No,85 食事をしたばかりなのに「何か食べたい」…食後に襲ってくる“食欲”の正体とは? 内科医に聞いてみた

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 食後、ほとんど時間がたっていないにもかかわらず、空腹感を覚えたり、「何か食べたい」と思ったりしてしまう――。


このような経験がある人は案外多いのではないでしょうか。
量的にしっかり食べた場合も、食後に軽く何かを食べたくなる現象に心当たりがある人は多いようで、「太る気しかしない…」「毎日、自分の食欲と戦っています」「食後なのに何となく、お菓子が食べたくなるのを直したい」など、さまざまな声が上がっています。


 食後に襲ってくる食欲の“正体”について、内科医の市原由美江さんに聞きました。
糖質を摂取しないと空腹感が持続する?



Q.食事をした後、あまり時間がたっていないにもかかわらず、空腹を感じたり、「軽く何か食べたい」と思ったりすることは実際に起こり得るのでしょうか。

市原さん「起こり得ます。通常、食べ物が消化・吸収されて空腹になると『グレリン』というホルモンが胃から分泌され、脳が刺激されます。
これにより、食欲が刺激されて空腹感を覚えます。いわば“食欲増進ホルモン”です。
食べ物を摂取することでグレリンの分泌量が減ることが分かっていますが、分泌をより低下させるのはブドウ糖です。



つまり、ダイエットなどの理由で糖質制限をした場合、グレリンの分泌量が減りにくく、食欲が刺激されるので空腹感が持続するというわけです。
一方、グレリンと反対の作用を持つホルモンは『レプチン』といい、脂肪細胞から分泌されて脳に作用します。



これは、食欲を抑える働きをする“食欲抑制ホルモン”です。
レプチンは、食事を開始して約20分経過すると分泌されますが、血液中の糖質が増えることで分泌されるホルモン『インスリン』の刺激によって分泌量が増えます。
つまり、インスリンを分泌させる程度の糖質を摂取しなければ、十分な量のレプチンが分泌されないということです。
よって、糖質を摂取しないと空腹感が持続する可能性が高いといえます」



Q.食後に空腹を感じる要因は他にもあるのですか。

市原さん「先述のホルモン以外では、血糖値が関係していることがあります。糖質を過剰に摂取すると、血糖値の上昇を抑えるためにインスリンが大量に分泌されます。
その結果、血糖値が急激に低下し、その変動を体が『低血糖だ』と勘違いして、低血糖症状の一つである空腹感を引き起こすことがあります。
ちなみに、実際に低血糖になっている場合も同様に空腹感が出てきます」



Q.食後に「何か食べたい」と感じやすい人/感じにくい人の特徴とは。

市原さん「日常的に高脂肪食を摂取する人や、肥満の人は、食事によるグレリンの分泌低下が鈍くなり、食欲を抑えにくくなる傾向にあります。
また、睡眠不足の人は食欲抑制ホルモンであるレプチンの分泌が減り、食欲増進ホルモンであるグレリンの分泌が増えることが分かっています。
なお、女性の場合、生理前の高温期に黄体ホルモン(プロゲステロン)が分泌されますが、このホルモンには食欲増進作用があります」



Q.食後に「何か食べたい」と感じたとき、実際に何かを食べてもよいのですか。

市原さん「食事の量が明らかに十分でバランスもよかった場合、可能であれば、食べるのを控えた方がよいです。
食欲に関連するホルモンとは無関係に、単純に食後の補食が癖付いてしまっている場合もあるからです。
どうしても食べたいのであれば、無糖のヨーグルトや少量のナッツなど、カロリーが少なめのものを選びましょう。


また、サラダなどの野菜でおなかがいっぱいになったにもかかわらず、まだ何か食べたい衝動に駆られた経験はありませんか? これは糖質を摂取していないことが原因である可能性が高いので、糖質を少し取る方が食欲を抑えられることもあります。小さなおにぎりやパンなど工夫してみてください」



Q.食後に何かを食べたくなる欲求を抑える方法や、健康的に満腹感を得るためのポイントはあるのでしょうか。

市原さん「単純に食後の補食が癖付いている人も多いと思いますが、この場合は我慢する他ありません。
重要なのはやはり、糖質を含むバランスのよい食事です。満腹感を長時間維持させたいのであれば、消化の遅い食物繊維を多く取ることもお勧めします」






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