社会福祉士国家試験の合格基準(最新12回)

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コラム
 今回は、社会福祉士国家試験の第24回から第35回まで、最新12回分の合格基準に関するデータを確認していきます。そして、全体像を把握した上で考察を行ってみたいと思います。

合格基準データ(第24回~第35回)

実施回:受験者数:合格者数:合格率:合格基準点:得点率
第24回:42882人:11282人:26.3%:81点:54.0%
第25回:42841人:8058人:18.8%:72点:48.0%
第26回:45578人:12540人:27.5%:84点:56.0%
第27回:45187人:12181人:27.0%:88点:58.7%
第28回:44764人:11735人:26.2%:88点:58.7%
第29回:45849人:11828人:25.8%:86点:57.3%
第30回:43937人:13288人:30.2%:99点:66.0%
第31回:41639人:12456人:29.9%:89点:59.3%
第32回:39629人:11612人:29.3%:88点:58.7%
第33回:35287人:10333人:29.3%:93点:62%
第34回:34563人:10742人:31.1%:105点:70%
第35回:36974人:16338人:44.2%:90点:60%

考察

 最新12回の合格基準に関する数値データを整理しました。全体的な傾向として合格率を30%前後、合格基準を6割としていることが伺えます。しかし、その傾向に反してやや特徴的な年度として第25回、第34回、第35回が目につきました。順に各回の詳細について確認していきます。

第25回社会福祉士国家試験

 まず、第25回です。この年は合格基準点を72点(48.0%)として42841人の受験生に対して8058人を合格者としました。その結果、合格率18.8%となり、極めて低い異例の合格率となりました。当時、「社会福祉士を難しくして資格の権威を高めるようとしている」等の都市伝説や噂が出回ったことは事実です。また、試験傾向の急変によって不利益を被った受験生が、公益財団法人社会福祉振興・試験センターに対する抗議メンバーを募るためのインターネットサイトや2chの書き込みも出現しました。社会福祉士国家試験の歴史上、大きな混乱を招いた年度であったと言えるでしょう。しかし、その後第26回以降の傾向をみてみると、合格率30%、合格基準6割とする従来の傾向が続きました。従って、第25回は偶発的な例外の年度であったと考えることができるでしょう。

第34回社会福祉士国家試験

 第34回では合格基準点を105点(70%)とされ、合格率が31.1%となりました。合格基準点と得点率が「三桁の7割超え」ということで話題になった年度でした。しかし、合格基準点がやや高めではあったものも、合格率31.1%合格者10742人は例年通りの傾向でした。この結果から、従来通りの試験難易度を担保して、従来通りの水準を満たす者を合格させていると考えることもできます。たまたま試験が簡単に仕上がってしまい、その結果として合格基準点を高くせざるを得なくなったのかもしれません。これは各科目ごとに分担して作問している試験員会の事情を考慮すれば仕方ないことと言えるでしょう。つまり、「三桁の7割超え」という大きなインパクトがあった年度となったものも、一定水準以上の知識及び技能を修得した者を社会に送り出すという国家試験の社会的役割は通常通りに遂行したものと考えられます。そのような観点で考えるのであれば、第34回は特に問題はなく例年通りと考えられるのではないでしょうか。

第35回社会福祉士国家試験

 第35回は合格基準点が90点、得点率60%という結果でした。社会福祉振興・試験センターから公表されている合格基準は「問題の総得点の60%程度を基準として、問題の難易度で補正した点数以上の得点の者。」です。第35回は、まさに基準通りの結果であったと言えます。しかしながら、合格者16338人かつ合格率44.2%という結果は過去の傾向に照らすと異例の高さでした。大学や専門学校の教育現場としても予想外の結果に混乱しました。幸いなことに、受験生サイドとしては合格基準が緩和されたので悲劇が生じたわけではなくラッキーでした。しかし、教員サイドでは従来と同水準の担保、過去の合格者との整合性などの話題で持ちきりでした。また、試験センターとしては、合格基準点を上げることで合格率を30%に近づけることはできたはずです。従来は30%前後で推移してきたにも関わらず、予告なしで突然に合格者を1.5倍にしたわけですから何らかの意図がなければありえません。その意図について、巷では色々な憶測が飛び交っています。例えば、コロナウイルス対応、新カリキャラムの先行提示、他資格との整合などです。これらの検討は別の回で発信したいと思います。また、今回の考察を基にした第36回社会福祉士国家試験のボーダー予想は次回に行いたいと思います。

ご期待ください。

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