研究職就活のための研究概要書の書き方

記事
コラム
研究歴7年、28歳男性で生物系研究者の「めいす」です。
博士(医学)の学位を取得しています。

私は現在ポスドクをしており、
来年度から大手製薬企業の研究職として就職します。

参考までに、私の就活の結果はこちらです。
■ES通過率 【100%】
■最終面接到達率 【100%】
■エントリーシート通過企業
アステラス製薬、エーザイ、協和キリン、住友ファーマ(旧大日本住友製薬)、田辺三菱製薬、第一三共、中外製薬、ペプチドリーム
■最終面接到達企業
上記のうち、4社
(他の会社はES通過後に選考辞退)

私が研究職就活で最も大事だと考えることは
研究概要書であると以下の記事で紹介いたしました。



そこで本記事では、如何にして”通る”研究概要書を書くのか、
について紹介したいと思います。

1.私の研究概要の構成

一般的にA4 2枚での提出が求められる場合が多いので、そのケースです。

[研究背景] 381文字
[着想の経緯] 380文字 (図1)
[研究方法と結果] 1281文字 (図2~4)
[今後の展望] 188文字
[本研究の意義] 524文字
[研究業績]

元々学振PDに出していた研究計画書を元にしているので、
構成も学振の申請書にならって書きました。
そのため、ある程度学振の書き方とも関連する部分があります。
特に背景といったイントロダクションの部分です。
学振の書き方については以下の記事に書いております。


研究概要書のA4 2枚は、多いようで少ないというのが個人的な印象です。
研究概要書は書こうと思えばいくらでも書けると思うので、
どれだけコンパクトに、わかりやすく伝えられるかが大事です。

2.研究概要書で伝えるべきこと

研究概要書で伝えるべきことは何でしょうか。

「私の研究は世界トップレベル。どれだけ凄いかを伝えよう」
「私の研究のレベルはそこまででもない。他の人はもっとすごい研究をしてるんだろうな」

研究テーマそのもののレベルを考えてはいないでしょうか。
正直、そこはあまり関係ないと思います。
資金潤沢な研究室がレベルの高い研究ができるのは当たり前です。
教授から与えられたテーマを研究しているのであれば、
良いテーマかどうかはガチャガチャのようなものです。

研究のすごさを伝えるのではなく、何を伝えるのか?それは

私はこのようにして研究のステップを考えてきました

ということです。つまり、思考過程を伝えるのです。

Aという実験を行い、Bという結果が得られました。そこでCの実験を行いました。

ではなく、

仮説に基づくと~~という現象に変化が見られると考えられる。
そこで、~~の変化を計測するAという実験を行った。
その結果、Bという結果が得られた。
このことから、~~に変化がみられることがわかった。
次に、Cという仮説が考えられたため、それを証明するためにDという実験を行った。

という感じです。

何を行ったのか、ではなく、なぜそれを行ったのか、が重要なのです。
研究にはいくつもの方向性が考えられます。
数ある方向性のうち、なぜその実験を選んだのか?
そこにあなたなりの思考過程があるはずです。

企業の人は実験結果そのものよりも、どのように考えたのかを重視していると思います。
そして、どのように考えたかの正解例はないため、どれだけ論理的に考えられているのかというのが重要です。

3.背景とテーマ着想の経緯

ここは研究概要書のイントロダクションのような部分です。
みなさんも本を読んだことがあればわかると思いますが、
最初がつまらなくてわかりにくかったら、
読む気が失せますよね。

イントロダクションで重要なポイントは2つ。
1. 読者を引き込む内容を心がける
2. 研究のゴールを明示する

まず、如何にイントロダクションで読者を
引き込めるかどうかが大事です。
かといって壮大なテーマ設定だったり、奇想天外な仮説といった、
見るからにおもしろいと思わせるテーマだとは限りません。

そこで重要なのが「どのように面白そうに見せるか?」です。
ここは書き方次第で魅せることができます。

例えば、Aという遺伝子が乳がん細胞で過剰に発現している。
そこでAという遺伝子の機能解析を行っているという
研究だったとしましょう。

普通の書き方であれば、

「乳がん細胞において遺伝子Aが過剰に発現することを遺伝子発現解析より見出した。しかし、遺伝子Aの機能は今まで不明であった。そこで本研究では、遺伝子Aの機能解析を行うことで、遺伝子Aががん細胞の悪性化に関わるメカニズムを解明し、治療標的としての可能性を追求することを目的とする」

といった感じになるでしょう。
これでは遺伝子Aに着目した理由が全くもって魅力的ではありません。
そこで、この文章をもっと壮大なものにしてみましょう。

「乳がんは未だ多くの患者が亡くなる難治性の疾患であり、有効な治療標的の探索が急務である。乳がんの治療標的と探索するために、遺伝子発現データを用いて乳がん細胞で過剰に発現する遺伝子Aを見出した。遺伝子Aは、既知の乳がん関連遺伝子と同程度以上に悪性度と相関することがわかり、その重要性が強く示唆される。しかし、遺伝子Aの機能に関する報告は皆無であり、遺伝子Aの機能を解析し、治療標的としての可能性を追求することは、乳がん治療の大きなブレイクスルーとなりうる。また、遺伝子Aは乳がん以外のがん種においても過剰に発現していることが見出され、本研究は乳がんのみならず、
がん研究そのものに重要な知見をもたらすと考えられる。」

どうでしょうか。
遺伝子Aに着目する理由が壮大にみえたのではないでしょうか。
なぜ遺伝子Aなのか? なぜ遺伝子Bではダメなのか? 
そこを深く考えてみると、イントロダクションも
壮大で引き込まれるようなものになるかもしれません。

また、イントロダクションでは読者を引き込む内容であるというポイント以外に、研究のゴールを明示するのももう一つ重要なポイントです。
何のために何を明らかにするのかを、ここで述べましょう。
さらに、そのゴールを達成するために、どのような実験を考えたのかも
実験①や実験②として明示すると、研究の全体像が把握しやすいです。
読み手に研究の全体像を理解してもらったところで、実際の方法や結果に入っていきましょう。

以上をまとめた流れを書くと、
研究の背景
着想の経緯(研究課題とその課題が導かれた経緯)
課題(ゴール)とそれを達成するために明らかにするべきこと

という順序で書くと良いでしょう。

4.方法と結果

正直、実験データはたくさんあると思いますが、載せるデータは3つくらいでいいです。そもそもそんなにたくさんのデータは載せられません。
これらの実験は、イントロダクションで明示した「明らかにするべきこと」に対応させて書くとわかりやすいです。
例えば、イントロダクションで明らかにすること①や②とわけて書き、
ここではその①や②に対しての実験方法と結果を書いていきます。

まず方法と結果を書く上で重要なことは、それぞれの実験の順序の論理展開に矛盾のないストーリーを作り上げることです。

ストーリーには始まりと終わりがあります。
研究の途中段階だったとしても、その時点でストーリーを作ってみましょう。

そこで、どんなデータを載せればいいのか?

私がおすすめするのはサンドイッチ法(今自分でつけました)です。

1つ目に、着目したい因子や現象を見出した研究のはじまりとなる実験。
3つ目に、研究のゴール(またはストーリーの終わり)となるような実験。
2つ目に、1つ目の3つ目をつなげるような実験。

つまり、スタートとゴールとなる実験を最初と最後に持ってきて、
その間を論理展開に矛盾がないように埋めるということです。

論文や研究にはそれぞれが思い描くストーリーがあります。
そのストーリーの決定打となるような実験をキラーエクスペリメントといいます。
皆様の研究のキラーエクスペリメントはなんでしょうか?
そのキラーエクスペリメントを最後に持ってくる事で、
研究概要書の中で一つのストーリーができあがるのです。

面接を経て思ったのですが、「ゴールを意識する姿勢」というのが
重要視されているように感じました。
皆様も研究概要書に盛り込む実験の中で、ゴールを考えて、
そのゴールにむけてどのように実験をしたのか、
そこを考えてみてください。

以上は方法と結果のおおまかな流れですが、細かいところで重要なポイントを以下に述べます。

まず、それぞれの実験項目ですが、最初に小目的を書くとわかりやすいです。
例えば「ここでは〜〜〜を明らかにする。」という文章を出だしにもってきます。そして、その小目的を達成するために行った実験と結果を書きます。最後に、その結果から導き出されることを述べます。この時、導きだされることは、最初に述べた小目的に対して、答えとなっているのかどうかを意識しましょう。

また、載せる結果の図ですが、見やすさを重視してください。
文字の大きさはもちろんのこと、例えば図の上に「何をやったか」がすぐに
わかるような見出しを入れたり、図の下に結果を簡潔に書いたりするのも良いです。グラフの縦軸や横軸も論文の図のようなラベルにするのではなく、例えば「遺伝子Xの発現量」といったわかりやすい言葉に置き換えてあげるのも良いです。さらに、着目して欲しい部分を赤で囲んだり、視覚的にもわかりやすくするといいです。

5.結論、今後の展望、本研究の意義

ここではまず研究の総括を簡潔に書きましょう。
イントロダクションで明示した研究のゴールを実験結果を踏まえて述べます。重要なことは、最初に掲げたゴールに対して、何らかの答えを与えられているかどうかを意識することです。
そして、今後の展望では今回の研究の限界点を踏まえて、今後やらなければならない実験などを述べましょう。

本研究の意義では、先行研究との差別化や、研究業界に与えるインパクトなど
自分の研究の何が新規なのか、どこに魅力があるのか、改めてここで強調しておきましょう。ここに関してはできるだけカッコよく、凄そうに、多少大袈裟でもいいので、研究をアピールしましょう。

6.まとめ


以上が、私の思う"通る"研究概要書の書き方です。
何度も言いますが、研究概要書の中で自分なりのストーリーを描きましょう。
そしてそのストーリーをできるだけ壮大に、そして論理展開に矛盾がないように、書くことができれば、きっと良い研究概要書に仕上がるはずです。

結果を伝えるのではなく、思考のストーリーを伝える。

どう考えて、この研究課題に取り組んだのか?
どう考えたから、この実験をしたのか?
何を目的にして、この実験をしたのか?
何がこの研究の限界で、次なる課題なのか?

研究の凄さではなく、みなさんの思考力の凄さを伝えましょう。

また私のノウハウを元に、研究概要書の添削を以下のリンクで承っております。

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