言わずもがなですが、コンサルティングファームでは「バリュー」を常に意識する必要があります。
バリューを出していなければ(出していないと感じているのであれば)、コンサルタントとしての仕事のやり方を見直した方が良いと思います。
ただ一方で、頭では理解しているものの、バリューの出し方がわからない、コンサルタントとしてのクオリティスタンダードが分からないという、若いコンサルタントは多く存在することも理解しています。
丁寧に「バリューとは何か」を教えてくれるような、コンサルティングファームの文化は人間関係が希薄なコンサルティングファームには無いようにも感じています。
そもそも、クライアントバリューは、クライアントの状況や期待値によって変わるもので、画一的なものはないと考えられますし、バリューはこうあるべきだ、と示すことが逆効果になることもあると思います。
ただ、今回お伝えしたいことは、コンサルタントとして「バリューを出す姿勢」は共通して大事にしなければならず、意識する必要があると思います。
そこで今回は、バリューを出す上で重要となる「マインド(姿勢)」について、以下3つのポイントを解説したいと思います。
パソコンと仕事しない、人間と仕事をする
コンサルティングサービスは、いわゆるサービス業に位置付けられます。
サービス提供によって相手が満足するかが重要であり、無形資産に対して高い報酬をクライアントから頂戴してビジネスが成立しています。
高いコンサルティングフィーに見合った、質の高いコンサルティングサービスを提供することが前提で、仕事に取り組む姿勢を考える必要があります。
プロジェクトワークでは、リサーチしたファクトや、インタビューに基づく情報整理、内部で議論を重ねて、仮説を検証して、色々と思考を巡らせるかと思います。
また、スライドを大量に量産して、最終報告で100ページ超にわたる超大作を仕上げて、納品するということがよくあるシーンだと思います。
ただ、本質では無いと考えます。
本質はプロジェクト内で分析した内容や検討を重ねた示唆を相手に伝えることです。
スライドは相手に伝えるための道具であり、スライド作成に時間を取られること、パソコンと仕事をすることはナンセンスです。
パソコンで調べて一定のファクトを抑えることができたら、パソコンを閉じて相手の知りたいをこと妄想しながら、情報を整理しましょう。
ある程度考えが整理できたら、クライアントと早い段階で議論をして仮説を検証しましょう。
クライアントの持っている情報を引き出して、さらなる仮説のブラッシュアップや新たな論点をあぶりだして、高速で回転させていくことがクライアントバリューになるはずです。
コンサルタントとして経験が浅い状態では、プロフェッショナルがゆえ、生煮えの状態でクライアントと会話することに抵抗を感じることが少なからずあるかと思います。
ただし、クライアントとコンサルタントは、役割が異なると考えるべきです。
クライアントの知っている情報をもとに、コンサルタントの第三者としてどのように捉えるべきか、周辺情報を踏まえてどのように考えるのか、視点をズラすことがバリュー提供に繋がります。
クライアントのためを思って最適解を見つけにいく仕事をしているので、遠慮する必要はありません。
積極的にクライアントを巻き込むスタンスを取る必要があります。
上司を見ない、クライアントを見る
経験が浅いがゆえに、上司の言葉に引っ張られ、指示を忠実に遂行する、つまり作業員となる、ということは良くあると思います。
確かに、上司(マネージャーやパートナー)は、過去のプロジェクトからの経験値が蓄積され、見えていない視点や考え方を出してくれます。
真摯に受け止める必要はあると思います。
一方で、現場に触れている情報量でいうと圧倒的にスタッフの皆さんの方が多いですし、現場の生の声やファクトを把握しているはずです。
上司の把握している情報量は、良くて全体の20%程度だと思います。クライアントに寄り添ってプロジェクトを遂行できるのはスタッフの皆さんです。
周辺情報を受け止めた上で、どういう行動、判断を下して仕事を進めるかを考える必要があります。
現場のみなさんの考え方しだいで行動を変えていくことが重要だと思います。
あくまで、クライアントと仕事をしています。
上司の言っていることが全て正しいわけではないということは、前提として認識しておく必要があります。
ただし、上司の経験に基づく「視点」は非常に大事になると思います。
例えば、現場に寄り添いすぎるがゆえに視座が現場目線で低くなってしまうことはよくあると思います。
コンサルタントはマネジメント視点で経営に関する問題解決を求められています。
また、現場の意見をまとめて整理することも重要ですが、客観的・俯瞰的に示唆を出すことが求められます。
この辺り、上司をうまく使いながら、ご自身の足りていない知識や知見を補うような発想が重要になると思います。
良い喧嘩をする
コンサルタントの仕事をしていると、状況によっては厳しいことを言わなければならないシーンは必ず出てきます。
クライアントの今まで築き上げてきたビジネスや価値観に対して、客観的な視点で否定に近いようなことを伝えることもあり得ます。
現場目線とマネジメント視点を行き来しながら、クライアントと仕事を進めていくことがコンサルタントとして求められるバランス感覚です。
異なるレイヤの話をしているので、擦り合わないこと、衝突することは確実に出てくると思います。
むしろ、そのギャップを埋めるもしくは、埋めるための考えを揃えるため、客観的に状況を把握するコンサルタントが存在するものと考えます。
喧嘩するほど、クライアントと会社の方向性について議論を重ねて良い方向に持って行こうとするマインドを醸成することは重要です。
バリューを出せたかひとつの指標として良いものだと思います。
僕は、色々と思考錯誤した上で、心からクライアントのことを思って、喧嘩しながらプロジェクトを進めた経験がたくさんあります。
ただ、感情的になるシーンもありますが、根っこの考え方(思想)がしっかりしているかが重要で、そこが共感できるものであれば喧嘩することは大した問題にならないはずです。
それこそが、プロジェクトのアウトプットにコミットして、本当に会社のことを考え尽くした「コンサルタントとしての信念」だと思います。
さいごに
一世一代の企業の大きなイベントに関わることのできることがコンサルタントです。
コンサルタントの仕事は非常に難易度が高いですが、魅力的でありやりがいを感じるものです。
コンサルタントとしてのバリューを出すことは容易なものではありません。
バリューの出し方に悩んだ時には、「パソコンと仕事しない、人間と仕事する」、「上司を見ない、クライアントを見る」、「良い喧嘩をする」ことを見つめ直して、問題解決の本質(目的)に立ち返ると良いかと思います。
膨大な作業に追われて、本質的なバリューを見失うこともあると思いますが、多少作業が雑になっても相手からすると大した問題ではないことが多いです。
それより、本質を捉えることが重要です。
作業から脱して、バリューベースで仕事を意識することがコンサルタントとしてもっとも大事にしなければならないことになります。