『色』が『こころ』に与える影響

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コラム
色の持つ効果についてご説明する前に、まずはマンセル色相環(マンセル・カラー・システム、Munsell color system)をご紹介します。
この図【マンセル・カラー・システム (Munsell color system)】
マンセル色相環.jpg

Wikipediaでは次のように説明されています。
マンセル・カラー・システム (Munsell color system)とは、色を定量的に表す体系である表色系の1つ。色彩を色の三属性(色相、明度、彩度)によって表現する。マンセル表色系、マンセル色体系、マンセル システムとも言います。
このように、色相、明度、彩度という3つの組み合わせによって色彩を表現するというのがマンセル色相環の考え方です。
色相、明度、彩度という言葉はどこかで聞いたことがあると思いますが、それぞれ次のような意味となっています。

☆色相☆
色相はいわゆる色味のことを表します。色相環は色の波長を元に作成されており、赤、緑、青、黄色などの異なる色相が存在しています。絵の具の色の違いが色相の違いにあたるイメージです。
☆明度☆
明度は、その名の通り色の明るさのことを言います。明度が高い色ほど白に近づき、明度が低い色ほど黒に近づきます。

☆彩度☆
彩度は、色の鮮やかさを表します。彩度が0の色は、黒、白、グレーといったモノクロの色になります。反対に、彩度が高い色は原色に近い色に近づきます。赤い絵の具に白や黒の絵の具を混ぜるとだんだん鮮やかさが落ちていくと思いますが、それは彩度が低くなっているということです。
では、ここでもう少し『色』について学んでみたいと思います。
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○アリストテレスの『色彩論』
色の研究が始まったのは、古代ギリシア時代とされています。
芸術に否定的であったプラトンは、「混色して新しい色を作るのは神への冒涜行為」と述べましたが、弟子であるアリストテレスは「色は白と黒の間に生じる」とする『色彩論』を著し、有彩色の配列を白、黄、赤、緑、青、紫、黒の7色と考えました。
プラトンとアリストテレスの思想は、18世紀にイギリスの物理学者ニュートンが登場するまで、ヨーロッパのキリスト教社会における色彩文化に大きな影響を与えました。

○色彩心理の基礎をつくったゲーテ
14~16世紀のルネサンス期には、レオナルド・ダ・ビンチを筆頭とする画家たちによって色の研究も行われましたが、1704年にニュートンが著した『光学』は、それまでの色と光にかんする常識を覆しました。
ニュートンは、スペクトルを発見し、太陽光などの白い光は様々な色の光が重なったものだという実験報告を発表したのです。
詩人として知られるゲーテは、アリストテレスに深く傾倒する哲学者でもあり、1810年に『色彩論』を発表して、ニュートンを批判しました。
ゲーテは、「色彩は、光と闇との相互作用によって生じる」と主張し、色の生理的作用や感覚的作用を述べたのです。
色が人にどのような影響を与えるかという点に注目したゲーテは、現在の色彩心理の基盤をつくったとされています。

○色彩学と心理学がクロスした19世紀
19世紀になると、心理学の前身である「精神物理学」や「感覚生理学」が成立し、色は視覚の現象ととらえられて、研究が進みます。
技術的な進歩によって色を扱う環境が整ってくると、色彩学も基礎が固まっていきました。
1839年にフランスの化学者シュブルールが、人の感覚から考えた色の配列である『色の同時対比の法則』を発表し、多くの芸術家に影響を与えると同時に、色彩学と心理学の関係が近づいたのです。

○カラーシステムが考案された20世紀
20世紀には、アメリカのマンセルや、ドイツのオストワルトらが、色をとらえるためのカラーシステムを考案しました。
色彩学は実用的な分野で発展していきます。
1919年には、建築を含む美術、工芸の学校として世界的に有名なバウハウスがドイツに設立され、ここの教師であったスイスのイッテンが、色の効果と影響について学生に指導したのです。
マンセルのカラーシステムは、現在も広い分野で使用されており、ネット上でも画像データやpdfがダウンロード可能です。

○現代の色彩心理を形成したアメリカのABC
アメリカでは20世紀に、色の効果が経済活動や生活に与える影響など、実践的な研究がたくさん行われました。
アメリカの色彩学を代表するABCと呼ばれる、アボット、ビレン、チェスキンの3人は、「色彩における機能主義」を追求し、現在イメージされる色彩心理の原型を形成しました。
世界初のカラーコンサルタントとして活躍したビレンは、工場の生産性を高める色の指摘や、安全標識の色の開発が有名で、安全標識の開発は、1953年に国際標準化機構に「安全色彩」として採択され、全世界に推奨されました。
消化器や火災報知機の赤、注意喚起を表す黄と黒の縞などは、ビレンが考案したものです。
またビレンは、色が与える心理的影響や、色の好みによる性格判断なども発表しました。

○期待が集まる今後の色彩心理学
人が色をどのように感じ、どのような影響を受けるのかという研究は、心理学では基礎心理学の分野に相当し、色による性格判断は、応用心理学の「色に対する心や行動のかかわり」に相当します。
このように色彩学と心理学が重なり、「色彩心理学」と呼ばれる分野が提唱されました。
しかし、心理学は脳の研究と切り離せない時代となり、科学的な検証が高いレベルで求められるために、色彩心理学は、いまだ確立に至っていないのです。
近年では心の治療や、心の健康を維持するために色彩は確実に役立っており、色彩心理に関する本や論文も数多く発表され、大学では科目になっていなくても、色彩心理学の講座が開かれるようになっています。
ファッションや商品の売上向上だけでなく、鉄道各社が自殺防止のために青い照明を用いるなど、色と心理の関わりには大きな関心と期待が寄せられており、さらなる研究と実験による色彩心理学の確立が待たれています。

ここまで『色』の歴史・色彩心理を記述してきました。
最後に、それぞれある『現在の基本色』について、それぞれがどの様に『心』に影響を及ぼすのかをまとめて終わりたいと思います。

●赤の心理:エネルギー
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レッドローズ
強いエネルギーをもたらす色
赤色は「活力・情熱・興奮」といった強いエネルギーをイメージする色で、積極的なリーダータイプの人に好まれる色です。
また、やる気になっている時・元気がほしい時・自信を取り戻したい時・自分をアピールしたい時など、エネルギーが満ち溢れているか補給したい時に赤が好きになる人が多いです。
一方で、赤には「怒り・攻撃的」といったネガティブなイメージもあります。怒りや攻撃性も強いエネルギーのひとつ。活力や情熱と同じ強いエネルギーが、ネガティブな表れ方をしたものです。
自己主張の激しい、目立つ色
赤はとても自己主張が激しく、小さくても目立つ色です。そのため、信号機やパトランプ、消火器など、危険を表すサインとして利用されています。
赤は、血や肉・熟した果実の色であり、遠い昔から「生命に直結する」色でした。そのため人は本能的に赤に反応するようなったと考えられます。また、食欲や性欲といった動物的な生きる力(生命力)を高める色でもあります。
あたたかさを感じる色
赤は暖色の代表的な色で、あたたかみを感じる色です。赤に囲まれた部屋では体感温度が2~3℃上がるという実験結果も報告されています。これは赤の光が「交感神経」を刺激し、脈拍と体温が上がり血流がよくなるためと考えられています。
寒気を感じる時や慢性的な冷え性対策に赤の効果を取り入れましょう。冷えやすいお腹や足先には、赤の下着と靴下がおすすめです。
★赤の活用方法
情熱的で活力のある赤は、行動を促す効果があるので、店頭のサインやPOP、パッケージなどに使われる傾向があります。
また、お祭りなどのエネルギッシュなイベントでも活用され、リーダーの象徴としても活用されます(そういえば、戦隊モノのリーダーやヒーローは赤が多いですよね(笑))。
ポジティブな意味での活用としては他にも紅白などのおめでたい場でも使われます。
一方、ネガティブな意味では怒り、暴力、警告といったイメージを表現する場合に使用します。
パトカーのサイレンや消防車といった緊急を知らせるもの、停止や禁止を警告する標識や看板などに使用されています。

●橙の心理:ポジティブ
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キャンドルのオレンジの光
陽気であたたかい、人間関係を促す色
橙(オレンジ)は赤と黄色が混ざった色で、太陽や炎のような陽気であたたかい高揚感を表す色です。橙が好きな人は、陽気で人付き合いがよく社交的なタイプが多いです。さびしがり屋やお人好しが多いのも特徴です。
楽しい雰囲気を作り、食欲を促す
橙色には胃腸を刺激し食欲を促す効果があるので、食欲がない日が続くなら食卓に橙を取り入れるといいでしょう。キッチンや食卓に橙の色があると、料理も食事も楽しくなります。
カジュアルで親しみやすいイメージから、飲食店のインテリアやWebデザインに使われることも多い色です。
不安や抑圧から解放する
橙のやさしくてあたたかい光は、恐怖やプレッシャーによる心の不安や抑圧を取り除く効果があります。心が乱れている時や不安で押しつぶされそうな時は、橙の光を見れば、心身のバランスを整えることができるでしょう。
★橙の活用方法
橙は喜び、陽気、暖かいなどの印象から温もりや家族の温かみを表現できるため、住宅関係に使用されることが多いです。
また、楽しい雰囲気もあるので、陽気なイベントなどにも使われる色です。

●黄の心理:アピール
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黄色のひまわり
太陽のような希望の光
黄色は太陽の光にもっとも近い色で、古代のエジプトやマヤ文明では太陽を表す色として崇拝されてきました。黄色は明るい太陽のように人々に希望と喜びを与え、楽しい感情を生み出す色です。
心理学的には、強い希望を抱いているときに鮮やかな黄色が気になる傾向があります。また希望をかなえるために乗り越えなければならないハードルがあるとき、黄色+青や黒という高コントラストな配色を好む傾向があります。
知性を刺激する色
黄色は左脳を刺激し知性を高める色です。理解力、記憶力、判断力が高まり、心の不安を解消します。人前で話すのが苦手な人でも、黄色を使うと頭の回転が速くなり会話をスムーズに運ぶことができるようになります。
子ども・甘え・自己アピールのイメージ
黄色はとても目立つ色で、危険を表すサインとして使われています。自然界ならトラやハチの縞模様、人工物なら踏切や工事・立ち入り禁止の看板のように黄色+黒は危険を表しているものが多いです。
また、自己アピールの強い人は黄色を好む傾向があります。自分の方を向いてほしい=甘えの気持ちが強いときに黄色が気になります。黄色は赤と並んで子どもが最も好む色です。子どもがもっている「甘え・無邪気さ・自己中心的」といったイメージともぴったり合いますね。
★黄色の活用方法
黄色は、愉快、元気、軽快、希望、無邪気といったイメージを喚起する色です。
光の色を表す場合にも多く使われる黄色は、明るく楽しい印象を持たせる場合に効果的な色だといえます。
また、注意を喚起する、注目させるといった効果もあるため、注意を促す道路標識や注目させたい看板などにも使われます。

●緑の心理:バランス
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緑のクローバー
バランスと安らぎの色
緑は暖色でも寒色でもない「中間色」でもっとも刺激の少ない色です。物理的にも人が見える色(可視光)の真ん中あたりに位置し、心身のバランスを整えリラックスさせる効果があります。
また刺激の少ない緑は、見る人に安心感を与え、落着きと安らぎをもたらす効果があります。
癒しと成長のイメージ
緑は自然や平和をイメージさせ、自然がもつ癒しの効果をもたらします。またスクスク伸びる草木のように、健康と成長をイメージさせる色です。
緑のネガティブな側面
緑は刺激の少ない色で、積極的で活発な人には好まれない傾向があります。「保守的・受動的・マイペース」といった補色の赤とは正反対のイメージももつ色です。
★緑の活用方法
緑は、安らぎ、癒し、穏やかといった印象を喚起させるため、リラックスできる空間や商品に効果的な色です。
また、自然のイメージに結びつくことから、健康的な印象も喚起させるため、健康食品や環境対応商品などにも多く使われます。
その他にも緑が持つ穏やかなイメージが安心や安全を連想させるため、非常口のサインなどにも使われます。

●青の心理:抑制
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青の光
鎮静と抑制の色
青は心身の興奮を鎮め、感情を抑える色です。青の効果を取り入れれば、心身が落ち着き、感情にとらわれず冷静に物事を判断できるようになります。
これは青の光が「副交感神経」を刺激し、脈拍や体温が下がり、呼吸もゆっくりと深くなるためと考えられます。
集中力をサポート
青は心身を落ち着かせ、長時間の集中力を助けるので、単純作業や頭脳労働の場所で使うと効果的です。集中力を乱さず、冷静な判断力で、飽きずに的確な仕事をすすめることができるようになるでしょう。
爽やかで信頼できるイメージ
青には「クール・爽やか・信頼感」といったイメージがあるので、企業のWebデザインでよく使われます。白との相性がよく、水や青空のようなクリアな透明感を表すことができます。
また、誠実さを感じさせる色なので、人とのコミュニケーション、特に1対1のコミュニケーションをスムーズにする効果があります。
★青の活用方法
知的、落ち着き、信頼感、誠実といった印象を喚起させる青は、企業のコーポレートカラーとして使用されることが多い色です。
また、空や海、水を連想させるため、爽快感を演出させる場合にも効果的です。
一方、その静的なイメージから、悲しい、冷たいといった印象を与え、気分を沈めてしまう場合もあります。

●紫の心理:スピリチュアル
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アメジストの紫
赤+青のバランスと癒し
紫色は「活発な赤」と「抑制の青」という正反対な2色が混ざった色です。赤と青のように、ぶつかり合う2つの心が葛藤状態にあるとき、両方の性質を持つ紫色が心のバランスを整えてくれます。
紫はよく欲求不満の色とか病的な色と言われます。しかし本当は心身のバランスを整える癒しの色です。心身が疲れてしまったときに紫の癒しを欲しているのです。
高貴な癒しの色
紫はスピリチュアリティを象徴し、セラピストやヒーラーが好む色でもあります。遠い昔から宗教色として尊ばれてきた色で、自分の潜在能力に気づかせてくれる光でもあります。紫は深い瞑想に導き、潜在能力を引き出す色なので、精神を集中したいときには紫の光を取り入れるといいでしょう。
★紫の活用方法
上品さや神秘的な印象を喚起させる紫は、敷居の高さや特別感をイメージさせる色として効果的です。
また、優雅さや妖艶な大人の女性をイメージさせるにも効果的といえます。
一方、不安な印象を持たせる色でもあります。

●ピンクの心理:愛情
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ピンクのハート
恋愛・幸せ・思いやり
ピンクは、恋愛・幸せ・思いやりなどのやさしいイメージをもつ色です。恋に夢中の時や、幸せで充実している時、また愛や幸せを欲している時などにピンクが気になります。
また、ピンクは心と体を若返らせる効果があり、心を満たし人を思いやるあたたかさを与えてくれる色です。
女性が好きで嫌いな色
ピンクは女性らしさをイメージさせ、女性に最も好まれる色の一つです。しかし一方で女性に最も嫌われる色でもあります。
子どもの時に女性らしさを強要された女性や、女性らしさに距離をおく女性は、ピンクを好まない傾向があります。ピンク=女性らしいというイメージに頭で抵抗しているケースです。しかしそんな場合でも心ではピンクを好きだったりもします。
甘さを刺激するのでダイエットに注意!
ピンクは味覚的な甘さを刺激する色なので、ダイエットのときには注意しましょう。甘いものがとてもおいしく感じます。
★ピンクの活用方法
可愛いらしさを連想させるピンクは、女性や赤ちゃんをイメージさせる色といえます。
また、ピンク色のものは幸福感や愛情といった印象を喚起させるため、贈り物の包装紙やリボンなどに使われることも多い色です。

その他の色については、表にまとめてありますので参考にして下さい。
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