みなさんは、どこかでサレ妻という言葉を見かけたことはないでしょうか?
なにがなにやら無知な私は、その単語をはじめてTwitterで目にしたとき『?』しか浮かびませんでした。
サイレント妻の略……?
物言わぬ、旦那の言いなりの女性を表しているのかなと思っていた気がします。
でも実際には、旦那に不倫された妻という意味でした。
旦那に、不倫された、妻!
私は二十七年間の人生、そんな単語とは無縁の日々を過ごしていました。
しかし残酷な瞬間はある日、唐突にやってくるようです。
もうおわかりのことと思いますが、私が旦那に不倫されたサレ妻になってしまったいました。
正直「マジかあ……」って感じです。
まさか自分がサレ妻になるなんて、つい最近まで思ってもみませんでした。
じつは私、去年の暮れに二人目が産まれたばかりです。
一人目は女の子で、二人目は男の子でした。
結婚生活は順調で、子供を授かっていることからわかる通り、セックスレスでもありません。
ちゃんと愛し合っている夫婦だったはずなのに、なんで旦那が不倫にはしったのかは、いまだに謎のままです。
そして、この意味不明な行為を旦那は現在進行形で続けています。
私がサレ妻になった原因はどこにあったのか……?
思い返してみると、出産時期に家を離れていことがきっかけだったような気がします。
旦那は平日、仕事で家にいません。
出産の予定日が近づいてきた私は一人になるのが心細くなり、実家に帰ることにしました。
私たち夫婦が暮らしている家と、実家は二駅しか離れておらず、けっこうな近場です。
旦那に相談すると「いっしょにいてあげられなくてごめんね」と言って、快く送り出してくれました。
もちろん長女もいっしょに実家へ連れていったのですが、思い返してみれば、このときから少し怪しい感じがあったかもしれません。
仕事終わりはもちろん、旦那は休みの日すら私の実家に顔を出そうとはしませんでした。
ただ旦那は、私の父が苦手です。それで来ないのかな、と呑気に考えていた自分が恨めしくてしかたありません。
やがて陣痛がはじまった日、私は父が運転する車で産婦人科へ運ばれました。
旦那は仕事中だったのですが、とりあえず電話で呼び出し。痛みに悶えながら「陣痛きた、病院来れる?」と尋ねたところ、まさかの返事。
なんと旦那は「会社でコロナの人がでちゃってさ。俺、濃厚接触者になっちゃった」と言うのです。
正直「そりゃないよおおおお」という思いでしたが、陣痛がひどくてそれ以上は追及できず、いったん通話終了。
一回目の出産は旦那がいてくれたのおかげで心強かったですが、今回は一人。両親に長女の世話を任せ、孤独な出産を経験しました。
がんばったかいがあって、産まれたのは元気な男の子。
現在、まだ0歳です。
その後、旦那からは「とりあえず陰性だったけど、潜伏期間があるらしい」と連絡がありました。
産まれたばかりの赤ん坊や子供、若くない両親もいるので、病院に来るのは遠慮してもらうしかありません。
ただ赤ちゃんは見たいだろうなと思って、私は何度かテレビ電話をしました。
しかし仕事が終わっているはずの時間でも出ないことが多く、ちょっとだけおかしいなとは思っていましたが、私も慣れない入院生活で旦那のことばかり考えてはいられず、だんだん放置。
たまに連絡が来たかと思えば、「コロナで人手不足なんだよ。もう残業続きでクタクタ」と愚痴ばかり。
私の心配や、長女の様子を気にかけたり、赤ちゃんのことすらあまり聞いてきませんでした。
ただコロナと言われると、この大変なご時世ですから私も両親もなにも言えません。
旦那が不在のまま、私は退院することになりました。
退院後も、しばらく両親の世話になることはあらかじめ決まっていたので、私は実家へ。
さすがに旦那も来ようとしたのですが、父に拒否されてしまいました。
「赤ちゃんにコロナがうつったらどうするんだ」と父に言われ、すんなりと引き下がる旦那。
ただ私も実家なら家事もせずのんびりできるので、あまり気にはしていませんでした。
正月が明け、そろそろ家に戻らないといけないかなと思ったのですが、今度は長女が拒否。
「もっとじいじとばあばといる!」という娘にほだされて、両親もすっかりその気になってしまいました。
このことを旦那に伝えると「いいんじゃない、のんびりしてなよ」と軽い感じで承諾。
ただ私は「掃除とか洗濯とか大変じゃない?」と心配したのですが、「ちゃんとやってる」と旦那は言うので、ひとまず信じるしかありません。
ただ結婚前、一人暮らしだったときですら家事をサボっていた旦那がちゃんとやっているとは思えず、どうせ帰ったら大変なことになっているんだろうな、と思っていました。
ですがびっくり。
旦那にテレビ電話で家の様子を見せてもらうと、食器はちゃんと洗ってあり、洗濯も干してばっちり、服も出しっぱなしになっていない……完璧な家事っぷり。いまにして思えば、このときもっと怪しんでおくべきだったのかもしれません。
旦那は「帰ってくるときは、ちゃんと連絡しろよ」と念押しして、通話終了。これだけならよかったのですが、そのあとLINEでも同じ内容が送られてきたので、最初はちょっとだけ「ん?」と首を傾げました。
急に帰ってこられたら、困るのか?
ただ正直、浮気は疑っておらず、「こっそりエッチなDVDでも観ているのかな」という程度にしか、考えていませんでした。
久々親任せのにのんびりした生活に溺れ、実家でダラダラと過ごす私。
そんなある日「子供たちの面倒は見ているから、息抜きに出かけたらと?」と母が言ってくれました。
お言葉に甘えて駅前の商業施設をブラブラ。
すると、そのうちなんとなく家の様子が気になってきました
平日の昼間で、旦那は仕事中。
家で料理でも作って、帰りを待っていてやろうかな……そんなイタズラ心が、悲劇の始まりでした。
母に「家の様子を見てくる」と電話で伝え、スーパーで食材を買った私は、約二か月ぶりの我が家へ。
意気揚々と玄関の戸を開けた私の耳に飛び込んでいたのは、女性のものすごい喘ぎ声でした。
一瞬、頭が真っ白になって、指先が震えたのを覚えています。
もう私は「いや、エッチなDVDでも観ているんだ」と自分に言い聞かせるしかありません。
そもそも旦那は仕事に行っているはずの時間ですが、そんなことを考える余裕もありませんでした。
玄関には、明らかに女性の靴。
どうやら私が帰ってきたことには気づいていない様子で、喘ぎ声は増すばかり。
この時点で私は泣きそうになりながらも「なにかの間違い」という小さな希望にすがりついて、寝室へ。
そこで私が目にしたのは、ベッドで絡み合っている旦那と見知らぬ女性の姿でした。
しかも女性のほうは、けっこうな年上です。
それこそ自分の母親と比べても遜色がないくらいのお年でした。
さすがにこちらの存在に気づいたようで、凍りついたように固まる二人。
私は悲しいやら悔しいやら、いろいろな感情がごちゃまぜになって頭がどうにかなりそうでした。
そこで不倫相手の女性はため息をつくと、なんと「帰ってくるとき連絡してよ」と言ったのです。
その瞬間、私は頭がカッと熱くなって「うわあ!」と叫びながらスーパーの袋を投げつけました。
女性の悲鳴と旦那がなにか言っている声が聞こえましたが、そんなのは無視。
私は耐え切れなくなって、家から飛び出しました。
道端を早足で歩きながら、涙がボロボロ。
みじめで恥ずかしい最悪の状態の中、私は家のまわりをグルグルと回っていました。
心のどこかで「もしかしたら旦那が追いかけてくるかも」と、ちょっとだけ思っていたのです。
しかし私が旦那の姿を見ることはなく、電話もかかってきませんでした。
その後、実家に帰った私ですが、両親に心配をかけたくなくて、旦那の不倫話は封印。
旦那からは一切の連絡がないまま、表面上は夫婦円満を装っていました。
正直、このまま一生実家にいたかったのですが、そうもいきません。
やがて私は、とうとう旦那の待つ家に帰ることになったのです。
【あとがき】
最後までお付き合いくださり、誠にありがとうございます。上記のような文章を執筆しておりますので、なにかお手伝いできることがあればお声がけください。どうぞよろしくお願いいたします。