この先どうなるか想像できない人や理解できない人と、理解できる人。

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コラム

健康よりも大切にしたいこと

歳を重ねても健康でありたいとは恐らく誰もが願うことです。

健康であるからこそ人生を楽しめる。
生きる上で最も軽視してはいけないのは健康であることです。


そうは言っても、
目の前に悩み事や処理しなければいけない事柄が舞い込んでくると、健康への意識はそっちのけとなり、
身体を労ることよりも悩み事や処理しなければいけない事柄が第一優先となる方もいます。
わかっちゃいるけど目の前のことに追われてしまいます。

それとは別に、
目の前の問題が理解できず自分の身体を労れない方もいます。


私が今月より勤務している薬局の患者様です。

慢性腎不全の独り暮らしの80代の男性で、
以前より腎機能の検査データの値が悪く、かかりつけの薬局である薬剤師さんがいつ死んでしまうのか心配だと非常に気にしていました。

今月の検査データで腎機能の値が透析レベルとなりましたが、来月の検査データを待って透析治療を始めるか判断するとのドクターの説明があったようです。

患者様は以前より透析はしないと仰っているようで、かといって食事療法に消極的なので、薬剤師さんや私の前任の管理栄養士さんが食事について説明しても、年齢的なことや男性で独り暮らしということからもなかなか全てを理解するには難しく、実行するにも難しいようでした。

時々一緒に薬局へ来られるという長女さんが今回来られお話したところ、
長女さんもお父様の病気に対する認識に乏しく、
「そんなにたいへんなんですね」「そういえば時々胸が苦しいとか言ってない?」「でも毎朝パン屋さんのパンを食べていて楽しみなんですよ」
と笑顔でかる~い感じで仰ります。


命の危険がある今の状態を薬剤師さんと共にご説明して、次回の検査までの食事で気を付けることをお話してお二人を見送った後に、
薬剤師の先生は怒ってこう言いました。

「80代の高齢者が食事の管理なんて出来るわけないじゃない!娘がネットで調べればいくらでも情報入るじゃん。食事だってネットで簡単なんだから頼んであげなよ!」

そりゃそうだと思いつつ、
私に言ったわけでもなさそうだけど感情のこもった言葉を受けて私は返しました。


「どうなるか想像できない人っていますから。理解できない人はずっと理解できないんですよね」


薬剤師さんは「なにそれ!?私の周りにはそんな人いないわよ!」と半ギレでした。


私は底辺で底辺なりの努力をしてきたにすぎない管理栄養士なので、薬剤師さんのような学もないし頭の回転もそりゃあ悪いし覚えも悪い。
なので、偏見など悪意ではなく、この先どうなるか想像できない人や理解できない人の気持ちが分かります。


類は友を呼ぶので、恐らく薬剤師さんのような学があり頭の回転が良い方の周りには同じような方が集まるので、その方々は皆、
食事療法についての説明や、今身体がどんな状態にあるのか、だからどうしなきゃいけないのかをスムーズに理解できるのでしょう。
そして、生命に関係すること家族やあらゆる人に迷惑をかけてしまうこととの理解があるから実行できます。

人間は育つ環境が大きく影響するといいますが、これもそういうことなんだなと思いました。


80代の男性患者様と長女様が健康意識の低い環境で育ってきた、ということを覆していくのは本当に根気のいることだと思います。
いやそれを覆すのが管理栄養士の役目なのでしょう。


けれども私はこの先の状態を想像できないなら理解ができないなら、それは何十年と積み重ねてきた思考なので仕方ないと考えているので、80代の男性患者様と長女様にはこうお話しました。

「毎朝パンが食べたいなら食べていい。けれどもパン半分にして、それは絶対守ってね。次の検査まで1ヶ月の我慢だから頑張って下さいね。」


私は食べ物への執着がすごいので卑しいくらい好きな物を食べたい。
糖尿病になったとしたら食事療法がきちんとできるかなんてわかりません。
キーーーー!!ってなってストレスで食べまくってしまうかもしれない。失明しますよと脅されても脚がなくなりますよと脅されても食べてしまうかもしれない。

出来ないものは出来ないんです。
なので、食事療法が出来ない人の気持ちも多分すごく良く分かります。


希望として、
パン半分が1ヶ月続けられたら自分の励みになることもある。
自分の頑張りが検査データに表れれば励みになる。
励みを得た実体験、成功体験は次もやってみようという気持ちになります。

価値観を変化させる行動をご自身で体験して、学んでいくより他ないと思っています。


薬剤師さんは私がパン半分を許可したことを知りません。
「パンが食べたいなんてこの状況であり得ない!」
と怒っていたので、「何ぬるいこと言ってんだこの管理栄養士は!」と確実に言われそうなのでなんとなく怖くて言えなくなったこともありますが・・・。

患者様にとって大切なのはパン1枚食べてしまわず、パン半分を守って頂くことだなと思っています。


歳を重ねればどこかしらに故障が出てきます。何の薬も飲んでいない高齢者は少ないのではないでしょうか。

人生を楽しみたいから食べる
もうこの先何年も生きられないのなら食べたい
食べたいが第一優先になる

高齢になると健康よりも大切にしたいことがでてくるのは当然なのかなと思ったりもしています。

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