遺産相続トラブル 子どものいないご夫婦の兄弟に相続権がある場合

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コラム
トラブルの原因として最近かなり揉めたお話しとして、配偶者が亡くなったあとに遺された奥様や旦那様のご兄弟に相続権があり、分割で揉めているというお話しです。
私の友人に実際にあったお話しです。
お子さまのおられないご夫婦で、ご主人は会社員、奥様(Aさん)は専業主婦、土地付きの一軒家を購入し、大変仲良く幸せに過ごしておられました。
旦那様が定年を迎え退職金を家の繰り上げ返済に充てて完済し、これからはのんびり過ごそうと思っていた矢先に、旦那様が病気により急逝されました。
失意の中葬儀を執り行いひと段落ついたころ、不仲で絶縁状態であったご主人の姉(義姉)が自宅に訪ねてきました。
ご主人と義姉は結婚する前から絶縁状態であったため、Aさんはこの時初めて義姉と会った事になります。挨拶もそこそこに、義姉はお悔やみを述べるでもなく、『遺産分割について話し合いたい。』と言ったそうです。
初対面の義姉に遺産を分割するように言われ、かなり動揺してしまい、心労もたたってその場で倒れてしまうほどでした。
残念ながら結果として、Aさんはご主人の遺産を義姉と分割せざるを得ない事になりました。(以下は分かりやすくおおまかに記載します。また税等の詳細は記載しておりません。)
Aさんご夫婦共に両親は他界しており、子どもはいません。この場合当然にAさん(配偶者)が法定相続人となります。しかし法律上、相続権を持つのは、①第一順位 子(または孫子供→直系卑属)②第二順位 父母(または祖父母→直系尊属)③第三順位 被相続人の兄弟姉妹(亡くなっていたらその子ども達)と、第三順位まで定めがあります。
従って、この場合、Aさん及び第三順位の義姉に相続権があります。ただし、割合はAさんが3/4、義姉が1/4です。
Aさんのご夫婦は、子どもがおらず、お金を遺す必要がないので、『家もあるし、どちらかが亡くなっても生命保険で生活できるね。』と話し合って貯金はほぼしていなかったそうです。まとまったお金は、預貯金(500万円)と生命保険(約2,000万円)のみ。生命保険は遺産分割の対象ではありませんので、(厳密には対象となる場合もありますが、基本的に対象外です)預貯金をAさん3/5→300万円、義姉2/5→200万円で分ける事でどうかと義姉に提案しました。
しかし、義姉は、家と土地の相続評価額約3,000万円+預貯金500万円=3,500万円、その1/4で875万円、キリが良いとの理由で1,000万円を要求しました。
義姉は、『遺産の現金が500万円しかないなら、家を売ればいい。』とまで言ってきたそうです。
心身ともに疲弊していたAさんは、お金で片が付くならと考え、生命保険から補填し1,000万円支払い、遺産分割協議を終えたそうです。
これを防ぐ手立てはなかったのでしょうか?
実は、生前にご主人が『遺産は全てAさんに相続させる。』という内容の遺言書を作成していれば、義姉に相続権はなかったのです。
遺産には遺留分といい、簡単に言うと、被相続人が相続させたくない!と望んでも遺産を受け取ることができる権利があります。詳細は割愛しますが、遺留分が認められるのは先に述べた①子や孫②父母や祖父母までで、第三順位の兄弟姉妹は対象外です。
つまり、相続権は第三順位である兄弟姉妹まで発生しますが、遺留分は第二順位である子や孫、父母や祖父母までしか発生しませんので、Aさんが一人で相続することが可能であったのです。
ご夫婦はその事を知らなかったため、『子どもがいないから遺言書はいらない。』と遺言書を作成していなかったとのこと。遺言書などなくても全部お互いに遺せるものと信じていました。
その後、後のトラブルは極力避けたいとご依頼いただき、Aさんの遺言書の作成のお手伝いさせていただき、無事に法務局に保管されました。
子どものいないご夫婦の場合や、おひとりさまの場合、自筆証書遺言にて『全て〇〇に相続させる。』という遺言書を作成して、法務局の保管制度(3,900円)をご利用いただくだけで、このようなトラブルは防げます。遺言書の内容さえ決まっていれば一日で終わる作業ですので、ぜひ皆さまトライしてみてくださいね。
※ご本人の許可を得て、個人が特定されない範囲で修正しております。

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