「手抜き」は本人の意思に反して起こってしまうことを説明します。

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誰しも一度は「手抜き」の経験があると思います。
勉強や仕事でも疲れてくれば少しは手抜きをしてしまうかもしれません。
弟や妹と遊んでいて手加減をするのも手抜きの一つです。

手抜きは決して悪いことではなく、作業効率がどういう時に落ちるのかを心理的な知見からお話しします。
例えば皆さんの経験の中で大人数で作業するとき、「自分の作業の役割が小さいな」とか「仕事量が少ないな」と感じた事はないですか?
「1人で作業を行ってかかる時間が2人で行った場合は本当に半分の時間で終わるか?」とか「3人で3人で行った場合は本当に 1/3 の時間になるか?」とか考えたこともあると思います。答えは「ノー」です。

大人数になればなるほど作業効率が落ちてしまうことを「社会的手抜き現象」といいます。
社会的手抜き現象について面白い経験研究があるのでそれを紹介します。
複数で課題を遂行しようとする際、1人当たりの課題遂行量が無意識のうちに減少してしまうことをラタネら(1979)は実験によって明らかにしました。

【実験内容】
①実験対象者にはできるだけ大声を上げてもらう。
②同時に1人、2人集団、4人集団、6人集団で行ってもらった。
③複数で大声を上げるとき、1人当たりの声量は変化するのか。

【実験結果】
①結果として、1人当たりの音の大きさは1人、2人集団、4人集団、6人集団の順で小さくなっていった。
②集団の人数が増えれば増えるほど1人当たりの仕事量は減少した。
③集団が増えれば増えるほど1人当たりの仕事量が減少することを「社会的手抜き現象」という。

ラタネらの研究によって大人数になればなるほど個人の作業効率が下がることが明らかになり、仕事量は個人差が出ることが裏付けられました。
この社会的手抜き現象は綱引きと似ています。
大人数で引っ張り合いますが、自分が引っ張らなくてもさほど変わらないんじゃないかと思ってしまう人も中にはいるかもしれません。

しかし、プロの綱引き選手は一人一人が自分の役割を把握してしっかり最大の力を発揮しています。
社会的手抜き減少は日常生活で起こる現象のようです。 
では、この手抜き現象は必ず起こるものであり、防ぐことはできないのでしょうか?

安心してください。
最近の研究によれば集団内での手抜きを防ぐ方法も研究が進んでいます。
集団内での手抜きを防ぐ研究もここで紹介しておきます。

ウィリアムズ(1989)は集団の中での「手抜き」を防ぐ方法を実験によって提言しているしています。

【実験内容】
①大学の競泳メンバー16名を4人ずつの4つのチームに分ける。
②それぞれのチームで個人の100mと400mリレーのタイムをそれぞれ計測してもらう。
③リレーの前に「個人のタイムはあとでおしえる」と伝えるチームと「何も伝えない」チームに分けた。

【実験結果】
①結果として「何も伝えない」チームは個人で泳ぐよりもリレーのラップタイムは落ちたが、「個人のタイムはあとでおしえる」と伝えられたチームは個人のラップタイムは早くなった。
②たとえ集団であっても、各個人の仕事量を評価するようにすると個人のパフォーマンスは下がらないことが明らかになった。

たとえ集団であっても各個人の仕事量を評価することにより、大きなパフォーマンスを得られることがわかりました。
目標が1つであっても、目標を細分化して評価してあげる事で個人の動機付けにもつながります。
目標を細分化して個人のモチベーションを維持する方法は「スモールステップ法」と呼ばれており、以前ブログでも紹介したので、ご興味ある方はそちらもご覧ください。

心理学の世界で大事なのは、その「現象が実在する」ことを知ることです。
知ることによって解決策を模索し、次へのステップを踏むことができます。
私も皆さんの不安や悩みを解消できるような知識を提供していきたいと思っています。

【参考文献】
社会的手抜き減少については
Latane, B., Williams, K., &, S.(1979)Many hands make light the work: The causes and consequences of social loafing. Journal of Personality and social Psychology, 37, 6, 822-832.

社会的手抜きを防ぐ方法については
Williams, K. D., Nida, S. A., Baca, L. D., & Latane, B. 1989 Social loafing and swimming: Effects of identifiability on individual and relay performance of intercollegiate swimmers. Basic and Applied Social Psychology, 10, 73-81.
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