会社の同僚の田中さん(仮名)には、愛する一人娘がいる。
まだ小学生なのだけど動物が大好きなのだそうだ。
彼女を喜ばせようと「つくばわんわんランド」に連れて行った。
彼女はそこで1匹のブラックレトリバー犬と触れ合い、遊びすっかり仲良くなったそうだ。
それ以来、「お父さん、私ブラックレトリバーを飼いたい」とねだり
お父さんを困らせている。
お父さんとしては 愛する娘を喜ばせてあげたい。
それに一人っ子で寂しいだろ。ペットがいるのも悪くない。
ただレトリバーかぁ〜
小学生の娘にその世話を全てさせるのは難しいだろうな。と
田中さんは考える。
妻は動物には関心がないし。
となると毎日の散歩くらいは自分が行くしかないのではないか?
しかし田中さんの仕事は一日中立ちっぱなしのなかなかの激務である。
家に帰ってから 大型犬に運動させるのはきつい。
せめて小型犬ならなんとかなると と思い
「シーズじゃダメかい?」と聞いてみる。しかし娘は
「いいえお父さん。 私、ブラックレトリバーが飼いたいの」と譲らないのだそうだ。
田中さんは山好きだ。副業で山のガイドを務めることもある。
田中さんにとって山は素晴らしく、青春であり、人生でもある。
当然、愛する娘とも、山の美しさ、その感動を分かち合いたいと願う。
だから 娘を山に誘う。しかし娘は
「私、山が楽しいとは思わないわ、山って坂道と木しか無いじゃない。
どうしてそれがいいと思うの?
それよりデズニーランドに行きたいわ。そこには夢があるのよ」
とにべもない。
そして母親や友達と夢のある場所へ遊びに行ってしまう。
父と娘の間には山より高い壁があるのね。