いつも見る夢と、夢を叶えてくれたピットロード

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いつも見る夢
 浅い眠りの朝にいつも見る夢。見慣れているようで、しかしいつもと少し違う街並みを歩いている自分。文房具屋の軒先にプラモデルが置かれている。引き寄せられるように入っていくと、見たことも無いメーカーの航空機プラモデル。しかもそれは自分が探し求めていた飛行機のキット。貪るように幾つかを買い込み店を出ると、またすぐ近くに模型屋がある。こんなところに模型店が有っただろうか。子供の頃通った近所の模型屋さんと内装が似ている。そう思いながら入ると、そこには見たことが無いブランドのミニカーが並んでいる。これまた自分が探していた車種ばかりだ。のめりこむように物色する。こんなラッキーなことが続くなんて・・・わずかな懐疑心が生まれる。「これは夢ではなかろうか」疑念は渦を巻くように巨大化し意識が戻り始める。視界が真っ白になり物色していたミニカーの重みが手から消えたかと思うと夢から覚める。「ああまたいつもの夢だったのか」そうして私は現実に戻る。

プラモデルブーム
 物心ついたころから私は模型にしか興味が無かった。幼い頃プラモデルは至る所で売られていた。玩具店や模型店は当然として、文房具屋、駄菓子屋、八百屋の軒先にまでプラモデルが捏ねられていた。トイザらスすら閉店してしまう現代では信じられないかも知れないが、1960年代から1970年代はプラモデルが大ブームとなり街の至る所で売られていた。私が住む小さな街でもあらゆる店がプラモデルを売っていた。そんな少年時代を懐かしく思う気持ちが冒頭の夢を見させるのだと思う。

夢の続き
 夢から目覚めた私は何か満たされていないのだろうか。そんなことは決してない。目覚めた部屋にも隣の部屋にも模型やプラモデルは山積みされている。幼いころ買い逃したミニカーや遊んで破壊してしまったプラモデルもあの手この手で入手し、今では欲しいと思ったものの99%は入手した。夢が覚めても、夢の続きのような現実の中にいるのだ。なんと心豊かなことだろう。

斜め30度上
 プラモデルの山は斜め30度上の角度で見上げる棚に積まれている。幼いころ欲しくても握りしめた百円玉では到底買えなかったプラモデルたちがそこに積まれている。斜め30度上は幼い私が買えないプラモデルを見上げていた角度に他ならない。今私は子供の頃と同じ角度でプラモデルの山を見上げている。あの頃は高額で買えなかったショーケースの中のプラモデルたち。しかし今眼前にあるプラモデルの山は私のものなのだ。なんという満足感だろう。夢が覚めても、夢の中にいるようだ。

模型だけ
 私は何かの競技で金メダルを取りたいとか、会社で偉くなりたいとか、そうした欲望はまったくない。異性交遊の欲望は有るが、それは「腹減った」「眠い」と同じ煩悩なのでここでは同列に語らない。ひとえに模型だけが私の興味の対象なのだ。模型を綺麗に作ってコンテストで優勝したいとか、蒐集品を他人に羨ましく思われたいとか、そうした願望も無い。他人からどう思われるかはどうでも良いのだ。私自身が欲しいと思ったものが、手元にあるかどうかだけが焦点なのだ。

模型は裏切らない
 模型は私を裏切らない。食べ物のように賞味期限は無い。ペットのように死んでしまうことはない。恋人たちのように別れてしまうこともない。大切にしてあげれば模型はいつまでも一緒にいてくれる。食べ物のように賞味期限が切れるという強迫観念が無い。ペットのように餌をやらなくて良い。恋人たちのように美味しい食事を与えプレゼントを渡し御機嫌を取り続けなくて良い。

アンケート葉書
 そんな模型だが発売されていないものは如何ともしがたい。諦めきれない私は模型に封入されているアンケート葉書に発売して欲しいモデルを書く。マイナーな飛行機模型ばかりだ。そんな御意見を模型メーカーが拾ってくれる訳が無い。メーカーは売れてこそ金型回収が出来て次のモデルの開発が出来るのだ。あのバンダイですら一回でも失敗するとシリーズ終了らしく、絶対に失敗できないらしい。ゼロ戦とかトムキャットとか人気モデルならともかく航空オタクしか知らないような機種をリクエストしたところで大手メーカーがまともに相手をしてくれることなど無い。そう思っていた。

ウォーターラインの補完
 しかし川崎のピットロードは要望に応えてくれた。同社にはアンケート葉書を2回出した。一回目は「御社はウォーターラインシリーズの補完に徹しているが、そろそろ主力艦艇に打って出て良いのでは?」という要望だった。それまでピットロードは艦船模型で絶対的なシェアを誇る静岡模型会社4社共同企画のウォーターラインシリーズの補完に徹していた。戦艦大和など出せば売れるアイテムには見向きもしないで、ひたすらウォーターラインシリーズで発売されていない地味なアイテムばかりを出していた。こうしたピットロードの姿勢は好きだったが、反面ピットロードの素晴らしい技術で主力艦艇を作ってみたいという潜在的要望は多いと思っていた。

ピットロード舵を切る
 そのアンケートのしばらくのちにピットロードはウォーターラインシリーズの補完から脱して主力艦の発売に踏み切った。アンケートに答えてくれたのか、たまたま主力艦を出すと言う経営判断の時期に重なっただけかも知れないが、私はピットロードがアンケートの要望を聞いてくれたような気がして本当に嬉しかった。

蕎麦屋でビフテキ
 二回目のアンケート葉書には発売して欲しい飛行機を並べ立てた。ピットロードは艦船模型の会社なので、艦船模型のアクセサリーとなる海軍機は発売されるが、帝国陸軍機や陸軍が主力のドイツ空軍機は望み薄かった。しかし私は日本陸軍機やドイツ空軍機発売をアンケートに希望した。しかもハインケルHE177とか97式重爆とかマイナー機をリクエストした。蕎麦屋でビフテキを注文するくらいの無理な注文だった。

マイナー飛行機に驀進
 しばらくしてそうしたマイナーな飛行機たちがピットロードお得意の1/700で発売され始めた。ハインケルHE177や97式重爆もそのラインナップに含まれていた。まさかのマイナーアイテム連発に私は驚喜した。たまたまピットロードの首脳陣が「マイナーな陸軍機も行ってみよう!」とイケイケの経営判断が出された時期に私のアンケートが重なっただけかも知れないが、私はピットロードが再びアンケートの要望を聞いてくれたような気がして、心の底から嬉しかった。(写真はピットロードの1/700飛行機です。1円玉に乗ったゼロ戦の小ささをご覧ください)

夢を叶えてくれた会社
 私は夢から覚めても夢が実現したような世界に暮らしているが、ピットロードによって夢は再び叶えられた。ピットロードは私が望む模型を発売してくれたのだ。金型費用を投資回収出来るかわからないのに、一顧客の要望に製品で答えてくれたのだ。そうしてピットロードは私にとって顧客満足度一位の会社になった。蕎麦屋でビフテキを注文するような無理を二度も聞いてくれたのだ。私にとってピットロードはソニーやアップルをも凌駕するエクセレントカンパニーなのだ。

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