秘密の場所から 大人の事情

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コラム
転校は小学2年生の秋だった。
転校した日は、物珍しさから「ちやほや」されたが
よくあるいじめはすぐに始まった。
いじめ集団のリーダーは、父親が大手建築会社を経営するボンボン
端正な顔立ちに、まとわりつく女子達。
ターゲットは一人ではない。
クラスの中のおとなしい子はターゲットにされている。
皮膚炎で像のような肌になってしまった「ゾウコ」
頑張って勉強しても成績が上がらない「パー子」
弱視で牛乳瓶の底メガネをかけている「瓶底男:びんぞこお」
みんなあだ名を付けられ、ばい菌扱い。
それを見て見ぬふりをする、担任の女の先生。
私は自分にされることは全然平気だった。
ビーカーに入れられた、男の子の尿に鉛筆の削ったカスや消しゴムカス
チョークの粉・土などが混ぜられた液体を頭からかけられても平気だった。
みんなは一斉に「きったねー-!」「ばい菌移るぞ!!」と叫んでいたが
私は何事もなかったように体操着に着替え、手洗い場で頭をさっと洗い
雑巾で頭を拭いた。休み時間の短時間に淡々とこなす私を見てみんなは黙った

授業が始まり、像の絵を描いた紙がクラスを回っている。
像の絵にはそれぞれ一言。「ばい菌」「風呂入れ」「近寄るな」
私の所には回ってこなかった。
そして、皮膚炎の彼女の所にその紙は渡された。
それを見た彼女はうつむき、目に涙をためている。
くすくす笑うクラスメイト。
担任がおもむろに言い出した。
「授業中にお絵描きして楽しいですか?勉強する気が無いなら廊下に立ってなさい!!」 私はてっきりクラスメイトに言ったのだと思ったが
そうではなかった・・・いじめられている子に担任はそう言い放ったのだ。
私の中の何かが熱くなってきた、そうアドレナリンだ。
思わず、机に筆箱を思いっきり叩きつけた。
「ツキホさん、何ですか!!あなたも廊下に立ってなさい!!」
私は、彼女の手を取り廊下に出た。
すると、リーダーのいじめっこも廊下に出てきた。
担任はすぐさま廊下に出て、「あなたは立たなくていいのよ?」
そう言ったが、いじめっ子は「いや・・俺が悪いんで。」そう言った
担任はどうしたものかと思案し、3人とも教室に入るようにと促したが
私はそのまま廊下で立っていた。アドレナリンが収まっていなかったからだ

給食の時間、私は屋上で日向ぼっこをしていた。
1人のはずだったのに、そこには用務員のおじさんが掃除をしていた。
しばらくして、おじさんは私に話しかけてきた。
「ツキホちゃんだったかね?」
あーあ、用務員のおじさんにまで名前が知られてるよ・・・私は思った。
「君の眼は他の子とは違うね。そのまま大人になって欲しいものだ。」
「わしもそろそろ、革命を起こす時が来たようだね。」
何言ってるの、このおっさん・・・後に知ったことだが、用務員のおじさん
ではなくて、校長先生だった。。。

教室に戻ると、リーダーを好きなメガネをかけた女子が
「ゾウコ」と呼ばれている彼女に、いちゃもんを付けているところだった
しばらく見ていたが、彼女はおもむろに手をあげ「ゾウコ」に平手打ちをしようとしていた。私はとっさに彼女の前に立ち、思いっきり平手打ちを食らった
唖然とする周りの子たち、私は平手打ちをした子を見つめた。
「なによ・・この子がいけないんだから。この子がいるから・・・」
いきなり平手打ちをしたこが泣き出した。
そこに担任がやってきて、「ツキホさん、また何をしたの!!」
この人に何を言っても通じない 直感でそう思った私は黙っていた。
担任は泣いているいじめっ子を別室に呼び、話を聞いているようだった
私は「ゾウコ」と呼ばれている子の方を向き
硬くこわばった頬に手を当てた。
涙が流れていた。彼女は小さい声で言った。
「ダメだよ。ばい菌が移るよ。みんなにいじめられるよ・・・」
そっと目を閉じ、彼女に精一杯の言葉を伝えた。
音として発したのではなく、心で伝えたのだ。
(あなたは誰よりも綺麗な心を持っている。痛みを知る人間は人に優しくできるから、大丈夫安心して。)
小学校2年生の私が、自分でもこの言葉が出てくるとは思わなかった。
きっと、父の書籍の読みすぎだろう・・

下校時間、リーダーの男の子に声をかけられた。
「月穂、今日俺と遊ばないか?」「いいよ。」そう言っていったん家に帰った
私の頭の中には、父と母がいた。学校で問題ばかり起こしてごめんなさい。
それが正直な気持ちだった・・・・
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