ティンホイッスルについてー2.簡単で難しい、奥深い楽器ー

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音声・音楽
こんにちは。笛を吹いているリョウです。
前回はティンホイッスルの基本的なスペックを紹介しました。

吹けば音がなる簡単な楽器…それはたしかにそうなのですが、上達し、極めようとすると非常に奥深い世界があります。その理由というか要素はいくつかあるのですが、その一つがティンホイッスル演奏に必要不可欠な「装飾」の存在です。

ティンホイッスルの装飾

Youtubeなどでティンホイッスルの演奏動画を探してみますと、音と音の間に細かい音が沢山詰め込まれています。初めて聞いたときは何が起こっているのか分からないかもしれません。自分もそうでしたし、今もそうです。これがティンホイッスルの装飾です。

クラシックや吹奏楽での「装飾」をご存じの方はその違いに戸惑うかもしれません。それらの「装飾」は名前通り「音を飾るもの」で、メインの音ほど目立ってはいけませんが、何をしているのか分かる程度に「聞かせる」音です。

しかし、ティンホイッスルの「装飾」には飾りとは別に「音を区切るもの」という意味合いもあります。タンギングのかわりとして、一瞬別の音を挟むことで音を区切るわけです。※タンギングももちろん使います。その都度どちらを使用するかを吟味します。

これはバグパイプなどの奏法から取り入れられたそうです。バグパイプは音を一瞬止めるといった演奏ができません。そのため、同じ音を続けて演奏するときは、別の音を挟んで区切る必要があったわけです。これがティンホイッスルの「装飾」の原点です。ちなみに、笛に限らず他の楽器でも、アイルランド音楽を演奏するときは「装飾」を入れることが当たり前に行われています。

そういった経緯があるため、ティンホイッスルの装飾は「何の音を吹いているのか」というのはそこまで重要ではありません。むしろ何の音かは分からないくらいに早いほうがきれいに聞こえます。

装飾の重要性

もちろん、闇雲に速くすればいいわけでもありません。装飾は「リズム」を作ります。大半がダンスチューンのアイルランド音楽では、リズムの正確さは非常に重要です。それに、どこに装飾をいれるか、という問題もあります。装飾の入れ方で曲の印象が変わります。精度の高い装飾を適切にいれることで、その曲の魅力を高めることができます。

どこにどんな装飾をいれるか…それは奏者自身が試行錯誤して研究していくことになります。ある程度のセオリーはあっても正解はありません。本当に難しいものです。

装飾の分類

ちなみにティンホイッスルの装飾には名前があり、ざっくりとした分類でいうと、以下のようなものがあります。
・カット…音と音の間に高い音を挟む
・タップ…音と音の間に低い音を挟む
・ロール…カットとタップを組み合わせる
・クラン…カットを連続で行う(主にロールができない場合に用いる)
・フィンガーバウンス…指孔を塞ぐとき、軽く弾ませるようにして高い音を挟む。
・スライド…指孔の開閉をゆっくりと行うことで音をつなげる(ポルタメント)

ティンホイッスルの演奏に興味がある方に向けては、この分野をもっと掘り下げるべきなのでしょうが、これ以上の細かい説明を文字でしてもピンとこないと思います。レクチャー動画がたくさん出ていますし、音源もたくさんあります。それらを見聞きするのが一番です。

ティンホイッスル自体は簡単な楽器です。しかし装飾などを極めようとすると非常に難易度が高くなります。もちろん、装飾をつけなくても演奏を楽しむことは可能です。

装飾以外にもいろんな要素が組み合わさり、「アイルランド音楽」の演奏は一筋縄ではいきません。次回はアイルランド音楽の方にフォーカスを当てて記事を書いてみようと思います。
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