149 ちまたの「病院ランキング」信用度は?

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ちまたの「病院ランキング」信用度は? 専門家に聞いてみた



 病気になったら、どの病院にかかればいいのか……。
大病を患ったとしたらなおさら考えることだと思います。
そうした場合に参考にする一つの手段が、インターネットや雑誌で掲載されている「○○に強い病院ランキング」でしょう。
病院の“実力”が可視化されるため、医療業界の実情に疎い私たち一般人には分かりやすく、とても参考になりますが、何を根拠に数値化されているのか判然としません。
果たして、このような記事はどこまで信頼できるのでしょうか。
医療ジャーナリストの森まどかさんに聞きました。
まずは「患者数」「手術件数」などを見よ



Q. 私たちは「病院ランキング」の記事を、全面的に信頼してもよいのでしょうか。
森さん「『病院ランキング』の数値を妄信するのはよくありません。
病院にかかるとき、その病院に求めることは人それぞれですし、病気によっても異なるためです。
根拠となる数値が自分にとってどういう意味を持つか考えることが重要です。また、ランキングには、医療機関が自主的に回答するアンケートを基にしたものや個人の主観に基づくものもあり注意が必要です。

公表されている患者数、手術件数、入院日数(平均在院日数)などは厚生労働省のデータを基にした数値なので、診療の“実績”として信頼できると考えます」




Q.雑誌やネット媒体の多くは広告を収入源にしています。ランキングを決めるとき、当該病院の広告費が多いか少ないかも、多少なりとも関係しているのでしょうか。
森さん「雑誌やネット媒体が、ふだんの広告取り引きの多い少ないによってランキング順位を入れ替えることは行いにくいと思います。
ただし、病院の“実力”をランクキングで表す本や特集の中に、広告費を払って病院を紹介するページが混在しているのは事実です。
これらは、ページの隅に小さく『PR』『広告』と書かれていることが多いです。
記事のように見えても広告であり、良いことしか書かれていなかったり、オーバーな表現で書かれたりするケースもあるので注意が必要です」




Q.ランキング記事には、ベッドの数や手術件数などその病院の“実力”を示す数字が羅列されています。これらの数字は、どのように見て解釈すればよいですか。
森さん「ベッドの数は病院の規模をそのまま示しており、患者数や手術件数は、同じ規模の病院と比較しても同程度で、ランキングに掲載されるくらいの症例を治療している病院であれば、それは実績として評価できます。
ただし、医師の数でも差が出るため、数が多ければ多いほど実力が上というわけではありません。
希少がんや特殊な治療など症例が少ないものは、治療数が多い病院が安心です。
ただし、医師の異動によって数字が大きく変わるケースもあるので、直近の数字を参考にしましょう。
入院日数については、同じ治療であれば、短い方が入院中の管理から退院後の体制作りまでトータルでの医療の質が高いと考えてよいでしょう。
ただし、入院患者の平均年齢や地域によって多少の差は出ます」




Q.人間は数字で示されると説得力を感じるため、こうしたランキングが読まれるのだと思います。数字以外で、病院選びの基準にすべきものがあれば教えてください。
森さん「分かりやすさという点で数字には説得力がありますが、病院選択の基準は患者さん一人一人の状況によって変わるので、数値だけにとらわれないようにしましょう。
最近は、多くの病院のホームページやパンフレットに医師のプロフィルが掲載されています。
『○○専門医』と書かれていることは一定の信頼の目安になります。
専門医も領域によって細かく分かれていて、どの診療科のどんな治療が得意な医師かということはこの情報から読み取れます。
例えば、がんの場合、『がん診療連携拠点病院』など拠点病院に指定されている病院は治療症例も多く、専門医や専門(認定)看護師などのスタッフ、相談支援体制などが整備されています。




他の病気についても、専門医、専門(認定)看護師、リハビリテーション専門職(理学療法士、作業療法士、言語聴覚士)、退院の調整をする医療ソーシャルワーカーなどの体制がしっかりしていることは、医療サービスの質をはかる一つの目安になります。
病院の中には、一つの診療科に特化した専門病院と、多くの診療科からなる大学病院や、いわゆる総合病院がありますが、治療する病気の他に持病を持っている場合などは、連携して治療してもらえる後者の方が安心かもしれません。



こうした病院選びの前提として、大学病院などの特定機能病院や200床以上の規模の病院に初めてかかる場合には基本的にかかりつけ医からの紹介状が必要で、紹介状がない受診の場合は選定療養費という特別の料金(初診時7,000円)の負担を求められることも知っておきましょう。
判断基準としてもう一つ、治療や経過観察が長くなりそうな病気については、アクセスの良さも大切な要件だということをお伝えしておきます。
体調がすぐれない中、泊りがけや電車を乗り継いでの遠距離移動は大きな負担になります。
患者さんを支える家族にとっても同じです」




Q.いざ病気になってからでは、どの病院や医師が自分にとって最適か見分けることは難しいと思います。
どのようにすれば、事前に備えられるでしょうか。
森さん「まずは、自分が暮らす地域にどんな病院があるか、ホームページなどを見てみましょう。
地域の中心的な病院では、市民公開のセミナーや見学会を開催しているところも少なくありません。
それぞれの病院が得意とする治療や特長的な設備を知ることができる良い機会なので、普段からそうした催しに参加するとよいと思います」






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