会社、辞めます。

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妙な緊張感が漂う会議室で、役員は私にこう告げた。

「来期から、子会社へ出向してくれ。」

これまで2年に1回のペースで異動して来た。その度に想定した範疇での異動であったが、今回は全くノーガードで、正直、驚いた!動揺していないようにジッと役員の目を見据えたままではあったが、だぶん、顔が引きつっていたんだと思う。



" 左遷 "



そんな言葉が頭をよぎる。地方の営業部門から全社統括部門へ抜擢され、山ほど失敗もして来たけど、ようやく異動してきた本社でのプレゼンスも高まって来たところで、である。

「はい。...わかりました。」

そう、言葉を出すのが精一杯だった。...ラインから外された。そう感じた。もちろん、出向先から返り咲いて大きなポジションを任されるケースもある。ただそれは稀なケースなので、気分は大いに沈み込んだ。どこかで会社の成長を願い、全力で走って来たからこそ、結構、落ち込んだ。ここで頭打ちか...。出世街道を突き進むエリートサラリーマンは別として、こんな気持ちを感じるサラリーマンって結構いるんだろうな。

プツッと、何かの糸が切れたような気がする。


かくして、あたたかい送迎を受け、子会社へ旅立つことに。その行き先は沖縄。

かなり落ち込みもしたけど、それを周りの反応が救ってくれた。取引先や関係者に異動と報告する度に、必ずと言っていいほど、「なんて羨ましい!!」という反応。これが何回も続いてくると、あら?意外と、いいのか?と思って来たりして。

楽しもうかな。せっかくなんで。

赴任してからというもの、沖縄の美しい自然、おおらかで優しい人たち、音楽、食、歴史、文化と、私の荒んだココロは癒されることになる。この期間には、今までにない多くのチャレンジをしてみた。何しろ今までとは比べ物にならないくらい自分の自由な時間がある。英会話、ブログ、三線。楽しく、とにかく行動した。また、多くの人との出会いがあり、仲間と呼べる友達ができ、本当の自分に気が付くというとても大切な期間となった。仕事は順調に進み、社員からも信頼を得るようになって行った。

そうこうしているうちに、あくせくと、家族や自分の時間を削ってまで、身を粉にして働いていた自分を客観視できるようになっていた。

まさに、社畜じゃんか!

適度な距離感が奏功したのか、家族とも良好な関係になって行った。もはや"理不尽さん"はどこか遠いところへ行ってしまい、今は感謝ばかりが我が身を覆うのだ。



あー、ココロから、ありがとう!!
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子会社出向のmissionは、自立により親会社からの出向サポートを終わらせることだった。連結決算、規程類・内部統制の整備、上場企業のグループ会社としての文化醸成など、みなさんの頑張りで、ようやく自立することができ、それら全てを成し遂げたのだ(涙)。みなさん、本当によくがんばってくれました。
ありがとう。
ありがとう。

実は、私は沖縄生まれ。幼少期、社会人生活とほとんど首都圏で過ごして来たけど、ココロの奥底でいつかは沖縄のために何かしたいと思っていたりしていた。ひょんなことから沖縄の子会社への出向を命じられ、何十年振りに沖縄に帰って来たのでした。いき込んで来たものの、逆に教えてもらうことの方がはるかに多く、忘れていたものを思い出させてくれた。明るく、ユーモアたっぷりでありながら知的で、思慮深い。そして"今"を大切に、楽しく、伸び伸びと生活している。毎日毎日充実した日々を過ごし、2年かけmission達成につき、本社へ返り咲くことになった。



久しぶりの本社。mission達成で胸を張って凱旋。
と言いたいところだが、異動先が微妙であった。社長直轄部署というところまでは良かったが、複雑化した全社システムのリプレイスであり、またもや未経験分野への異動。

全力疾走が求めれれる大きな仕事であるため、正直、嫌だな、と思った。きっと身を粉にして走ればできるかもしれない。やりたい仕事か?というと決してそうではなかった。

加えて、異動後数ヶ月様子を見て悟った。このセクションには愛が無い。チームに活力が無く、上辺の付き合いに終始している。社長や上長を気にし過ぎて、忖度してばかりで、伸び伸びとやるべき仕事をしていない。改善を進言しても先送りするばかりで、何とも居心地が悪い。今回は立て直す気にもならない。

ここはオレの居る場所じゃない!!

これまでなら我慢して、自分を押し殺して、サラリーマンとして受け入れ、おとなしく業務に専念するんだろうな。でも、今は違う。自分の世界観を大切にすると決めたのだ。少しゆるくてもいい、自分が"今"何を感じ、どうしたいのか?ココロがスーッと向かう方へ行きたいし、そう生きたい!

そして、新卒入社以来何十年も働いた上場企業を辞めることを決意した。



新しい上長に時間をいただき、またしても名も無い絵画が飾られている無機質な会議室でこう切り出した。

「この度、一身上の都合により、退職させていただきたいと思います。」



つづく
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