過食症の方に食事療法的なものは効果があるのか考えてみました。

記事
コラム
身体と心は表裏一体です。

風邪をひいて身体がダルいと元気がでないし
ストレスが原因で体調を崩したり
寝不足で疲れがとれないとやる気が出ないなど

身体と心はつながっているとは、
日常でよく感じることなので、
きっと誰もが思うことだと思います。


元気な身体をつくるためには、栄養バランスの良い食事が必要です。


アメリカやヨーロッパの研究で、
ジャンクフードが若者の犯罪率を上げるといった研究報告があるようですし、

刑務所や少年院で出される食事が、
管理栄養士や栄養士がきちんと栄養計算した、
バランスの良い食事であるのも、

身体だけではなく心も元気にと
「心身ともに健やかである状態に近づける」
という食事・栄養目標があるのだと思っています。


では、
過食症の人に、
きちんと栄養計算したバランスの良い食事を食べてもらったら
心身ともに健やかである状態に導けるのか
といったら、

それは難しいと思っています。


過食症の人の表立った問題は
太ることへの恐怖からくる
食コントロールの欠如です。


食べること全般においてコントロール調整がうまくいかなくなっているので、

基本的に
適量が分からなくなっています。
(どこまで食べたらいいのか分からない
どこで食べやめたらいいのか分からない)


分からなくなって自暴自棄になり食べ過ぎたり
食べ過ぎては太ることが怖くて、半分自暴自棄になって吐いたり
コントロールが失われた状態になり苦しんでいます。


考えてみます。

年齢、性別、身長、活動指数などから必要栄養量を計算して
分からなくなってしまった
「個人に適したバランスの良い食事」
をコントロールしてあげたとしましょう。


まず、
第一に大きな問題

過食症の彼女、彼らの適切な量は
わたし達、管理栄養士が計算する適切な量と、かけ離れています。

これは、適正体重を測るBMI値も同様で、
いわゆる、健康を度外視した美容体重が指針になるように、

彼女、彼らの適切だと捉えるエネルギー量は
カロリーメイト3箱分に値する
1日の最低必要エネルギー量とされる1200kcal、
もしくはそれ以下だったりします。

成人女性、成人男性、
ましてやじっとしているだけでも代謝が盛んに行われている成長期である10代では
1日の必要エネルギー量はこんなものではないし、
エネルギー以外の必要な栄養素、タンパク質、脂質、ビタミン・ミネラル類をきちんと摂取することも非常に大切です。


しかし、
彼女、彼らの基準は厳しいので、
年齢、性別、身長、活動指数などから計算された
「個人に適したバランスの良い食事」を提供したとしても、

食べられないか
食べたそばから、太ることが恐怖で吐くか
1日くらい継続して食べることができても、
太ることが恐怖となり、食べ続けられない

そんなことになると思っています。


第二に、

刑務所や施設に入ったり、入院でもしない限り
閉鎖的な空間をつくることができないので、
食べ物のコントロールは難しい現実があります。

生きるためには食べなければいけないのだから、
アルコール依存症のように、
完全に断つことができません。

そして今は、食べ物を望めば、いつでも手にすることができる有り難い環境です。

太ることは恐怖でも、
食べたい強い欲求があるので、
自分の欲求から切り離された現実をつくるのは、なかなか難しいと思います。


第三に、

根本的な原因が解決していないので、
食事コントロールが整った環境では上手くいっていたとしても、
元の環境に戻れば
コントロールが効かなくなる状態に舞い戻る可能性が高いです。

刑務所を出た人が、再び犯罪を起こしてしまうのと同じようなこと。

強制的に何かを抑えて、鎮静化されたように見えても、
抑え込んだ蓋の中身はグツグツと煮えたぎっているようなものです。


身体を栄養バランスで整えても、
結局は、
心がそれに近づかなければ効果は半減してしまいます。

身体と心は表裏一体とはいっても、
身体と心の在り方が大きく乖離しても、
拮抗して、喧嘩して、
たいていはマイナスの方に引っ張られてしまうような気がします。

きっと、身体を整えるだけで、
勝手に心が整うわけではないのです。


心を整えるって、
じゃあどういうことかなと考えると、

壁にぶち当たったり、傷付いて
泣いて、寂しくて、悔しくて、後悔して
そういった「複雑な感情から目をそらさないこと」
そして、「決して歩みを止めないこと」だと思っています。


私は、
「過食症の治療は大人になること」
もしくは、
「大人になる過程が過食症の治療になる」と思っています。

過去のブログでもそう述べています。


身体だけではなく心も元気にと
「心身ともに健やかである状態に近づける」ためには、

適切な食事コントロールも必要だけど、

ド根性で生き抜いていくことも、
やっぱり必要なんだと思っています。

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