中小企業経営のための情報発信ブログ27:ダイナミック・ケイパビリティ

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今日もブログをご覧いただきありがとうございます。
今日は、「ダイナミック・ケイパビリティ」について書きます。
ダイナミック・ケイパビリティというのは、カリフォルニア大学バークレー校ハース・ビジネススクールのデビッド・J・ティース教授によって提唱された戦略経営理論です。
2020年5月に経産省・厚労省‣文科省が合同で発表した「ものづくり白書2020」の中でも取り上げられ、「日本の製造業の課題を考えるにあたって注目すべき戦略経営論」と位置付けられています。また、一橋大学名誉教授の野中郁次郎氏は、「ダイナミック・ケイパビリティこそ日本が強みを発揮できる理論である」と言っています。
ポーターの「ファイブ・フォース(5つの力)」やバーニーの「RBV(リソース・ベースド・ビュー」の考え方は、企業環境が安定しているときに妥当する考え方で、現在のような混迷した時代にはストレートで適用することが難しくなっています。
【注釈】
 *5F(ファイブ・フォース)・・・競合他社・新規参入者・買い手・供給業者・代替品という5つの競争要因に従い、業界の企業間の競争の度合いや魅力度を分析するもの
 *RBV・・・企業が保有する経営資源や組織能力が、企業の持続的競争優位の構築における重要な要因であるとする戦略の考え方
新型コロナの感染拡大により世界中が混乱し、日本においても環境は激変しています。このような不確実性の時代、先を見据えることができない時代(いわゆるVUCAの時代)においてこそ、「環境変化を察知し、経営資源を認識し、動的(ダイナミック)に組みなおそう」と考えるのが、ダイナミック・ケイパビリティの考え方です。
1.いまダイナミック・ケイパビリティが求められる理由
 なぜ今ダイナミック・ケイパビリティが求められるかについて「ものづくり白書2020」は、「世界における不確実性の高まり」を挙げています。
 英国のEU離脱や米中貿易摩擦などの地政学的リスク、頻発する自然災害、急速な技術革新などの影響を受けて、ビジネス環境は不安定な状況が続き、さらに追い打ちをかけるように新型コロナによるパンデミックが世界中を襲いました。ますます世界は不確実性に満ち、何が起こるかわからない時代に突入しています。
 このような時代においては、先行きが見通せないことを前提として戦略を練らなければなりません。何が起きるかわからない時代には、「何が起きても対応できる戦略」が求められるのです。 
 まさにダイナミック・ケイパビリティは、VUCAと言われる今の時代に最もふさわしい戦略なのです。
2.ダイナミック・ケイパビリティとは
 「ものづくり白書2020」では、ダイナミック・ケイパビリティを「環境や状況が激しく変化する中で、企業がその変化に対応して自己を変革する力」としています。つまり「環境に適応して柔軟に変革する力」です。
 ダイナミック・ケイパビリティは、次の3つの能力から成り立っています。
Ⅰ:感知する(センシング)・・・環境の変化を感知する能力
Ⅱ:捕捉する(シージング)・・・変化をチャンスにするため、既存の経営資源を組み合わせて再利用する能力
Ⅲ:変革する(トランスフォーメーション)・・・強みの新しい組み合わせによって、新たな競争優位を確立する能力
 このことから、ダイナミック:ケイパビリティを備えている企業は、「危機や環境変化を敏感に感知し、適切なタイミングで経営資源を組み合わせて組織を再編成し、新たな組織へと変容できる企業」なのです。
ティース教授は、日本企業について次のように言っています。
1990年代以降の日本経済の弱体化は、ダイナミック・ケイパビリティの弱さに起因する。・・・コンセンサス・マネジメントといった日本の会社に特有の価値は、おそらくビジョナリー・リーダーが新市場を創造する能力を制約してきたに違いない。コンシューマ・プロダクトのブレイクスルーは、もはや数十年も前の過去の話になった
1990年まで無敵であった日本企業は、市場変化に対応できないまま「失われた20年」「失われた30年」という長い低迷を続けています。
今こそ、日本企業には、突発的な危機にもリーダーシップを発揮して果敢に対応し、強みを組み替え、危機をチャンスに変えて、それを成長につなげていくことが求められているのです。
今こそ、日本企業は変わらなければならないのです。
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