中小企業経営のための情報発信ブログ83:ブルシット・ジョブ(クソどうでもいい仕事)

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今日もブログをご覧いただきありがとうございます。
今日は「ブルシット・ジョブ(クソどうでもいい仕事)」について書きます。
デビッド・グレーバー著「ブル̪̪シット・ジョブ  クソどうでもいい仕事の理論」(岩波書店)という本が出版されています。
1.ブルシット・ジョブとは
 「ブルシット・ジョブ」というのは「あまりにも意味を欠いたものであるために、もしくは有害ですらあるために、その仕事に当たる当人でさえ、そんな仕事は存在しない方がマシだと考えてしまうような仕事」のことです。簡単に言えば「こんな仕事なんか意味がないと、それをやっている人間も多かれ少なかれ感じているが、それを言ってはいけないことになっている仕事」ということです。
 この「ブルシット・ジョブ」は、労働条件の悪いキツい仕事(シット・ジョブ)とは違います。シット・ジョブは割に合わない仕事かもしれませんが、無意味でなく社会の役に立っています。「ブルシット・ジョブ」は地位が高く、他者からは敬意を持たれ高収入が得られているにもかかわらず、当人は内心では無意味な仕事だと感じているものです。
 リモートワークで問題となった印鑑を押すためだけに出社するというのも「ブルシット・ジョブ」です。そのほかにも日本社会では、独特の空疎な儀礼的慣行や人間関係のヒエラルキーを確認するための慣例的な儀式や官僚制的儀式が見受けられます。
 クレーバーは、自分の学生時代していたレストランのバイトの例を挙げています。言われた仕事を最速で仕上げようと全力で取り組み短時間で終わらせます。ボスからお褒めの言葉が聞けるかと思ったところ、嫌な顔をされ「怠けるんじゃない」と叱られたというのです。その後クレーバーはのろのろと仕事をするようにしたところ何も言われなくなったということです。
 作業を効率よくこなすよりも、とにかく仕事時間中はずっと仕事をしている様子を見せることや、頑張っているふりをしていることが重要なのです。日本の社会でも同様です。勤務時間中デスクに向かっていれば仕事をしていると評価されます。たとえ、デスクに向かって私的なメールを打っていても、こっそり漫画を読んでいたり動画を視聴したりしていてもです。
2.タスク指向と時間指向
労働というのは、雇用主が自分の時間を買ったものだから、その時間の間働かないといけないという考え方は普遍的ではありません。むしろ、狩猟民族も農耕民族も、仕事が必要な時に集中的に行い、それ以外はぶらぶらしたり寝ていたりしてもいいものでした。
 クレーバーが例に挙げるのは学生で、普段からコツコツ真面目に勉強し試験に慌てない者は変人で、たいていは普段から勉強しているわけではなく試験間際になって集中的に勉強するものです。 
 クレーバーは資本主義的モラルの浸透以前の仕事のあり方を「タスク指向」と表現します。その特徴は 
 Ⅰ:時間労働よりも人間的でわかりやすい。必要性を見て取りながら活動する。
 Ⅱ:「仕事」と「生活」の境界線がほとんどない。社会的交流と労働は混ざり合っており、労働日は仕事に応じて長くなったり短くなったりする。
 Ⅲ:時間ではかられた労働に慣れている者からすれば、無駄が多く、緊張に欠けるように映る
 このタスク指向の労働のパタンは激しい労働と怠惰が交互に繰り返されるもので、現在でも、アーティスト、小説家、小規模農家、一部の自営業者などには残されており、それが「本来的」な人間の労働のリズムなのです(E・P・トムソン「時間、労働規律、産業資本主義」)。タスク指向の労働は自分の意志で労働生活を統制している(できる)のです。
 ところが資本主義の進展に伴い、われわれの社会は、必要な時にガーッと仕事をしてそうではないときにゆるくしているという労働形態を許さなくなり、仕事の性格にお構いなしに時間によって抽象的に区切るようになったのです。これが「時間指向」の仕事です。   
 現在のサラリーマンをはじめ多くの労働者は、時間に応じて賃金が支払われるのも、時間指向が関係しています。
 しかし、本来的な仕事というのは、自分の意志で統制できるもので、働く現場において自らの才覚と裁量を発揮できる余地が多かれ少なかれありました。こうした本来的な仕事に、時間指向の仕事の形態を押し付けようとしたことで、ブルシット・ジョブが生まれるのです。つまり、時間指向で与えられた時間(勤務時間)の間は例え仕事が終わりやるべき仕事がなくなってもやっているフリをしなければならず、クソどうでもいい仕事が生み出され、それをやる(やるフリをする)ことになるということです。 
3.ブルシット・ジョブの5つの類型
 クレーバーは、ブルシットジョブを次の5つに分類しています。
①取り巻きの仕事・・・誰かを偉そうに見せたり、誰かに偉そうな気分を味わわせるという、ただそれだけのために存在している仕事。
②脅し屋の仕事・・・脅迫的な要素を持っている人間たち、その存在を他者の雇用に全面的に依存している人間たち。例えば軍隊
③尻ぬぐいの仕事・・・組織に欠陥が存在しているためにその仕事が存在しているに過ぎない雇われ人。
④書類穴埋め人の仕事・・・実際にはやっていないことをやっていると主張できるようにすることが唯一の存在理由であるような雇用者。
⑤タスクマスターの仕事・・・他人への仕事の割り当てだけからなる仕事と、他者に対するブルシットな仕事の形成だけが仕事。
4.ブルシット・ジョブをなくすには
ブルシット・ジョブをなくすということは、我々の仕事が時間指向に基づいている限り、なかなか難しいものです。
 しかし、コロナ禍でわれわれの働き方も大きく変わりました。日本型の雇用形態からジョブ型雇用、成果主義も取り入れられてきています。時間よりもタスク重視へと少しずつ移行してきました。
 「阿吽の呼吸」で物事が進められることが多い、日本の社会ではブルシット・ジョブは多いのではないかと思います。このブルシットジョブから解放されることが、企業や組織に活気をもたらし生産性を高めることになります。
 ブルシット・ジョブはワクワクするような仕事ではなく、モチベーションは上がりません。
 モチベーションを高める仕事・職場特性として、次の5つが挙げられます。
Ⅰ:多様性・・・単調でなく、多様な操作やスキルが必要だったり変化があったりすること
Ⅱ:完結性・・・部分的な作業をするのみではなく、仕事全体を見渡せ、自分の仕事の位置づけができること
Ⅲ:重要性・・・社会的意義が分かるなど、やっている仕事の重要性や有意味性が感じられること
Ⅳ:自律性・・・命じられるままにするのではなく、自ら計画を立てたり、方法を工夫したりして、自律的に取り組めること
Ⅴ:フィードバック・・・自分の仕事の結果が分かり、今後の改善のための有益な情報が得られること
 この5つの要素を満たす仕事であればモチベーションも高まります。クソどうでもいい仕事(ブリシット・ジョブ)を脇に置き、この5つの要素を満たした仕事を優先的に行うことです。
 自分がワクワクするものは何かを考えて、それに全力で取り組むことがブルシット・ジョブから解放される唯一の方法ではないかと思います。
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