秘密の行動とプライド

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娘の気持ちを聞き、私は次の日から行動を起こした。
朝起きると、すぐには体が動かない しばらく深呼吸しながら気持ちを整える
起き上がると、頭の中に砂が入ったように「ザザーッ」と音がする。
重い体を無理に動かし、ふらつきながら家事をする。
「鬱」と診断されても、母として妻としての役割を果たしたかった。
今までのように動けなくても、時間がかかっても今まで通り家事をした。
自分の心・体と闘いながら、娘を避難させる準備を始めた。
実家には、痴呆症が悪化して要介護の父と母が住んでいた。
娘を預けるのは、母にとって負担になるだろうと思っていた。
事の成り行きを話し、母にお願いした。
母は、「よく頑張ったね。孫が来れば、家も明るくなる。介護の現場を見るのは辛いかもしれないけど、良かったらおいで。」そう言ってくれた。
娘にも、おじいちゃんの状態、おばあちゃんの気持ちを話した
それでもあの子の決意は変わらない。
でも・・これがあの人にバレたら・・そう思うと恐怖心が襲った。
引っ越しのお金は、母からもらったお小遣いを貯めていたので何とかなりそう
でも、当面の生活費は?新幹線代は?色々考えていると頭が割れそうだった

主治医に、娘を避難させることを話した。
「それがいい。本当は娘さんにもここにきて治療を受けてほしいけど
話を聞く限り、娘さんなら新しい地でやっていけそうだ。でも、異変に気づいたら この病院にためらわず受診するように伝えてください。」
そう言って手紙を渡された。そして私自身もあの人から離れた方がいいと言われた。「鬱」は薬だけでは治らない。周りの理解や原因を取り除かないと・・
「鬱」の原因は夫であること。夫が理解し味方にならないと酷くなるばかりだと・・
あの人から逃げる?それは出来なかった。
次女は、あの状況の中でも必死に勉強し都内の進学校に受かったばかりだ。
長男は寮生活で都内に住んでいるが、まだまだ私の手が必要。
次男は小学校5年生。私は逃げることが出来ない。
あの子達を放ってはいけない。私が乗り越えればいい事だ。

また新しい薬が処方された。手のしびれや吐き気が酷く
それでも、飲むと少しは動ける。ご飯を作っては少し休み
掃除をしては少し横になるの繰り返し。
でも、外にだけは出られなかった。こんな姿を誰にも見せたくなかった
笑いたくても笑えない。今迄みたいに笑顔で挨拶なんてできない。

あの人は、帰宅すると怯えながら話す私に
「むすっとしてんじゃねーよ!こっちは仕事で疲れてるんだ。
気分悪い。出かけてくる。」そう言って出ていく。
むすっとしてないよ・・笑えないんだ・・そう思っても届かない。
相変わらず、夜に作り置きしていた朝ご飯には手を付けないあの人。
1週間分の食材はあの人が日曜日にまとめ買いをしてくる。
でも、賞味期限ぎりぎりの半額シールの貼ったものや賞味期限が切れているものばかり買ってくる。それを下茹でしたり、加工して冷凍する。
せめて、子供には美味しい食事と温かいご飯を食べさせたかった。

娘は、引っ越しの準備はおろか家に居ることが少なくなっていった。
夜の繁華街に出かけ、朝帰りの毎日。
あの人もまた、あからさまに連絡なしの朝帰り。
女のにおいをさせながらベッドに入り、私を抱こうとする。
全力で抵抗する私、ゴミを見るような目で背中を向けるあの人。

私はあの人のいない間に、娘の荷物を少しずつまとめ始めた。
続きはまた明日・・
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