努力義務やれてますか?

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努力義務 (どりょくぎむ)とは

努力義務とは、日本の法制上「〜するよう努めなければならない」などと規定され、違反しても 刑事罰 や 過料 等の法的制裁を受けない 作為義務・不作為義務 のことです。

ただし、対応を怠る、または努力義務とは正反対の行為を行ったことを起因して労働災害が発生した場合、被害を受けた第三者から損害賠償を請求されたり、監督官庁から行政指導を受ける可能性があるので注意が必要です。

安全衛生に関する努力義務について安衛法上の主な規定は次の通りです。
①第三者向け(第3条の2抜粋)
 機械、器具その他の設備を設計し、製造し、若しくは輸入する者などは、これらの物が使用されることによる労働災害の発生の防止に資するように努めなければならない。

②健康の保持・増進(第68条の7他抜粋)
 事業者は、労働者に対する健康教育及び健康相談その他労働者の健康の保持増進を図るため必要な措置を継続的かつ計画的に講ずるように努めなければならない。

③受動喫煙の防止(第68条の2抜粋)
 事業者は、室内又はこれに準ずる環境における労働者の受動喫煙を防止するため、当該事業者及び事業場の実情に応じ適切な措置を講ずるよう努めるものとする。

④安全衛生の水準の向上(第28条の2他抜粋)
 事業者は、厚生労働省令で定めるところにより、建設物、設備、原材料、ガス、蒸気、粉じん等による、又は作業行動その他業務に起因する危険性又は有害性を調査し、その結果に基づいて、この法律又はこれに基づく命令の規定による措置を講ずるほか、労働者の危険又は健康障害を防止するため必要な措置を講ずるように努めなければならない。


リスクアセスメントの実施

今回は④安全衛生の水準の向上に関連して、リスクアセスメントについて少し深堀します。

平成18年4月より、労働安全衛生法にリスクアセスメントの実施が努力義務規定として設けられ、事業者による危険性又は有害性等の調査の実施とその結果に基づき必要な措置を講ずることが定められました。

リスクアセスメントの手順は以下の通りです。
[1]事業場のあらゆる危険性又は有害性を洗い出し、特定する。
[2][1]による労働災害(健康障害を含む)の重篤性(災害の程度)及びその災害が発生する可能性の度合を組み合わせてリスクを見積る。
[3][2]の見積りに基づくリスクを低減するための優先度を設定した上で、そのリスクを低減するための措置(リスク低減措置)を検討する。
[4][3]のリスク低減措置を実施するとともに、その結果を記録する。

ただ、「ヒヤリハットやKYTはすでに実施しているから問題ないのではないか」とか、「安全巡回でいつも確認しているし・・・」といった考えもあり、あまり積極的にリスクアセスメント活動を行っていない事業場も多いようです。

実施できてない理由として、リスクアセスメントの手法がわかりずらい、何から手を付ければ良いかわからないという意見もよく耳にしますが、実は、「努力義務だからやらなくてもいいか」という多忙な管理監督者の認識(ある意味本音)が一番のネックだと思われます。

努力義務は、「取り組もうと考えています、検討中です」は残念ながら、実施しているとは言えません。
具体的な社内規定や手順書などによる文書化、または実施した記録や教育の実施などがないと努力義務を履行したとは監督官庁は見なしてくれません。

近年、SNSの浸透もあり、企業に対する法令違反への社会的批判も大きくなっています。
年度末も近くなり来期の「安全衛生年間計画」を策定する事業場も多いでしょう。
今期未実施だった事業場ではWEBやDVD教材によるリスクアセスメントの導入教育から始めてみてはいかがでしょうか。
実施手順については、厚労省の「職場のあんぜんサイト」の「リスクアセスメントの実施支援システム」の利用が良いかと思います。

では、みなさんどうか、ご安全に!

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