コラム45心不全に対する運動療法

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 皆様こんにちは。今回は心不全に対する運動療法について解説しようと思います。心不全になるとどんな生活が待っているでしょうか?一般的なイメージと言えば数種類の薬を飲んで、心臓に負担がかからないように安静にして、塩分を控えめにして生活していくことでしょうか。 
 近年は心不全の患者さんと言えど適度な運動を行う必要があるというのがわかっています。ご存知の通り心臓は筋肉でできています。従って鍛えないと衰えていくのです。このことを心不全患者さんの外来でよく言うのですが、頻繁にびっくりされます。「私は心不全だから心臓を休めて安静にしてなければならないのではないのですか?」とか、「運動して苦しくなって心臓に負担がかからないのですか?」などとよく聞かれます。確かに、運動によって過度の息切れや胸痛が出現するのはよくないですが、それぞれの心不全のステージにあった適度な運動療法はどの薬物療法よりも心不全患者さんの生活の質を改善するだけでなく長期予後を改善することが多くの研究で証明されています。
では心不全患者さんはどのように運動すればいいのでしょうか?実際の臨床現場ではリハビリテーションの専門家が存在します。心不全に特化した心臓リハビリテーション科で運動耐容能の評価を行いそれに基づいた運動の処方箋が発行されます。飲み薬の処方箋と同じイメージです。それを元にリハビリテーション施設で週に数回患者さんの心臓リハビリテーションが行われるのが一般的です。もちろんリハビリテーション施設のみでなく、毎日それぞれ患者さんの状況に応じた自宅等でのリハビリテーションも自己管理でやっていくことも重要です。
 アメリカ心臓協会とアメリカ心臓病学会の共同科学声明によると、心不全患者における運動療法の効果についての最新の研究成果がまとめられています。主なポイントは以下の通りです:
安全性と効果: 監視された運動トレーニングは、多くの心不全患者にとって安全であり、運動能力と生活の質を著しく改善する可能性があります。特に、心臓のポンプ能力を改善し、動脈硬化を減少させ、骨格筋の機能とエネルギー容量を向上させる効果が指摘されています。
研究の範囲と方法: 2010年以降に発表された研究が評価され、ウォーキング、ステーショナリーサイクリング、高強度インターバルトレーニング、筋力トレーニング、ダンスなど、さまざまな運動形態が検討されました。これらの運動療法は一般的に週3回実施され、プログラムの期間は1か月から8か月でした。
具体的な改善結果: 研究では、ピーク酸素摂取量の12-14%増加、総運動時間の21%増加、生活の質スコアの改善が観察されました。これらの改善は臨床的に意味があると評価されています。
総じて、管理された運動トレーニングは、心不全患者さんで運動能力と生活の質を大幅に改善する安全な手段であると結論付けられています。適切な患者の運動プログラムへの紹介、運動トレーニングへの長期的な遵守を促進する戦略の策定、監督されたトレーニングと自宅でのトレーニングを組み合わせたハイブリッドプログラムの開発が今後の課題とされています。 
 ご自身や周囲に心不全の方がいらっしゃったら適切な運動療法が行われているかどうかチェックしてみるのみいいかもしれませんね。

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