法令を「適応」したくなる人々

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  このページをご覧くださり、誠にありがとうございます。

 今回は、しばしばみられる間違いの一つ、法令の「適応」についてご説明いたします。
 カッコ書きにしておりますのは、お察しの通り、「適応」は間違っているからです。正しくは、「適用」です。

 法学の素養が少しでもあれば間違えることはないです。法学の基礎中の基礎。義務教育で例えるなら、あいうえおの書き方。数学でいえば、数字の書き方です。決してカタカナの書き方とか、掛け算割り算レベルではありません。それほど、法令は適用するものであるということは、法学おいては初歩中の初歩なのです。正確には、準用や類推適用というものもありますが、適応は100%使いません。法律の勉強をするに当たって、適応という言葉を見かけることは、ほぼありません。
 法律の勉強などしたことがない、という方もいらっしゃるのかもしれませんが、我々の生活はほとんどの側面から法律によって守られ、規制されておりますし、法令を公布する官報が発売された瞬間に国民は法令の内容を知ったものとみなされますので、習っていないとかいうのは、知らないことの言い訳にはなりません。ですから、適用という初歩的な用語を知らない方がおかしい、ということになります。

 文法や語義の面からもおかしいことはわかるはずです。まず、語義からですが、「適応」は、環境等に応じて変化するという意味ですから、法令を具体的事実に応じて変化させるのはおかしい、ということがわかるはずです。法令を変更するのは国会の仕事ですからね。また、文法的には、「適応」は、主語が変化するということで、自動詞ですから、「を」を付けるのはおかしいということになります。

 この間違いをする方は、おそらく、耳コピで日本語を覚えがちな方なのだろうと思います。「一応」を「いちよう」と書いている人いますよね。文字を見て覚えたり、聞いたあとに確認したりせずに、耳で聞くだけだから間違えるのだろうと思います。あるいは、「適応」と書いてある文章を読んで覚えたかでしょう。

 何か被害を受けたとき、あるいは、やっちまったな、というとき、ネットで法律解説を検索することありますよね。弁護士事務所のサイトであれば、このような間違いをしていることはないのですが、ど素人が書いた法律解説サイトでは、平気で「適応」と書いてあったりします。解説者ぶっているのに初歩の初歩の部分で間違えているというのはとても恥ずかしいことです。
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