やる気がないのは本人の責任ではないのは当たり前です

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やる気がないのは学習されます。
勉強、スポーツ、仕事に遊び等、我々は生きていく上で何かしらの行動を選択し、実行しています。
その行動は始まりがあり、継続を経て終わっていきます。

「やる気」というのはその行動の「始まり」を選択することです。
我々が行動するためには大なり小なり「やる気」が必要です。
「最近の若い人にはやる気がみられない」

いつの時代も言われることですが、このやる気の無さは最初から備わっているものなのでしょうか?
実はやる気のなさ(新しい行動に対するあきらめ)は学習されることが実験によって明らかになっています。
この実験はセリグマンによって1967年に行われました。

彼は犬を実験台にして、あきらめることは学習されることを明らかにしました。実験内容を整理します。

【実験内容】
①犬に予告なしに電気ショックを与える.
②犬を「A 鼻でパネルを押すと電気ショックが止まる群(逃避可能群)、「B 鼻でパネルを押しても電気ショックが止まらない群(逃避不可能群)、「C なにも訓練を受けていない群(統制群)の3グループに分ける.
③何回か電気ショックを与えた後、柵を飛び越えれば電気ショックを回避できる部屋に犬を移す.

【実験結果】
① A とC は電気ショックを回避するために柵を飛び越えることを試みる.
② Bのみひたすらその場で電気ショックを耐えるようになった.
③この実験によってあきらめることは学習されることが証明された.

この結果は、何をやっても状況が変えられない状況に陥った時、その状況に耐えるという選択をしてしまうところに問題があります。このことを「学習性無力感」ともいいます。
Bの犬も最初は電気ショックを与えられた際、必死に抵抗しました。
それでもどうにもならない状況に陥るとついには状況が変わっても問題解決を図ろうとしなくなってしまったのです。

どうせ何をやってもうまくいくはずがない。自分は何もできない人間なんだ。
自分に自信がなかったり、ネガティブな感情しかいただけない人も、最初は問題解決に向けて色々試みたはずです。
頑張った結果として、やる気がそがれてしまう、何に対しても否定的になってしまうのはとても残念なことに感じてなりません。

では、その失われたやる気は二度と戻らないのでしょうか?
実はそうではなく、心理学的には動機付けの側面から、本人のやる気を出させる理論が存在します。
それは「スモールステップ法」と呼ばれます。

学習者が目標を達成させるための手段として、スキナー(1968)が提唱した方法です。

【スモールステップとは】
①大きな目標(例えば1000個の英単語を覚える等)を達成するために、細かくステップを分ける(一日100個ずつ覚えるなど).
②課題を小分けにすることにより、「達成感」も味わうことができてモチベーション維持にもつながる。
③学習だけでなく、日常の行動(掃除、早起き、ジム通いなど)にも応用が可能。

人間が何か行動を起こすときはやる気や動機付けが必要です。
大きな目標に向けて、タスクを細分化したり、目標を小分けにすることはとても有効な手段です。
昔、箱根駅伝で連覇を成し遂げた青山学院大学の原監督が記者の取材で、

「選手のモチベーションを維持するために、小さな目標を立てさせて、達成できたら褒めてあげる。少しずつ自信をつけてあげるんです。」

と言っていました。

なるほど、ご自身で調べたのか経験から導き出されたのかは知る由もありませんが、やはり全国大会で優勝させるような指導者は理論的にも素晴らしい指導をされているのだなと感心したものです。
もちろん、誰かのやる気をそぐようなことはしたくありません。
しかし、失われたやる気も、取り戻す手段があるのなら、それは大いに活用していただきたいと考えています。

【参考文献】
セリグマンの実験については
Martin. P. Seligman and Steven. F. Maier(1967)FAILURE TO ESCAPE TRAUMATIC SHOCK. Journal of Experimental Psychology. 74 – 1. Pp.1-9 .

 スモールステップ法については
Skinener, B. F.(1968)The technology of teaching. New York: Appleton-Century-Crofts.
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