コラム50 先輩後輩・上司部下

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 さて、コラムもはや50回目を迎えました。約1年かけてのんびりとマイペースで書いてきましたが、読んでくださっている皆様に支えられなんとかここまでやりとげられました。誠に有難うございました。今後ともよろしくお願い申し上げます。 
 今回は先輩後輩関係について考察いたします。医者の世界はまだまだ昭和感が強く年功序列です。経験年数が多い医師が上司、少ない医師が部下になります。一般的には経験年数により医師としてのスキルも段階的に高まっていくことが多いため、上司部下の関係性に問題ないことも多いです。しかし、個人のモチベーションや能力、医療と私生活との時間配分の差等が経験年数を凌駕し、医師としての「力量の差」が社会人10年くらいからは経験年数に関わらず鮮明に浮かび上がって参ります。誰から見ても明らかな差があるにも関わらず、総合病院や特に大学人事による派遣医師は経験年数の順に上司・部下が定義され、わずかながら収入も経験年数の多い医師が上になってきます。
私はここ数年この状況が納得できませんでした。既に日本でも医療界以外の企業では年功序列は廃止されつつあるのでしょうか?その会社にとって能力が高い、数字が出せる人物は若くても、年上を従えたり、収入が多かったりするのでしょうか?私はそれが営利企業のあるべき姿だと感じます。病院であっても収益が大切であり、数字を出せる医師、スキルが高い医師、部下を適切に指導できる医師が管理職となるべきですし、収入も高くて然るべきです。しかし、どう見ても私が今まで所属してきた総合病院は一年でも経験年数が多い医師が上司、収入も上でした。したがって、誰も仕事へのモチベーションが上がらない環境に置かれている印象です。
 ただ、医師の仕事に対するモチベーションは収入や地位だけでは当然ありません。私の知っている限り大抵の医師が仕事に対するモチベーションを保てているのは、患者さんの病気を治してあげたいとか、論文を書いて実績を残したいなどといったいわゆる医師になる人としてのあるべき姿(世間一般に求められる姿?)を実際に思い描いているからです。つまり、大体の医師はとても真面目で真摯に医療と向き合っていると思えるのです。でも、より優れている医師を適切に評価し、収入や地位を向上させるような、システムや60歳付近昭和世代で年功序列の頂点に君臨する医師達の考え方はほぼ存在しません。私の感覚では日本社会の世間一般の考え方よりも20−30年程度遅れています。大学の医局人事から離れ、医師の転職が流行ってきています。しかし、医師が医師免許を取得し初期の教育を受けるのも大半は大学です。従って、大学で働く全ての医師が充実していることは今後の日本の医療を発展させることに不可欠だと考えられるため、多方面から見て優れている医師をしっかりと評価し適切に昇格、昇給していくような仕組みが今後必要であると思います。
最後にどうすればしっかりと医師の様々なスキルを評価できるようになるのか考えてみました。それは相互評価と数字の公表です。前者の相互評価とはまさしく部下が上司を評価し、上司が部下を評価する制度です。たとえ上司であっても部下からの評価が低ければ降格もやむを得ないと思います。トラブル時の責任能力、医師としての技術、コメディカルとの協調性、その部門の売り上げ、学会発表の数、論文作成の数、先進医療の数、研修医に入局してもらった数など、色々な面から上司もちゃんと部下に評価されるべきだと感じます。それと通ずるものもありますが、後者の数字の公表に関しては、医師一人一人の手術施行件数、入院患者数、売り上げ、学会発表数、論文数など数字で表すことができる指標をできる限りオープンにし、それに基づき昇格、降格、昇給、降給を決定することが大事だと思います。
 現在の医療界、特に大学人事の医師は年功序列に慣れ、それが楽だからといって上司部下を年功序列で決める風潮が強く残っています。しかし、考え方を改善しこのような年功序列のシステムを排除していくことが今後必要になってくると強く感じています。

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