由のひとつだったかもしれません。

ーーなるほど。スキルがあったら、当時でも転職してたかもしれないってことですね。まさに今スキルを身につけながら会社員から転職しようとしている私に向けてエールはありますか。

新しいやりたい仕事があるなら、挑戦してみたらいいと思う。あのときやっておけば良かったって思うよりは、やれるときにやった方がいい。ただ、収入面でどういった変化があるかわからないと思うし、旦那さんの理解とか挑戦できる環境への感謝は忘れないでほしい。子どももいるし、それこそワークライフバランスを考えながら頑張ったらいいんじゃないかと思います。

ーーいつの時代も、自分らしいキャリアを形成する人はスキルを磨きつつ積極性や信頼関係を大事にしている、ということですね。応援してくれる夫や家族への感謝を忘れずに、頑張っていきたいと思います。取材を受けてくださり、ありがとうございました!



取材・文:kubomi
編集:仲奈々
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